西城秀樹・やしきたかじんに届け - 森口博子が語るガンダムソングカバーアルバム『COVERS 3』後編
●歌に込めた想いや熱量を受け継ぐ
アーティスト・森口博子が、ガンダムソングカバーアルバム『GUNDAM SONG COVERS 3』をリリース。第3弾にして最終章となる今回は、男性ボーカル曲だけをセレクトしている。TM NETWORK、オーイシマサヨシ、押尾コータローら豪華アーティストとコラボレーションした珠玉のカバーソングアルバムとなる。
今回は、『GUNDAM SONG COVERS 3』に収録される各楽曲の魅力について語ってもらった。また、「森口博子オフィシャルYou Tubeチャンネル」にて、本アルバムの全曲ダイジェスト動画が公開されている。ぜひ、動画を流しながら本インタビューを楽しんでほしい。
○●オーイシさんは楽しい仕掛けをする天才
──インタビュー後編も引き続きアルバムの収録曲について話を聞いていきます。まずは「砂の十字架」。原曲は、谷村新司さんが作詞・作曲、やしきたかじんさんが歌唱を担当されています。
「ライリー」というスキャットから始まるのがとにかく印象的でした。スキャットのように、歌詞が付いてない部分にこそ、ちゃんとメッセージが込められている、と私は思ったんです。今回はアムロとシャアが背負った十字架や悲しみを「ライリー」に乗せました。
──この曲の注目ポイントですね。
ぜひ聴いていただきたい部分です。歌詞が付いていない表現って、工夫が必要なんですよね。ともすれば、ボーカリストの力量が問われる部分でもある。たかじんさんはレコーディング一発OKくらいの歌唱力を持っている方なんです。それでもこの曲はすごく時間がかかったと以前に記事で読んだことがあります。だからこそ、私もていねいに表現させていただきました。後半はスキャットの嵐ですが、ひとつひとつ表現にもこだわったので、そこもじっくり聴いていただけたら嬉しいです。
──カバー曲を歌う際、原曲の歌い方などは意識される?
もちろん、原曲は聞きます。そしてリスペクトは忘れません。みなさんが歌に込めた想いや熱量を受け継ぎながら、私なりに表現しています。たかじんさんの歌声って色気があってすごいんですよ。
──楽曲自体も哀愁が漂っていて、年齢を重ねるごとに沁みる一曲に仕上がっていると感じます。
歌謡曲調の哀愁ある世界観にグッときますよね。アレンジの部分でいえば今回、冒頭にゴスペルテイストのコーラスワークを入れました。あの部分も実は私が担当しています。あえて低音を効かせているので、新しい森口博子が表現できました。
──続く「STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」。オーイシマサヨシさんとのコラボですね。
オーイシさんとは、BS11で放送されているレギュラー番組『Anison Days』で何度もコラボをしていて、ガンダムソングカバーでもご一緒したいと思うようになったんです。
LINDBERGの川添智久さん作曲のこのギターロックを聴いたとき、「もうオーイシさんしかいない! ピッタリだ」と思い、オファーをさせていただきました。彼は歌声はもちろん、アレンジも素晴らしい。楽しい仕掛けをする天才だと思います。だから今回は、オーイシさんのアレンジ込みでお願いさせていただきました。
──実際にアレンジを聴いてみていかがでしたか?
とにかくハッピー! 体調が悪い時に聴いても気持ちが上がるような一曲に仕上がっていました。また、ミュージシャンの方々の演奏も素晴らしかったです。血流が巡るよう! 自分のなかで何度も立ち上がって掴んだ勝利が見える音でした。そして、オーイシさんのコーラス。あのハッピーオーラは、みなさんを幸せに包み込んでくれますよ!!
──私はこの曲を聴いたとき、拳を突き上げたくなりました。
ライブでは絶対に外せない曲ですよね! 私も歌っていて気持ちいいです。まだなかなか声を出してのライブ鑑賞が難しいですが、それでもみなさんが、心の声を拳に込めて掲げてくれている画が見えてきます。
○●日本人の琴線に触れメロディーに感動
──アルバム7曲目「RIVER」の原曲は、石井竜也さんが作詞・作曲を担当されています。
石井さんの独特でオシャレなグルーヴに感動しました。この曲は第1弾・第2弾にも参加いただいた、ジャズバイオリニスト・寺井尚子さんとのコラボレーションです。今回も感動を裏切りませんでした!
