実はトンネルには「等級」があります。総延長や交通量から5段階に分けられ、それぞれに応じた非常用設備の設置が義務付けられています。つまり素人でも、設備を見れば等級を見分けることができます。

等級はAA〜Dの5段階

 トンネルにはAA、A、B、C、Dの等級が存在します。これはトンネルの規格や交通量に合わせて決められていて、DからAAになるに従いトンネルは高規格になります。そして、それぞれの等級に応じた非常用設備の設置が義務付けられています。


東北地方の道路トンネルで最も長い栗子トンネル(乗りものニュース編集部撮影)。

 非常用設備とは、消火設備や避難誘導設備などのことです。当然、高規格になればなるほど設置しなければいけない設備も増えていきます。例えばAAには、総延長10km以上のトンネルや、5kmであっても1日の交通量が2万台あれば該当します。

 ちなみに、AAは元々存在しませんでした。なぜこの等級ができたかというと、1979(昭和54)年の7月に、東名高速道路の日本坂トンネル(静岡県静岡市・焼津市)で火災事故が起きたため。この時、トンネルの非常用設備設置基準の見直しが図られたのです。

 被害は甚大でした。死者7名、負傷者2名、消失車両は173台にも及び、トンネル本体と保安防災設備の復旧費用は当時の額で約34億円、通行止めによる料金の減収は約33億円と見積もられています。この事故をきっかけに1981(昭和56)年4月、「道路トンネル非常用施設設置基準」が作られ、規制が強化されました。

 2022年現在は、煙を感知する以前に炎成分のみで火災発生をセンシングする報知器など、ITを駆使した通報・警報システムや避難誘導設備が開発されています。

トンネルの等級の見分け方

 ところで、通行人という立場でトンネルの等級は見分けられるのでしょうか。ややアバウトですが、簡単な方法があります。

 トンネル内に消火「器」があればAA、A、Bのいずれか、消火「栓」があればAA、Aのどちらかです。消火能力の高い消火栓が、より長大で交通量の多いトンネルに設置されています。ほかにも非常電話はD以外で、誘導表示板はC、D以外で必ず見られます。

 トンネル内をじっくり観察する機会はなかなかないでしょうが、車内からでも目に留まった設備の違いを感じ取れれば、客観的にそのトンネルの規模が分かりそうです。

※誤字を修正しました(9月27日2時20分)。