30年後には大きな違いに。20代から知っておきたい投資のアレコレ - BLOGOS編集部
※この記事は2018年04月27日にBLOGOSで公開されたものです
「もらった給料を銀行に預けておくだけでよいのかな…」。こうした疑問を感じたら、お金に働いてもらう「投資」について考えてみるとよいでしょう。でも、いきなり「投資」といわれても戸惑ってしまう人も多いはず。今回の特集の最終回は、ファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんに、投資への興味の持ち方や知っているとお得な制度について聞きました。
お金の知識は「知らないと損をする」
―投資に関する話題を聞いていると、よく「老後のために…」「子どもの教育費として…」といったフレーズが出てきます。しかし、20代の新入社員に「老後のため…」といった話をしてもピンと来ない人も多いと思います。
大竹:まず、お金についての知識は「知らないと損をすること」がたくさんあるということを伝えたいですね。
もちろん「知っていると得をする話」もたくさんあるのですが、同じぐらい「知らないだけで損をしている」ことが、生活の中にはたくさんあります。なので、知らないということはとてももったいないと思いますね。
また、これまで投資は一部の興味関心の高い方がお金を増やすためにやるものというイメージがありました。しかし、最近では、興味のあるなしにかかわらず、避けては通れない時代になりつつあります。
例えば、ここ数年でNISA(少額投資非課税制度)のような制度が出てきた背景には、国の「貯蓄から投資へ」という大きな流れがあります。国や企業だけでは将来を保証しきれないから「自分でお金を増やしてなんとかしてね」という側面もあるでしょう。
―初任給をもらうと「親と食事に行かなきゃ」「友達や同期と飲みに行こう」などと考えるのが一般的で、なかなか「投資をしよう!」という発想は持ちづらいと思います。そういう人にはどのようなアドバイスをしますか?
大竹:「使う」と「投資する」の二択にならなくても、「将来のために貯めておきたい」と思っている人は多いはず。何事もスタートが肝心なので、初任給から一定額貯めるという習慣を持って欲しいなと思いますね。
「2:6:2の法則」と呼ばれている法則に沿って、手取り収入の2割をまず貯蓄にまわします。それも「余ったら貯蓄しよう」ではなく、お給料が振り込まれたらすぐに貯蓄に回して、6割の生活費で暮らすというイメージです。そして残りの2割をぜひ自己投資に使っていただきたいですね。
仮に給料が20万円程度の場合、3~4万円ぐらいが貯蓄に回せる「2割」になります。この場合、2万円は定期預金にして、残りの1~2万円を投資信託の積立など投資に回してみるといった感覚で挑戦して欲しいですね。これを続けていけば30年後には大きな違いになります。
意外に身近な投資の世界
―「投資家」というと、遠い世界の話のように聞こえてしまう人も多いと思います。
大竹:そうかもしれません。しかし、例えば、2014年からスタートしたNISAの口座は、現在では1,000万口座を超えています。また、勤めている企業が確定拠出年金制度を導入していれば、自分では投資に強い興味があるわけではなくても、制度を通じて投資をする局面がやってきます。
また、投資ではないですが、「ふるさと納税」などのお得な制度もお金のことに関心をもつきっかけとしてはよいと思いますね。今は5つの自治体までなら、確定申告をしなくてもワンストップで控除を受けられます。
「投資家」という言葉にハードルの高さを感じてしまうのかもしれませんが、貯蓄する人を「貯蓄家」と呼ぶくらいの感覚で、誰でもなれると捉えるとよいのではないでしょうか。
―何らかの形で気付かずに、すでに投資家になっている場合もあるということですね。
大竹:別の見方をすれば、そもそも貯蓄も投資の一種と考えることもできます。銀行に預けたお金は、必ず銀行が何らかの形で運用をしているわけです。自分で稼いだお金をどこかに預けている以上、投資とは無縁でいられないと思った方がいいでしょう。
―現在は、先程話題になったNISAなど制度的な後押しもあります。
大竹:制度上の優遇もありますし、なんといっても購入できる最低金額が下がっていることは大きいと思います。昔は投資というと「お金持ちの人がやるもの」「余裕資金がないとできない」という雰囲気がありましたが、今は投資信託も100円から毎月積み立てができるので、金額については言い訳にならないと思いますね。
―よく「社会人になったら『日経新聞を読め』」といった話が出てきますが、投資をしていれば、経済紙を読む時の本気度も変わってくるでしょうね。
大竹:そうですね。「日経平均株価」や「TOPIX」といった言葉は、テレビやネットなど多くメディアのニュースで毎日報じられていますが、それこそ投資信託を1,000円持っているかどうかで、こういったニュースへの興味の度合いが大きく違ってくると思います。
―投資を怖いと感じる人も多いと思いますが。