このアルバムシリーズのコンセプト「大人のためのガンダムソング」のベースを創ってくださったキーマンです!! 尚子さんには、「イントロ部分に『苦悩』をテーマにした演奏を入れたい」とリクエストさせていただきました。
情感が豊かで繊細かつ情熱的なサウンドに痺れました! 尚子さんのヴァイオリンは歌心があるので、私も毎回覚醒しますね。一発OKの興奮した同時レコーディングでした。
──今回、この曲をカバーしようと思った理由は?
私のディレクターさんが大好きで、「ぜひ森口さんに挑戦して欲しい曲があるんです」と教えてくれたんです。私も聞いた瞬間に気に入って、数ある候補曲のなかでも、「これは絶対に歌いたい」と思いました。どの曲もそうですが、「RIVER」は特に年齢を重ねるとより良く感じられる「大人なガンダムソング」だと思います。
──続く「Meteor」も『機動戦士ガンダムSEED』の楽曲ですね。
実はレコーディングする5日前に、原曲を歌唱されているT.M.Revolutionの西川貴教さんとステージでご一緒したんです。私の後に西川さんの出番で、この曲を歌唱されたんですよ。それなら、「本家本元の西川さんからエネルギーをもらわずにいてどうする」と思いまして。勝手に「Meteor」のイントロを背中に感じ、一人で世界に浸り、自分に酔いしれながら舞台をはけていきました(笑)。
──なるほど(笑)。西川さんも『ガンダム』楽曲をいくつか歌唱していますよね。
歌声が熱いですよね。エネルギッシュで打ち込み主体のロックでエッジの効いた「Meteor」の世界観は西川さんならではと。
──原曲を聞いたときの印象についても教えてください。
何といっても浅倉大介さんが生み出すメロディーの心地よさ。音はとんがったロックテイストかもしれませんが、日本人の琴線に触れるようなメロディーが私はとても好きですね。
──とても流れるようなメロディーですよね。
そうそう! 流れが繋がっているんですよね。今回はそんな原曲をリスペクトしつつ、ストリングスを主体とした少し柔らかい世界に仕上げました。時乗浩一郎さんのアレンジにも注目しながら聞いていただけると嬉しいですね。
●西城秀樹さんが力をくれた
○●カバーソングの意義
──「ターンAターン」では世界で活躍する和楽器バンドの神永大輔さんとコラボしています。
小林亜星さんが作曲された原曲にも和テイストが入っているので、今回はそこをフィーチャーしました。神永さんの演奏を聴いて、度肝を抜かれました! 尺八であんなにアグレッシブな表現ができるんだと驚きましたね。
今回のアレンジで、恐らくみなさんも尺八の概念が変わると思います。それくらいロックと合うんですよ。きっと、(原曲を歌唱した、西城)秀樹さんも納得してくださるんじゃないかと。
──西城秀樹さんの熱い歌声、大好きです。
秀樹さんの情熱的な歌声。あのパッションは今も忘れられません。"ターンAターン……"とタイトルを何度も連呼する部分の表現って、実はとても難しいんですよ。歌詞がないスキャットと同じく表現力が問われるんです。
それでも秀樹さんは、最後までエネルギーが落ちないんです。やっぱりすごいなぁ、と思いながら歌わせていただきました。実はこの曲をレコーディングする日、秀樹さんのお奥様に電話でご報告させていただいたんです。すると、「仏壇の秀樹さんにも伝えますね」って言ってくださって。
──それが、何よりの力になった。
本当にパワーをいただきました。それでも、やはり相当なエネルギーを使う曲。レコーディング中、ちょっと歌のパワーが持続できなくなりそうになったんです。「これ、大丈夫かな」と思った、その瞬間でした。突然、エネルギーが湧いてきて歌いきることができたんです。
たぶん、秀樹さんが来て力をくれたって感じました。その出来事をレコーディング後に奥様に話したら、涙ぐまれながら「秀樹さんもね、きっとそこで応援してくれたんですね」って、そう言ってくださったんです。
──くじけそうになった時、西城秀樹さんが支えてくださったんですね。
実は、秀樹さんには妹のようにかわいがってもらっていたんですよ。当時、秀樹さんが「ターンAターン」を歌う時、私に電話がかかってきたんです。「博子ちゃんはガンダムの先輩だね。ガンダムの世界ってどんな感じ?」と尋ねてきたんです。そんな、どこまでも勉強熱心で探求心の強い秀樹さんの想いを受け継いで、精一杯歌いました。
