「憧れの大先輩です♡」こちらが紹介した男との食事会で、ドン引きした年下女の発言
マウンティング。
本来は動物が「相手よりも自分が優位であること」を示そうとする行為のことを言う。
しかし最近、残念ながら人間界にもマウンティングが蔓延っているのだ。
それらを制裁すべく現れたのが、財閥の創業一族で現在はIT関連会社を経営する、一条元（はじめ）。通称・ジェームズだ。
マウンティング・ポリスとも呼ばれる彼が、今日戦う相手とは…？
▶前回：同期の美女と話してただけなのに…。男性上司がニヤニヤしながら近づいてきて放った、ありえない一言
金曜23時。僕は西麻布にある会員制のバーで、恵那にまっすぐ見つめられて動けなくなっていた。
スラリと長い手足に、アーモンド型の目。思わず見とれてしまうほど美しい彼女の顔が、グイグイとこちらに迫ってくる。
「ど、どうなんでしょうか…」
僕がなぜ、こんな状況に陥っているのか？話は、数時間前にさかのぼる…。
◆
恵那から連絡が来たのは2週間前のこと。「みんなで食事しよう」ということだったので、僕はいつものごとく蓮と瑛太を誘った。
しかし瑛太からは「彼女に悪いから行かない」とハッキリ断られてしまい、蓮と僕だけ食事会に顔を出すことになったのだ。
その会に、なかなかの“ツワモノ”がいたのである。
ジェームズが遭遇してしまった“ツワモノ”とは？
Case14：年齢でマウントを取ってくる後輩女／通報者・恵那（35）の場合
年齢というのは、時に厄介なもの。
自分ではまだまだ後輩ポジションだと思っていても、気がつけばその場にいる人の中で一番年上だった、なんてことも増えてきた。
とはいえ、別に気にしていたわけではない。ただ最近、どうも引っ掛かることがある。
彼女の名は乃亜（のあ）ちゃん、27歳。
名前からしてジェネレーションギャップを感じるけれど、なぜか彼女はとても私に懐いてくれて、こちらも何かと気にかけていた。
しかしこの頃、乃亜ちゃんの様子がなんだかおかしいのだ。
彼女は「恵那さん、誰かいい人いたら紹介してください♡」なんて可愛らしい猫なで声で言ってくるので、何度か私の知り合いを紹介したこともある。
でも食事会の場に行くと乃亜ちゃんは決まって、私のことをこんなふうに言うのだ。
「恵那さんは、私の大大大先輩なんです♡憧れのお姉様っていうか…」
「そんな乃亜ちゃん、大袈裟な」
「だって恵那さんは仕事もバリバリしてて、その歳まで独身だけど全く困ってないじゃないですか」
「う、うん。そうだね」
最初は私も気づいていなかった。けれども一度、私の男友達を紹介したときに、その彼から指摘されたのだ。
「なぁ恵那。お前、あの子にマウント取られてるぞ。見ているこっちサイドからしたら面白いけど（笑）」
「えっ、嘘でしょ？」
それ以来、気になって彼女の発言をよく聞くようにした。するとたしかに、言葉の端々に微妙なトゲを感じるようになったのだ。
例えば、別の食事会でのこと。
「え〜。じゃあ男性陣の皆さんは、恵那さんと同じ歳ってことですか？…ということは、昭和？」
「そうだよー。乃亜ちゃんは？」
「乃亜は平成7年なんですけど…。今はもう令和の時代ですからね！しかも西暦で言うと95年で、90年代生まれなので。もう終わってますよ〜」
私からすると何が“終わっている”のか、全くわからない。むしろ、まだまだ若い。
「乃亜ちゃん、若いね〜」
男性陣の言葉を聞いて、彼女は嬉しそうに目を細めている。
「そんなそんな。本当にもうオバサンです。歳を取るって、残酷ですよね。胸とかお尻も垂れてくるっていうじゃないですか？このままずっと20代でいれたらいいなと思うんですけどね♡」
そう言うと、なぜかチラッと私のほうを見てきた。
「あと乃亜は、絶対20代のうちに結婚したいんです！！30歳を過ぎても、この界隈で飲んでいるとか恐怖でしかなくて。早く結婚して“卒業”したいんですよね」
