道路で「進路変更禁止」を表す黄色い車線の手前に、黄色い破線のようなペイントを見かけるようになりました。これは「進路変更禁止の注意喚起表示」とされます。これを跨いで進路変更するのは違反なのでしょうか。

車線=白の実線、破線、黄色の実線、そして「黄色の破線っぽい」模様も


都内で見られる黄色い矢羽型の路面表示(小林祐史撮影)。

 東京都内などでは2021年から、交差点の近くで新しい路面表示が増えてきました。車線を分ける区画線に、白の実線や破線、黄色の実線ではない「黄色の破線」が登場しているのです。正確には、長方形を等間隔でペイントする破線ではなく、「矢羽」と呼ばれる形にカットしたペイントです。

 これは2021年4月から採用された「進路変更禁止の注意喚起表示」というもの。この先に黄色の実線、すなわち進路変更禁止となっている区間があるということを、事前にドライバーへ知らせる目的で採用されました。

 進路変更禁止の黄色い実線を見つけるのが遅れ、その手前や禁止区間内で急な車線変更をするケースが見受けられたためです。このような進路変更は事故やあおり運転を招く可能性もあります。

 そこで警視庁は2021年1〜3月にかけて東京都内の交差点数か所で、進路変更禁止の手前に黄色い矢羽型や、ドット型のペイントを試行設置しました。これによって、その先の進路変更禁止の区間で進路変更をする車の台数が、平日の7〜19時では80〜90%も減少したのです。

 この結果を受け、黄色い矢羽型のペイントが2021年4月28日から、路面標示を補助する法定外表示「進路変更禁止の注意喚起表示」として採用されました。

 では、この矢羽のペイントをまたいで進路変更してもよいのでしょうか。

「表示」だから踏んでもいい?

 この注意喚起表示は、進路変更禁止区間の約30m手前から表示されることが定められています。つまり、この注意喚起表示を認識して、区間禁止の手前までに進路変更を行うことはOKで、交通違反になりません。

 ちなみに、本稿でも路面「標示」と「表示」を使い分けていますが、黄色い実線の進路変更禁止は「標示」、今回の矢羽のペイントは注意喚起「表示」になります。前者は、最高速度や進路変更禁止といった特定の交通法で禁止されていることを標示した「規制標示」、横断歩道や停止線、中央線など道路交通上で定められた場所、交通法を指示する「指示標示」からなり、標識令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)で規定されています。

 対して、今回の進路変更禁止の注意喚起表示は、標識令以外で定めた「法定外表示」です。運転者や歩行者に対して“交通規制の意味を明確にして”交通の安全と円滑を図ることを目的として設置されます。つまり、「こうしなければならない」「してはいけない」という意味はなく、罰則などもありません。