──「砂の十字架」を歌唱されたたかじんさんもそうですが、「カバー」って、原曲を歌った方々の想いやその曲自体を後世まで残していく、という意義もあるんじゃないかなと、話を聞いていて感じました。
そうですよね。バラエティでたかじんさんとご一緒したとき、「デートよりコンサート優先。歌の邪魔になる恋愛はしない」という私の結婚観を話したことがあるんです。
そしたら、あのたかじんさんがギャグにせず、真顔で「この子、結婚難しいわ」っておっしゃったんですよ(笑)。たかじんさんがおっしゃる通り、結婚って難しいということを実感しています(笑)。そんなことも思い出しながら、今回カバーさせていただきました。
──たかじんさん、今回のカバーを聞いて何と思っているでしょうね。
歌のことよりも私の現状を見て、「俺の言うた通りやったなー」って、きっとそう言っていると思います(笑)。
○●地球への愛を込めたカバーソングに
──アルバムを締めくくるのは「ビギニング」。『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』主題歌です。
大好きな井上大輔さんが作曲された一曲です。井上さんの曲を聴くと音楽に対する愛、才能、色々なものに対する情熱を感じて、ことばで説明できない涙がいつも流れちゃうんですよね。そんな井上さんの曲に富野(由悠季)監督のメッセージが乗って、とても壮大な楽曲に仕上がっています。
──言葉数が少ないなかに色々な想いが詰まっていますよね。
そうなんです。ぜんぶで70文字ちょっと。100文字ないのにこれだけ世界観を表現できるのは、もう究極ですよね。地球で生きている私たちに投げかけるような、訴えかけるような、包み込んでくれるような……。そんな曲です。
私、ブログや年賀状などでよく「健やかに」って言葉を使うんです。人々が健やかになれば、地球も健やかになると思っていて。この曲にも「健やかに」という言葉が使われていて、私が普段から言葉にしているテーマと通じていると感じました。そこにグッときながら、カバーしています。
──ゴスペルコーラスグループのVOJA(The Voices of Japan)が加わることで、より神々しさが増している気がしました。
VOJAさんとは第二弾でもコラボさせていただきました。細胞一つひとつから湧き出るような、魂の歌声に今回も震え上がりました。訥々と始まってサビで突然開けていくコントラストが素敵です。MVでのため息が出るほどの美しい映像と、VOJAさんの壮大なコーラスにゾクゾクきますよ! きっとガンダムソングを聴いたことがない人も、神々しさを体感できると思います。
──ボーナストラックとして、『機動戦士Ζガンダム』メドレー(Ζ・刻をこえて〜水の星へ愛をこめて)が収録されていますね。
『ガンダム』40周年を記念して行われたNHK「全ガンダム大投票」で360曲以上ある主題歌の中から、私のデビュー曲「水の星へ愛をこめて」が1位に選ばれたことから、このカバーシリーズが始まりました。
4歳の頃から歌手になりたくて、いろいろなオーディションを受けて落ちまくっていたとき、『機動戦士Ζガンダム』の後期主題歌オーディションに合格することができました。私に手を差し伸べてくれた、夢を叶えてくれた運命の作品です。そんな作品の楽曲を、前期OPを歌っていた鮎川麻弥さんとのメドレーという形で今回はお届けしています。
麻弥さんとは出会ってから30年以上が経ちました。いつまでも美しいお声の麻弥さんと一緒に音楽をやらせていただけるのは刺激になりますし、言葉にできない感慨深さもありました。私たちと熱いファンのみなさん、支えてくださっているすべてのスタッフのみなさんと様々なことを乗り越えてきた証しです。ガンダムカバーソング第一弾の一曲目が「水の星へ愛をこめて」で、第三弾の締めくくりも「水の星へ愛をこめて」。地球への愛を込めたカバーソングになりましたね。
──本アルバムリリース後、2022年5月3日にはコンサート“Starry People”が昭和女子大学 人見記念講堂で開催されます。
ガンダムソングカバーアルバムの集大成と言えるコンサートになる予定です。私のオリジナルソングも交えながら、宇宙色満載の一夜になると思います。
──いま、構想を練っている段階?