大竹:日本人は貯蓄に対する信仰が非常に強いと思います。逆に言うと「元本割れするものは悪」と考える文化が根強い。預金していても1,000円のものは1,000円のままなのに、投資をした結果、900円になったというと、ものすごく損したように感じてしまう。
しかし、日常の中で1,000円程度のロスはいくらでもあります。極端な話、お店に入って料理を食べたら美味しくなかったということも、自分の判断の結果と捉えれば、投資で損失を出したのと同じと考えることもできます。
また、宝くじを考えてみてください。年末ジャンボを買う人も多いですが、3,000円分買って300円戻ってくるといった、つまり「はずれ」のパターンがほとんどです。これは投資した結果、90%値下がりしたようなものです。しかし、宝くじであれば、「そんなもんだ」と割り切れてしまう。そうやって考えてみると、株や投資信託では90%の損失が出ることはめったにありません。ですから、それほど投資を恐れる必要はないと思います。
小額からでもまず始めてみる
―まずは、投資に対して正しい知識を持つことが重要ですね。
大竹:はい。ただ、勉強はしても、投資をしないで終わる人はたくさんいます。
慎重派の人ほど勉強するのですが、投資の世界に限らず勉強には終わりがありません。ましてや、投資の世界はとても深いので、勉強を続けているうちに始めるタイミングをなくしてしまうという人も少なくないようです。ですから、少額からでも、「まず始めてみる」ということが重要でしょう。
―初任給をもらったばかりという人に、「これだけは知っておくといいよ」「興味をもったらとりあえず勉強しておいたほうがいいよ」ということはありますか?
大竹:会社に確定拠出年金の制度があるのであれば、「よく分からないからとりあえず預金商品で運用しよう」というのはでなくて、「せっかくの機会だから」と制度の内容や、そこで選べる金融商品それぞれについて勉強すると、将来のお金の貯まり方が大きく違うと思いますよ。
―確定拠出年金は、投資した金額が「控除される」ということもメリットですよね。
大竹:掛け金が全額控除されて、税金が安くなるという点は大きいと思います。新入社員の時は、お給料がそれほど多くないでしょうから、控除を受けられることで手取りが5,000円でも増えるのは嬉しいのではないでしょうか。
また、企業型の確定拠出年金制度が整っていない会社にお勤めの方には、最近話題になっているiDeCo(個人型確定拠出年金)は、賢く活用すれば、お得な制度だと思います。
こうした制度を活用するうえで大切なのは、純粋に「投資の勉強をする」ということ。お得な制度でも、投資で損失を出してしまっては元も子もありませんし、制度への加入をきっかけにして、投資の勉強ができるということ自体が大きなメリットだとも思いますね。
―制度を利用する際に考えるべき要素にはどんなことがありますか?
大竹:iDeCoは金融機関によって手数料が違ってくるので、そこはまず注意する必要があります。また、iDeCoには元本保証のものもあるので預金にするか、投資にするのか、ということについても考えておくべきでしょう。
ただ20代の方は、仮に60歳で定年だとしても老後まで40年もあります。時間があるというのは、資産運用を考える上で非常に有利なんです。「もっと早く知りたかった」というセリフは、年代を問わずお金についての知識を得た方から、非常によく聞きます。年齢が上がれば上がるほどよく聞くので、この記事を読んでらっしゃる方が22~23歳だとしたら、その段階で、こうした知識を得ることができたと言うのは、それだけで大きなアドバンテージなので、チャンスを逃さないで欲しいなと思います。
―最後に新社会人に向けてメッセージをお願いします。
大竹:どうしても「お金の勉強」というと節約や投資といった何か特定のテーマに意識がいきやすいのですが、お金と上手に付き合うには幅広い知識と考え方が必要です。
私たちは、「お金の教養」として、「考え方」「貯め方」「使い方」「増やし方」「稼ぎ方」「維持管理」「社会還元」の7つに分けて考えることをお伝えしています。これらをバランスよく考えることが重要ですし、ふるさと納税などもそのメリットだけではなく社会還元的な視点を持つと見え方が違ってきます。こうした視点は必ず仕事にも活きてくるでしょうし、それによって今後の人生の幅の広がり方も変わってくるのではないでしょうか。
プロフィール
大竹 のり子:ファイナンシャルプランナー。株式会社エフピーウーマン代表取締役。
出版社の編集者を経て2005年4月に女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」を設立。 現在、雑誌、講演、テレビ・ラジオ出演などのほか、『お金の教養スクール』の運営を通じて正しいお金の知識を学ぶことの大切さを伝えている。『なぜかお金に困らない女性の習慣』(大和書房)、『老後に破産しないお金の話』(成美堂出版)など著書は40冊以上に及ぶ。一般社団法人 金融学習協会理事。
・http://www.fpwoman.co.jp/