2トントラックに乗れない準中型免許 新設から5年で物流どう変化 人材確保につながった?
トラックドライバー不足を解消することを目的の一つとして、「準中型免許」が新設されて5年が経ちました。若手ドライバー確保につながると期待されて誕生しましたが、これによりどう変わったのでしょうか。
昔、運送会社に入るために中型免許を取るのは大変だった
2017年、「普通免許」と「中型免許」の間に「準中型免許」が新設されて5年が経ちました。この免許は、若手ドライバーを確保したい物流業界の要望を受けて誕生したものでした。
準中型免許の新設で、車両総重量7.5t未満の自動車を18歳から運転できるようになった。写真はイメージ(画像:写真AC)。
準中型免許が生まれる前は、運送会社で使う大きいトラックを運転できる中型免許を取るには「20歳以上かつ2年以上の普通免許保有経験」が必要でした。そのため、高校を卒業したばかりの新社会人では中型免許を取ることができませんでした。
新制度では、中型区分だった5t以上7.5t未満のトラックなどが準中型区分に移行し、18歳から運転可能に。高卒で運送業界を志す人などが有利になるようにしたのです。旧制度でも普通車のみで教習を行っていた普通免許と比べ、準中型は普通車と準中型トラックの双方で教習を行うなど、より職業ドライバー志望者向けの内容といえます。
準中型免許の新規取得者数は2017年の約6万6000件から、2019年には約10万1000件まで増加。それからコロナ禍もあり減ったものの、2021年は約8万4000件です。この数値は、普通免許の取得者数約114万件と比べると1割未満にとどまりますが、準中型を取る人の多くが、ある程度のトラックも運転したいと考えていると仮定すれば、一定の規模があることがうかがえます。
「ヒノ●ニトン」運転できない? 課題も
ただ、小型トラックを主に使う宅配業界は、準中型の新設でやや困ったことになりました。
準中型免許ができたことにより、普通免許で運転できる車両の総重量の範囲が狭まった結果、宅配会社が主に使う総重量5t未満の「2tトラック」(積載量2t)と呼ばれる小型トラックが、普通免許では運転できなくなりました。
以前の普通免許では総重量5t未満の車両まで運転できたので2tトラックに乗れました。しかし、新しい普通免許では総重量3.5t未満の車両までしか運転できないため、総重量が3.5tを超える2tトラックの運転は対象外です。ちなみに、2017年3月11日までに普通免許を取得した人は、自動的に準中型の5t限定免許(中型免許の新設以前に普通免許を取った人は中型8t限定)となったので、2tトラックに乗ることができます。
免許区分と車両サイズのイメージ(画像:北海道警察)。
そこで、宅配会社は対策として、2tトラックを多用していた事務所に1tトラックや1.5tトラックなどのほか、軽バンの採用を進めました。日野やいすゞといったトラックメーカーも、普通免許で運転できる1.5tクラスのトラックのラインアップを強化し、売上を牽引しています。軽貨物車については、半導体不足などの影響もあるものの、ここ5年の販売台数の伸び率は軽乗用車よりも好調です。
準中型免許が物流の人手不足の解消につながったかは、一概には言えないところですが、コロナ禍による宅配需要の増加もあり、物流の車両やスタイルが変化したという側面はありそうです。