そうです。このコンサートならではの演出も予定しているので、この機会を逃したら、後悔させちゃう自信があります(笑)。
──今後はどのようにガンダム作品と関わっていきたいですか?
カバーアルバムで色々なアプローチをさせていただきました。そのなかで、『ガンダム』を知らなかった方、アニソンを聞いてこなかった方などと交流することもできました。これからも枠をあえて決めないで、いろいろな形でみなさんにガンダムソングをお届けできればと思っています。そのために、常にアップデートしたボーカリスト・森口博子であり続けたいですね。
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森口博子(もりぐちひろこ) 。6月13日生まれ。福岡県出身。TVアニメ『機動戦士Zガンダム』のOPテーマ「水の星へ愛をこめて」でデビュー。音楽活動と並行し、バラエティ・ドラマ・舞台・ラジオ・CMなど幅広く活躍する。2019年「機動戦士ガンダム40周年」のアニバーサリーイヤーに『GUNDAM SONG COVERS』を発売し、オリコンウィークリーチャート3位を獲得。同作で「日本レコード大賞」企画賞も受賞。翌2020年に続編「GUNDAM SONG COVERS 2」を発売。オリコン/Billboard JAPAN共に週間ランキング2位という前作を上回る実績を残し、シリーズ累計20万枚を超える大ヒットとなった
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○●『GUNDAM SONG COVERS 3』
初回限定盤(CD+Blu-ray)
価格:4,400円(税込)
通常盤(CD ONLY)
価格:3,300円(税込)
CD収録内容
01.翔べ!ガンダム (「機動戦士ガンダム」オープニングテーマ)
02.G の閃光 / with 押尾コータロー (「ガンダム G のレコンギスタ」エンディングテーマ)
03.BEYOND THE TIME 〜メビウスの宇宙を越えて〜 / with TM NETWORK (「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」主題歌)
04.いくつもの愛をかさねて / with SALT&SUGAR (「機動戦士V ガンダム」挿入歌)
05.砂の十字架 (「機動戦士ガンダム」主題歌)
06.STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜 / with オーイシマサヨシ (「機動戦士V ガンダム」オープニングテーマ)
07.RIVER / with 寺井尚子 (「機動戦士ガンダムSEED」エンディングテーマ)
08.Meteor (「機動戦士ガンダムSEED」挿入歌)
09.ターンA ターン / with 神永大輔 (和楽器バンド) (「∀ガンダム」オープニングテーマ)
10.ビギニング / with VOJA (「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」主題歌)
[BONUS TRACK]
「機動戦士Ζガンダム」メドレー (Ζ・刻をこえて〜水の星へ愛をこめて) / with 鮎川麻弥
Blu-ray収録内容
01.水の星へ愛をこめて / with 寺井尚子
02.フリージア / with 塩谷哲
03.一千万年銀河 / with 塩谷哲
04.君を見つめて -The time I'm seeing you- / with 本田雅人
05.翔べ!ガンダム
06.ビギニング / with VOJA
アーティスト・森口博子が、ガンダムソングカバーアルバム『GUNDAM SONG COVERS 3』をリリース。第3弾にして最終章となる今回は、男性ボーカル曲だけをセレクトしている。TM NETWORK、オーイシマサヨシ、押尾コータローら豪華アーティストとコラボレーションした珠玉のカバーソングアルバムとなる。
今回は、『GUNDAM SONG COVERS 3』に収録される各楽曲の魅力について語ってもらった。また、「森口博子オフィシャルYou Tubeチャンネル」にて、本アルバムの全曲ダイジェスト動画が公開されている。ぜひ、動画を流しながら本インタビューを楽しんでほしい。
──インタビュー後編も引き続きアルバムの収録曲について話を聞いていきます。まずは「砂の十字架」。原曲は、谷村新司さんが作詞・作曲、やしきたかじんさんが歌唱を担当されています。
「ライリー」というスキャットから始まるのがとにかく印象的でした。スキャットのように、歌詞が付いてない部分にこそ、ちゃんとメッセージが込められている、と私は思ったんです。今回はアムロとシャアが背負った十字架や悲しみを「ライリー」に乗せました。
──この曲の注目ポイントですね。
ぜひ聴いていただきたい部分です。歌詞が付いていない表現って、工夫が必要なんですよね。ともすれば、ボーカリストの力量が問われる部分でもある。たかじんさんはレコーディング一発OKくらいの歌唱力を持っている方なんです。それでもこの曲はすごく時間がかかったと以前に記事で読んだことがあります。だからこそ、私もていねいに表現させていただきました。後半はスキャットの嵐ですが、ひとつひとつ表現にもこだわったので、そこもじっくり聴いていただけたら嬉しいです。
──カバー曲を歌う際、原曲の歌い方などは意識される?