マウントを取ってくるのは、別に構わない。だけど一番不快だったのは、私の友人を紹介した場でマウンティングしてくることだった。
― なんでわざわざ私の知り合いがいるところで、そんなことをするんだろう。
そうモヤモヤしていたタイミングで、ジェームズさんの存在を思い出したのだ。
年齢マウントを取ってくる女に、最大級の制裁を…！！
年齢が若い＝女としての価値が高い、わけではない
ジェームズさんに連絡を入れると、食事会のお誘いにすぐ乗ってくれた。さらに、お友達の蓮さんまで連れて来てくれたのだ。
「お2人は、モデルさんか何かなんですか？なんでそんなにカッコイイんですか？」
案の定、乃亜ちゃんはジェームズさんと蓮さんにしっかり食いついている。
「僕たちは、ただの一般人です…」
タジタジになっているジェームズさんに、助け舟を出そうとしたとき。彼女が、いつも通り“年齢マウント攻撃”を仕掛けてきた。
「でも恵那さん、やっぱりさすがだなぁ。こんな素敵な人たちとお知り合いだなんて。乃亜も、恵那さんみたいな歳の取り方をしたいんです！恵那さんは、私の大先輩なので♡」
一度くらい注意しようかと思った、そのときだった。ジェームズさんが真面目な顔で、乃亜ちゃんにこんなことを聞き始めたのだ。
「先輩？お2人は、学生時代からの知り合いなんですか？」
「え？違いますけど…」
「じゃあ、何の先輩なんですか？」
たしかに、私は何の先輩なのだろう。ジェームズさんの質問に、乃亜ちゃんもたじろぐ。
「何のって言われても…。じ、人生の？」
「人生の？恵那さんが、メンターってことですか？？」
ジェームズさんのピュアさに、思わず私は笑いそうになってしまう。そしてこの後も「やっぱり素敵な人だなぁ」と思えるような言葉が、彼の口から飛び出したのだ。
「ジェームズさんと蓮さんは、今何歳なんですか？」
「僕たち？35歳と34歳、だっけ？」
きっと彼女は、いつもの言葉を待っていたのだろう。「乃亜ちゃんは何歳？」という、私に対して年齢マウントが取れる言葉を。
しかし2人はそれ以上、年齢の話題を膨らませるようなことはしなかった。
「私、27歳なんですけど。お2人は昭和生まれってことですか？」
「昭和？あぁ、そっか。日本のその数え方、ムズカシイですね」
ジェームズさんの反応がつまらなかったのか、乃亜ちゃんは何かを訴えるようにジッと蓮さんを見つめている。しかし彼の反応も、同じくクールだった。
「蓮さんは女性の年齢、気にならないんですか？」
「うん、別にどうでもいいかな」
「そ、そんな…」
とにかく納得がいかない様子の彼女は、少しも引き下がろうとしない。
「じゃあ交際相手に求める条件は何ですか？やっぱり、若い子のほうがいいですよね？」
「年齢で判断したことはないなぁ。そもそも年齢なんて、ただの数字にすぎないから」
「僕もジェームズと同じかな。年齢よりも、これまで生きてきた中で培われた価値観とか、人間性とか…。歳を重ねても変わらない、その人自身の中身が大事だと思う」
乃亜ちゃんはもう、何も言えなくなっていた。
人は、年齢じゃない。そんな当たり前のことを、彼らは改めて教えてくれたのだ。
◆
そうして乃亜ちゃんがすごすごと帰っていった後、私はお礼も兼ねてジェームズさんを飲みに誘ってみた。
「この後、一杯だけどうですか…？」
「うん、いいですね。行きましょうか」
辿り着いたのは、西麻布にある会員制のバー。彼が素敵な人であることは百も承知だったけれど、今日はさらにカッコよく見える。
― ジェームズさんって、どういう人と付き合うんだろう？
耐えきれなくなり、私は思わず聞いてしまった。
「ジェームズさん、どうなんですか？私のこと、どう思ってるんですか？」
▶前回：同期の美女と話してただけなのに…。男性上司がニヤニヤしながら近づいてきて放った、ありえない一言
▶1話目はこちら：未婚の37歳友人に「結婚してなくて可哀想」と言い放つ女。しかし、実は夫と…
▶NEXT：5月9日 月曜更新予定
遂に、ジェームズに春到来か！？
