駅の改札などで「Visaのタッチ決済」が徐々に広まるなか、首都圏では、決済方法ほぼ“全部のせ”な駅のコインロッカーが登場。鉄道会社からは、駅の施設のみが、周りから取り残されているという状況がうかがえました。

交通機関で広まるVisaのタッチ、だけじゃダメ?

 鉄道などの交通機関で、既存の交通系ICカード以外の決済手段が徐々に拡大しています。南海電鉄は2022年12月、一部の駅で導入している「Visaのタッチ決済」や各種QRコード乗車券に対応した自動改札機などの継続運用を発表。これをグループの路線バス、フェリーにも広げるほか、泉北高速鉄道にはVisaのタッチ決済、QR乗車券、交通系ICカードの3種に対応した日本初の一体型改札機を全駅に導入すると発表しました。


東急の電車(画像:写真AC)。

 クレジットカードで自動改札などを利用できる「Visaのタッチ決済」は、南海に限らず実証実験が各地で進んでいますが、そうしたキャッシュレス化、決済方法多様化の波は、駅のコインロッカーにも押し寄せています。東急電鉄は11月、首都圏の鉄道会社で初めて「マルチ決済端末」を搭載したコインロッカーのサービスを開始しました(渋谷、自由が丘など東急線の8駅)。

 ひと昔前まで現金のみだった駅のコインロッカーには、主に交通系ICカードが導入されてきました。そうしたなか今回のコインロッカーは、新型マルチ決済端末を搭載し、決済方法が驚くほど多様になりました。

 交通系ICカードはもちろん、iD、QUICPay、WAON、nanaco、楽天Edyなどの電子マネーのほか、Visa、JCB、Mastercard、AMERICAN EXPRESS、Diners Club、DISCOVERなどの非接触ICクレジット、さらにd払い、PayPay、auPAY、楽天Pay、AlipayなどのQRコード決済にも対応――まさに、ラーメンでいう“全部のせ”状態です。

駅テナントなどとシームレスに使えるように

 このコインロッカーを設置した理由について、東急の担当者は次のように話します。

「キャッシュレス化が進行し、売店や自動販売機、駅ビルの商業施設などがマルチ決済に対応していく中、コインロッカーについては、現金と交通系ICカードしか対応していない状況でした。同じ駅施設を構成する一つとして、お客さまがよりシームレスに、より多くの選択肢の中からご利用できるようにしたいという考えから導入しました」

 駅の周辺テナントなどでは複数の決済手段に対応しているのに、駅施設は交通系ICカードだけ――この状況は多くの駅の改札にも当てはまるのではないでしょうか。前出の通り、駅ではVisaのタッチに対応する事例も増えていますが、今回のコインロッカーでは「より多くのお客さまの利便性向上を目指す上では、複数のクレジット会社に対応することが必要」だと考えたといいます。

 さらに東急は12月8日、Visaをはじめとする「クレジットカードのタッチ決済」およびQRコードを活用した企画乗車券の発売や、改札機の実証実験を2023年夏から始めると発表。24年春には東急線全駅に拡大するとしました。複数のクレジット会社への対応を前提にしているようです。ちなみに南海電鉄も、非接触クレジットについてはVisaのタッチ決済だけでなく、その他の国際カードブランドにも今後対応していくことを表明しています。


左は南海の駅に設置されたVisaのタッチ対応改札、右はQRコード乗車券にも対応した泉北高速鉄道の一体型改札(画像:南海電鉄)。

 東急の担当者は、コインロッカーについて、将来的には、荷物を預けるだけでなく、購入した商品の受け取りや、商品をディスプレイしてその場で購入ができる機能など、様々な可能性が秘められているのではないか、とも話します。

 こうしたコインロッカーのマルチ決済対応については、今後も順次進めてくとのことで、2022年度中には新綱島駅(3月開業)や奥沢駅への導入も予定しているといいます。今後の利用状況を継続的に観察し、より使いやすい環境を整えていきたいとのことでした。