もちろん、原曲は聞きます。そしてリスペクトは忘れません。みなさんが歌に込めた想いや熱量を受け継ぎながら、私なりに表現しています。たかじんさんの歌声って色気があってすごいんですよ。
──楽曲自体も哀愁が漂っていて、年齢を重ねるごとに沁みる一曲に仕上がっていると感じます。
歌謡曲調の哀愁ある世界観にグッときますよね。アレンジの部分でいえば今回、冒頭にゴスペルテイストのコーラスワークを入れました。あの部分も実は私が担当しています。あえて低音を効かせているので、新しい森口博子が表現できました。
──続く「STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」。オーイシマサヨシさんとのコラボですね。
オーイシさんとは、BS11で放送されているレギュラー番組『Anison Days』で何度もコラボをしていて、ガンダムソングカバーでもご一緒したいと思うようになったんです。
LINDBERGの川添智久さん作曲のこのギターロックを聴いたとき、「もうオーイシさんしかいない! ピッタリだ」と思い、オファーをさせていただきました。彼は歌声はもちろん、アレンジも素晴らしい。楽しい仕掛けをする天才だと思います。だから今回は、オーイシさんのアレンジ込みでお願いさせていただきました。
──実際にアレンジを聴いてみていかがでしたか?
とにかくハッピー! 体調が悪い時に聴いても気持ちが上がるような一曲に仕上がっていました。また、ミュージシャンの方々の演奏も素晴らしかったです。血流が巡るよう! 自分のなかで何度も立ち上がって掴んだ勝利が見える音でした。そして、オーイシさんのコーラス。あのハッピーオーラは、みなさんを幸せに包み込んでくれますよ!!
──私はこの曲を聴いたとき、拳を突き上げたくなりました。
ライブでは絶対に外せない曲ですよね! 私も歌っていて気持ちいいです。まだなかなか声を出してのライブ鑑賞が難しいですが、それでもみなさんが、心の声を拳に込めて掲げてくれている画が見えてきます。
○●日本人の琴線に触れメロディーに感動
──アルバム7曲目「RIVER」の原曲は、石井竜也さんが作詞・作曲を担当されています。
石井さんの独特でオシャレなグルーヴに感動しました。この曲は第1弾・第2弾にも参加いただいた、ジャズバイオリニスト・寺井尚子さんとのコラボレーションです。今回も感動を裏切りませんでした!
このアルバムシリーズのコンセプト「大人のためのガンダムソング」のベースを創ってくださったキーマンです!! 尚子さんには、「イントロ部分に『苦悩』をテーマにした演奏を入れたい」とリクエストさせていただきました。
情感が豊かで繊細かつ情熱的なサウンドに痺れました! 尚子さんのヴァイオリンは歌心があるので、私も毎回覚醒しますね。一発OKの興奮した同時レコーディングでした。
──今回、この曲をカバーしようと思った理由は?
