同棲中の29歳彼女が、いきなり自宅へ帰ってこなくなった…。男が絶句した、まさかの理由とは
東京では今日も、男女の間にあらゆるトラブルが発生している。なかには解決が難しい、不可解な事件も…。
そんな事件を鮮やかに解決してSNSを賑わせている、ある1人の男がいたー。
彼の名は光城タツヤ。職業は、探偵。
今日彼のもとにやってきたのは、同棲中の彼女が失踪してしまった男性だ。
あなたも、この事件の謎を一緒に考えてくれないだろうか…？
2つの顔を持つ男・光城タツヤ
「付き合って3年になる彼女が、突然失踪したんです」
相談主は田中翔太さん、33歳。
田中さんは、ある掲示板で恋愛探偵をしている僕の噂を聞きつけたらしい。そしてTwitterのアカウントに、1通のDMを送ってきたのだった。
「失踪、か…。ちょっと気になるな」
僕はコーヒーを片手に、32万人のフォロワーを持つ自分のアカウントを見つめる。アイコンは猫。自分のペットではなく、元カノが飼っていた三毛猫だ。
「…ちょっと竜也先輩、さっきからスマホばっかり見て！はいこれ、さっきの会議の資料です」
後輩の女子社員に声をかけられ、僕はふと我に返る。
「あぁ、ありがとう」
「土曜日の午前中に会議なんて、イヤになっちゃいますよね。じゃ、私はこれで失礼しま〜す」
そう言って彼女は、ひらひらと手を振りながらオフィスを出て行った。
「…さて、と。俺も帰るか」
大きく深呼吸をし、オフィスを出る。そしてスマホに184と打ち込み、非通知設定で電話をかけた。
僕には2つの顔がある。1つは東京駅近くのオフィスで働く商社マン。そしてもう1つは、未解決恋愛事件を解決する探偵だ。
ちなみに探偵業は土日限定。依頼を受けるかどうかは僕の気分次第である。
前提として、僕は絶対に依頼人と直接会うことはしない。依頼人に自分のプライベートな情報は一切明かさないのが、探偵としての僕のポリシーなのだ。
非通知で電話をかけると、三度目のコールで「田中」と名乗る男が電話に出た。
「どうも、恋愛探偵の光城タツヤです」
「あぁ、ご連絡お待ちしておりましたよ！タツヤさんの活躍はSNSなどで拝見しております。それでですね…」
電話越しの彼は興奮し、まくしたてるようにして恋人が突然消えた日のことを話し始めた。
未解決恋愛File１：突然消えた彼女
「今から1週間前、同棲して半年の亜衣が突然いなくなったんです。タツヤさんには絶対、彼女のことを探し出してほしいんですよ…！」
半泣きで叫ぶ田中さんの声を聞き、僕は彼から届いていたDMに再び目を通し始めた。
――――――――
恋愛探偵・光城タツヤ様
突然のDM、失礼します。実は先日、同棲していた彼女が急に姿を消したんです。
警察に届けようと思ったのですが「私は元気だから心配しないでね！」と置き手紙があったため、踏み出せずにいます。
彼女は3ヶ月前に浮気をした前科があります。最近はしっかり監視していたので、それは関係なさそうなのですが…。
謝礼はしっかりとお支払いさせていただきますので、ぜひ彼女の調査をお願いします。
――――――――
そのDMには、人気コスメインフルエンサーとして活動する亜衣さんのInstagram投稿が添付されていた。
…この画像に、僕は奇妙な違和感を覚えたのだ。
「突然なんですよ。…本当に突然、消えたんです」
受話器の向こう側から、田中さんの深いため息が聞こえる。続けて彼は、恋人がいなくなってから食欲不振に陥り、夜も眠れなくなっている今の状況を説明した。
「九州にいる彼女の両親にも電話したんですが『知りません』としか言わなくて。娘の心配をしないなんて、変な親だ！」
田中さんは1人でヒートアップし、いかに自分が彼女を愛していたかについて長々と語る。
「…というわけでですね。タツヤさんに、なぜ亜衣が消えたのか調べてほしいんです」
「なるほど。状況はわかりました。では僕から、1つ質問させてください。
田中さんからの依頼メールに“彼女が過去に浮気をした”と書いてありました。そのことについて詳しく伺ってもいいですか？」
「あぁ…。あれは、3ヶ月前のことです。亜衣のLINE画面が見えてしまったんですよ。彼女は葛城洋二という男に『迷惑かけたくないから、ちゃんと私が別れたら会おう』というメッセージを送っていて…」
「亜衣さんは、田中さんと別れようとしていた、ということですか？」
「そんなことあるわけないじゃないですか！考えただけで腹立たしい。…ただの浮気ですよ」
「まだ浮気とは決まっていませんよ。それに『別れたら会おう』ということは、会ってない可能性だって…」
「ほかの男とLINEをしている時点で浮気でしょう！それからは、彼女のLINEは僕が監視するようにしていたんです。もちろんSNSのDMも、すべてです」
僕の声をさえぎり、田中さんが電話口で叫んでいる。僕はスマホを耳から離して、冷静なトーンで話を続けた。
「落ち着いてくださいよ、田中さん」
「あぁ、すみません。この葛城という男、プロスポーツ選手みたいで。まぁ、プロでも年収はせいぜい僕の3分の1ってところでしょう」
田中さんがあざ笑うようにそう言うので、僕は葛城洋二というワードで検索してみる。すると選手紹介記事に交ざって、彼のInstagramを発見したのだった。
僕は葛城の投稿をザッとチェックする。そしてここで、ある法則に気づいてしまったのだ。
「…田中さん。この未解決恋愛事件、解決しました。ちなみに難易度は★1つです」
「えっ！？」
「簡潔に言います。亜衣さんはもう二度とあなたの前には現れません。証拠はInstagramにあります。亜衣さんの一番最後の投稿を見てください」
僕の言葉に、田中さんが電話の向こう側でうろたえている様子が目に浮かぶ。
「なんですか急に、最後の投稿って…。あぁ、亜衣はコスメ会社のPR案件を受けるインフルエンサーですから。この投稿は、ただのPR案件でしょう」
「一見そう見えるでしょう。でも違いますよ」
電話越しの田中さんは大きなため息を吐きながら、消え入りそうな声で「僕にはわかりません」とだけ言った。
◆
難易度は★1つ。この事件の答えは明日公開！あなたの推理をぜひコメントしてください。
▶他にも：同棲中にもかかわらず、深夜3時まで男と遊び呆ける26歳女。帰宅すると、暗いリビングで彼が…
▶NEXT：1月4日 水曜更新予定
この投稿に潜む謎とは？
