スピーチのプロが論理的に伝える方法を教えます(写真:xquang/PIXTA)

自分の好きな小説や面白かった映画など、勢い込んで話してはみたけれど、うまく相手に伝わってない……と感じたことはありませんか?

「美味しかった」「楽しかった」といった感覚的な表現は、なかなか他人と共有しにくく、話も独りよがりになりがちですが、「ほんの少し『伝える順番』や『話し方の型』を意識するだけで、驚くほど伝わるようになる」と話すのは、元CBCアナウンサーでスピーチコンサルタントの阿部恵さん。著書『1日1トレで「声」も「話し方」も感動的に良くなる』から、わかりやすく論理的に伝えるコツをご紹介します。

「FABE(ファブ)法」でアピールする話し方に!

わかりやすく話すには、「伝える順番」や「話し方の型」を意識することが大切です。最初に何を伝えるべきか。なぜ、そう思うのか。伝える順番を間違えたり、曖昧な感覚だけで伝えようとしたりすると、相手は理解しにくく、ということがあります。この「話し方の型」にはいろいろなものがありますが、ここでは「FABE(ファブ)法」と呼ばれるものをご紹介しましょう。

FABE法の「FABE」とは、もともとはマーケティング用語です。商品の特徴やベネフィットを分析する際に使われており、次のような構成です。

【FABE(ファブ)法】
F:Feature(特徴)
A:Advantage(優位性)
B:Benefit(得られるメリット)
E:Evidence(根拠)

この順番で話を組み立てると、相手に訴求できるストーリーになるという方法です。特に、自社商品やサービスをお客様へアピールする際の、セールストークでよく使われる型です。

私は以前、TVでたまたまジャパネットたかたの前社長・高田明氏のテレビショッピングを見かけ、そのトークのあまりの上手さに、思わず商品を買ってしまった経験があります。買ったのは、小型布団クリーナー「レイコップ」です。

購入後、「あのトークはどういう組み立てになっているのか」と気になり、後日、そのCMを録画して、セリフをすべて文字に起こしたことがあります。そこでわかったのが、この「FABE技法」に当てはめられていたことです。それ以降、他のテレビショッピングのコメントも気になり、注意深く見る癖がつきましたが、ほとんど「FABE法」に則っています。

テレビショッピングの場合は、FABE法の前に一言、「こんなことでお困りではありませんか?」という問いかけが入っていて、おおむね次のような構成で話されています。

問いかけ:「みなさん、こんなことでお困りではありませんか?」
F:Feature (特徴)で、「一言で言うとこういう特徴がありますよ」
A:Advantage(優位性)で、「うちのサービスはこんな強みがありますよ」
B:Benefit(得られるメリット)では、「あなたにとってもこんなメリットがあります
E:Evidence(根拠)では、「だって、こんな裏づけやお客さまの声があるんだから!」

私が思わず買ってしまったレイコップの場合は、簡単にまとめると、次のようなトークでした。

F:Feature (特徴)
 「今日は布団用クリーナー『レイコップ』をご紹介します」
A:Advantage(優位性)
「片手で楽々お掃除」「UVで除菌!除菌!」
B:Benefit(得られるメリット)
 「分割回払いなら、月々2000円ぽっきり!」
E:Evidence(根拠)
 「大人気で累計60万台販売!」「お客様の声」
(「除菌!除菌!」「2000円ぽっきり!」というのは、高田明氏のコメントをそのまま引用させていただきました)

「お客様の声」とは、実際に使ってみた方が「あんなにゴミが取れるとは驚きで、あの布団の上で寝ていたことにゾッとします」と、商品を使ってみたリアルな感想をTV画面でお話ししていたものです。

このFABE法の特徴は、自社の商品やサービスを話すだけでなく、相手の目線でメリットを伝えるところです。利用する側のメリット、そして、実際に使ったことのある人のリアルな感想が入ると、購買意欲が増しますね。


Evidence(根拠)のところで、「累計60万台突破!」と数字で実績を示すとともに、「お客様の声」も紹介しているところが、このトークの優れたところです。プレゼンなどで「数字」を使って状況や実績を説明すると、とても説得力があります。しかし、人は、理屈や理論の部分だけでは響かない方もいるのです。私もその1人です。

よく「右脳」と「左脳」と言いますが、「左脳派」は数字や理論、実績を求める傾向があります。一方、「右脳派」は数字だけでは反応しません。感情に訴えかけられて、初めて納得するのです。つまり、「数字と実績」を伝えることで左脳に訴え、「お客様の声」というストーリーで右脳へ訴えかけているのです。

このようにFABE法は、営業トークやプレゼンなどで使われるのが一般的ですが、日常生活でお友達に便利グッズを紹介するときなどにも応用できます。例えば、軽量のベビーカーや自転車をお友達にすすめるとしましょう。

【問いかけ:「ねぇねぇ、子どもを乗せて走ると自転車重くて上り坂がキツくない?」】
F:Feature (特徴)
  「この自転車、**という特殊な素材でできているから、めちゃくちゃ軽いの」
A:Advantage(優位性)
 「普通の自転車の3分の1の重さなんだって」
B:Benefit(得られるメリット)
  「これなら坂道でわざわざ降りて自転車を押す必要がないので楽ちんよね」
E:Evidence(根拠)
  「うちの保育園のママ友15人中、今、10人が使っているもんね」
  「うちはもう人下に子どもがいるから、チビを抱っこしながら坂道を下りて、自転車を押すのは本当に大変だったので、助かっているわ〜」
 と、自転車の営業をするわけでなくても、おすすめはできます。

おすすめのお菓子や健康グッズなどをこのFABE法に当てはめて、話してみましょう。もし、E(根拠)が見当たらない場合は、 FABの3つでもOKです。今までは、感覚的に伝えていた方でも、数字やお客様の声、評判を入れることで、論理的なストーリーに大変身することでしょう。

(阿部 恵 : 合同会社Confill代表、中部日本放送(CBC)元アナウンサー)