私のディレクターさんが大好きで、「ぜひ森口さんに挑戦して欲しい曲があるんです」と教えてくれたんです。私も聞いた瞬間に気に入って、数ある候補曲のなかでも、「これは絶対に歌いたい」と思いました。どの曲もそうですが、「RIVER」は特に年齢を重ねるとより良く感じられる「大人なガンダムソング」だと思います。
──続く「Meteor」も『機動戦士ガンダムSEED』の楽曲ですね。
実はレコーディングする5日前に、原曲を歌唱されているT.M.Revolutionの西川貴教さんとステージでご一緒したんです。私の後に西川さんの出番で、この曲を歌唱されたんですよ。それなら、「本家本元の西川さんからエネルギーをもらわずにいてどうする」と思いまして。勝手に「Meteor」のイントロを背中に感じ、一人で世界に浸り、自分に酔いしれながら舞台をはけていきました(笑)。
──なるほど(笑)。西川さんも『ガンダム』楽曲をいくつか歌唱していますよね。
歌声が熱いですよね。エネルギッシュで打ち込み主体のロックでエッジの効いた「Meteor」の世界観は西川さんならではと。
──原曲を聞いたときの印象についても教えてください。
何といっても浅倉大介さんが生み出すメロディーの心地よさ。音はとんがったロックテイストかもしれませんが、日本人の琴線に触れるようなメロディーが私はとても好きですね。
──とても流れるようなメロディーですよね。
そうそう! 流れが繋がっているんですよね。今回はそんな原曲をリスペクトしつつ、ストリングスを主体とした少し柔らかい世界に仕上げました。時乗浩一郎さんのアレンジにも注目しながら聞いていただけると嬉しいですね。
●西城秀樹さんが力をくれた
○●カバーソングの意義
──「ターンAターン」では世界で活躍する和楽器バンドの神永大輔さんとコラボしています。
小林亜星さんが作曲された原曲にも和テイストが入っているので、今回はそこをフィーチャーしました。神永さんの演奏を聴いて、度肝を抜かれました! 尺八であんなにアグレッシブな表現ができるんだと驚きましたね。
今回のアレンジで、恐らくみなさんも尺八の概念が変わると思います。それくらいロックと合うんですよ。きっと、(原曲を歌唱した、西城)秀樹さんも納得してくださるんじゃないかと。
──西城秀樹さんの熱い歌声、大好きです。
秀樹さんの情熱的な歌声。あのパッションは今も忘れられません。"ターンAターン……"とタイトルを何度も連呼する部分の表現って、実はとても難しいんですよ。歌詞がないスキャットと同じく表現力が問われるんです。
それでも秀樹さんは、最後までエネルギーが落ちないんです。やっぱりすごいなぁ、と思いながら歌わせていただきました。実はこの曲をレコーディングする日、秀樹さんのお奥様に電話でご報告させていただいたんです。すると、「仏壇の秀樹さんにも伝えますね」って言ってくださって。
──それが、何よりの力になった。
本当にパワーをいただきました。それでも、やはり相当なエネルギーを使う曲。レコーディング中、ちょっと歌のパワーが持続できなくなりそうになったんです。「これ、大丈夫かな」と思った、その瞬間でした。突然、エネルギーが湧いてきて歌いきることができたんです。
たぶん、秀樹さんが来て力をくれたって感じました。その出来事をレコーディング後に奥様に話したら、涙ぐまれながら「秀樹さんもね、きっとそこで応援してくれたんですね」って、そう言ってくださったんです。
──くじけそうになった時、西城秀樹さんが支えてくださったんですね。
実は、秀樹さんには妹のようにかわいがってもらっていたんですよ。当時、秀樹さんが「ターンAターン」を歌う時、私に電話がかかってきたんです。「博子ちゃんはガンダムの先輩だね。ガンダムの世界ってどんな感じ?」と尋ねてきたんです。そんな、どこまでも勉強熱心で探求心の強い秀樹さんの想いを受け継いで、精一杯歌いました。
──「砂の十字架」を歌唱されたたかじんさんもそうですが、「カバー」って、原曲を歌った方々の想いやその曲自体を後世まで残していく、という意義もあるんじゃないかなと、話を聞いていて感じました。
