東京オリンピック「延期」に備え、政府は大胆な経済対策を打て~田原総一朗インタビュー - 田原総一朗

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※この記事は2020年03月24日にBLOGOSで公開されたものです

新型コロナウイルスが世界中を混乱に陥れている。感染の中心がアジアからヨーロッパに移ったことにより、世界経済が一気に深刻化した。今年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックはどうなるのか。日本政府はどのような経済対策を打つべきなのか。田原総一朗さんに聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

東京オリンピックの開催は非常に難しい

新型コロナウイルスは中国の武漢で発生したが、いまや中国での感染者よりも、中国以外の地域での感染者のほうが多くなった。世界全体で30万人以上の感染が確認され、死者は1万人以上に達している。

もともと中国で発生したこともあり、当初は韓国や日本などアジアでの感染拡大が問題だと見られていた。しかし現在は、アジアよりむしろ、イタリアを始めとしたヨーロッパが深刻な状態となっており、アメリカでも感染者が急増している。

一方、日本は感染者の増加が落ち着きつつある。感染拡大の阻止に成功しているという見方もあるが、他国に比べて検査件数が少ないのが原因だという指摘もある。なかには、感染者数を増やさないために、政府が意図的に検査件数を抑えているのではないかと疑う声もある。

なぜ政府は感染者が増えるのを怖がっているのかといえば、感染者があふれると東京オリンピックの開催が危なくなるからだ。ところが、欧米でコロナウイルスの感染が拡大したことにより、海外からオリンピックの延期を求める動きが強まっている。

アメリカのトランプ大統領は3月21日の記者会見で「明らかに延期という選択肢があり、来年まで延期されるかもしれない」と口にした。トランプ大統領は「すべては日本しだいだ」とも語っていて、日本の安倍首相の判断に世界中の注目が集まっている。

そして、安倍首相は3月23日の参議院予算委員会で、「仮に(予定通りの開催が)困難な場合には、延期の判断も行わざるをえない」と述べ、IOCが延期を判断した場合は容認する考えを表明した。

いよいよ東京オリンピックは、開催が非常に難しくなった。

問題は、オリンピックが延期となれば、日本経済に大きなダメージが生じるということだ。政府はそれに備えた経済対策を打つ必要に迫られている。

国債を思い切って発行し、大規模な財政出動を

コロナショックはすでに、日本経済に深刻な影響を与えている。不要不急の外出や往来を控える自粛ムードが広がったことにより、観光業界や飲食業界は売上が激減している。今後は、観光関連の中小企業の倒産が相次ぐだろう。

株価も日経平均が2万円を切ったかと思ったら、さらに下落し、1万7000円を割り込む水準まで落ち込んだ。いったいどこまで落ちるのか。底が見えない不安定な状況だ。この経済に対して、どう対処すればいいのか。

期待されるのは、政府による大胆な経済対策だ。野党や自民党の一部からは「消費税減税をすべきだ」という意見が出ている。しかし、消費税減税は政府や企業が対応するのに時間がかかり、かえって混乱をうむ可能性もある。

僕はむしろ、国債を思い切って発行して、国民に現金給付を行うほうが望ましいと考える。

もし東京オリンピックが延期となれば、それによる経済的損失も考慮する必要がある。政府には大規模な財政出動を求めたい。

もう一つ、気になるのが、学校の「休校問題」だ。2月下旬に安倍首相が全国の小中高校に対して臨時休校を要請したことを受け、ほとんどの学校が突然休校となり、学校から子供たちの声が消えた。

この休校問題は4月以降、どうなっていくのか。

これについて、安倍首相は3月20日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、休校要請を新学期から段階的に解除する方針を示した。地域によってはすでに学校を再開している自治体もあるが、4月からは通常の授業に復帰する学校も増えそうだ。