チーム戦ならではの面白さがあった(撮影:GettyImages)

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現在の米ツアーのレギュラー大会における唯一の2人1組のチーム戦、チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオーリンズは、ザンダー・シャウフェレ/パトリック・カントレー組が初日から4日間、首位を守り抜き、大会史上初の完全優勝を達成して幕を閉じた。
シャウフェレは昨夏の東京五輪の金メダリストだが、米ツアーにおいては2019年1月のセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズで通算4勝目を挙げてからは、優勝から遠ざかっていた。今大会開幕時も「調子は決して良くない」と、やや自信なさげに語ったほどだった。
だが、そんなシャウフェレをうまくリードする役割を果たしたのが、カントレーだった。
昨季のプレーオフ・シリーズでBMW選手権とツアー選手権を続けざまに制し、通算6勝目を挙げてフェデックスカップの年間王者に輝いたカントレーは、今季も好調を維持し、世界ランキングも4位へ上昇。
勢いも自信もありながら決して意気込むことなく冷静沈着なプレーを続けたカントレーの姿勢がシャウフェレをうまく鼓舞し、シャウフェレの屈託のない笑顔が時としてシリアスになりすぎるカントレーの心を和ませ、そうやって2人は完全優勝に向かって突き進むことができたのだと思う。
どちらもカリフォルニアで生まれ育ち、シャウフェレはサンディエゴ州立大学、カントレーはUCLAのゴルフ部で腕を磨いた同郷どうし。プレジデンツカップでもライダーカップでもペアを組み、すでに相性の良さは実証済みだったが、今大会ではこれまで以上の絶妙なコンビネーションを披露。
かつてのフレッド・カプルスとデービス・ラブの黄金コンビを彷彿させる米国の最高最強コンビの誕生と言っていい。チーム戦ならではの良さや面白さが存分に楽しめる展開だった。
今大会は、以前はストロークプレー個人戦という一般的な形式だったが、当時から大会そのものをアピールするための奇抜なテレビCMを流すなど、他の大会とは一味違う運営努力が見られた。
そして、2017年からはチーム戦に切り替えられ、1番ティに向かう選手たちは各チームそれぞれが選んだウォークアップ・ソングに乗って登場するといったユニークな演出も採り入れている。
ニューオーリンズという土地柄も反映しつつ、地域密着型のチーム戦という独自性を確立しようという取り組みは、大勢の観客に受け入れられ、選手たちにも好評の様子だ。
優勝したシャウフェレは「パトリックの冷静さに助けられ、我慢のゴルフができた」と語り、カントレーは「お互いのベストなところが活かせて楽しかった。最高だった」と満足げだった。
折りしも、米国男子ツアーは2023年からチーム戦フォーマットの試合を秋の時期に新たに3つ創設することを検討中であり、今大会はその行く末を占う試金石の役割を見事に果たしたと言っていい。
新たなチーム戦の創設は、サウジアラビアの潤沢なオイルマネーを引っ提げ、グレッグ・ノーマンが創設しようとしている新たなツアーが個人戦とチーム戦の双方をうたっていることへの対抗策と見られており、アジア、欧州、中東でそれぞれ1試合ずつ開催される見込みだ。
いずれも予選カットはなく、魅力的な高額賞金が用意されるという。
前シーズンのフェデックスカップ上位50名だけが出場でき、1チーム5名、全10チームが競い合う。各チームはキャプテンによって導かれ、そのキャプテンには、前シーズンのPIP(プレーヤー・インパクト。・プログラム)でトップ10に選ばれた人気選手が就くというシステムになりそうである。
これからの米ツアーは、これまで以上に高額な賞金が用意され、多彩になっていく。その一方で、選手には人気も成績も求められ、ストロークプレー個人戦もフォーボールやフォーサム形式のチーム戦も、どちらもこなせるマルチな才能も求められることになる。
そうした変化や変革の発端はノーマン対策だとしても、最終的に米国男子ツアーがより良いツアーになるのであれば、「グレッグ・ノーマン様様」と言えそうである。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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