そうですよね。バラエティでたかじんさんとご一緒したとき、「デートよりコンサート優先。歌の邪魔になる恋愛はしない」という私の結婚観を話したことがあるんです。
そしたら、あのたかじんさんがギャグにせず、真顔で「この子、結婚難しいわ」っておっしゃったんですよ(笑)。たかじんさんがおっしゃる通り、結婚って難しいということを実感しています(笑)。そんなことも思い出しながら、今回カバーさせていただきました。
──たかじんさん、今回のカバーを聞いて何と思っているでしょうね。
歌のことよりも私の現状を見て、「俺の言うた通りやったなー」って、きっとそう言っていると思います(笑)。
○●地球への愛を込めたカバーソングに
──アルバムを締めくくるのは「ビギニング」。『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』主題歌です。
大好きな井上大輔さんが作曲された一曲です。井上さんの曲を聴くと音楽に対する愛、才能、色々なものに対する情熱を感じて、ことばで説明できない涙がいつも流れちゃうんですよね。そんな井上さんの曲に富野(由悠季)監督のメッセージが乗って、とても壮大な楽曲に仕上がっています。
──言葉数が少ないなかに色々な想いが詰まっていますよね。
そうなんです。ぜんぶで70文字ちょっと。100文字ないのにこれだけ世界観を表現できるのは、もう究極ですよね。地球で生きている私たちに投げかけるような、訴えかけるような、包み込んでくれるような……。そんな曲です。
私、ブログや年賀状などでよく「健やかに」って言葉を使うんです。人々が健やかになれば、地球も健やかになると思っていて。この曲にも「健やかに」という言葉が使われていて、私が普段から言葉にしているテーマと通じていると感じました。そこにグッときながら、カバーしています。
──ゴスペルコーラスグループのVOJA(The Voices of Japan)が加わることで、より神々しさが増している気がしました。
VOJAさんとは第二弾でもコラボさせていただきました。細胞一つひとつから湧き出るような、魂の歌声に今回も震え上がりました。訥々と始まってサビで突然開けていくコントラストが素敵です。MVでのため息が出るほどの美しい映像と、VOJAさんの壮大なコーラスにゾクゾクきますよ! きっとガンダムソングを聴いたことがない人も、神々しさを体感できると思います。
──ボーナストラックとして、『機動戦士Ζガンダム』メドレー(Ζ・刻をこえて〜水の星へ愛をこめて)が収録されていますね。
『ガンダム』40周年を記念して行われたNHK「全ガンダム大投票」で360曲以上ある主題歌の中から、私のデビュー曲「水の星へ愛をこめて」が1位に選ばれたことから、このカバーシリーズが始まりました。
4歳の頃から歌手になりたくて、いろいろなオーディションを受けて落ちまくっていたとき、『機動戦士Ζガンダム』の後期主題歌オーディションに合格することができました。私に手を差し伸べてくれた、夢を叶えてくれた運命の作品です。そんな作品の楽曲を、前期OPを歌っていた鮎川麻弥さんとのメドレーという形で今回はお届けしています。
麻弥さんとは出会ってから30年以上が経ちました。いつまでも美しいお声の麻弥さんと一緒に音楽をやらせていただけるのは刺激になりますし、言葉にできない感慨深さもありました。私たちと熱いファンのみなさん、支えてくださっているすべてのスタッフのみなさんと様々なことを乗り越えてきた証しです。ガンダムカバーソング第一弾の一曲目が「水の星へ愛をこめて」で、第三弾の締めくくりも「水の星へ愛をこめて」。地球への愛を込めたカバーソングになりましたね。
──本アルバムリリース後、2022年5月3日にはコンサート“Starry People”が昭和女子大学 人見記念講堂で開催されます。
ガンダムソングカバーアルバムの集大成と言えるコンサートになる予定です。私のオリジナルソングも交えながら、宇宙色満載の一夜になると思います。
──いま、構想を練っている段階?
そうです。このコンサートならではの演出も予定しているので、この機会を逃したら、後悔させちゃう自信があります(笑)。
──今後はどのようにガンダム作品と関わっていきたいですか?
カバーアルバムで色々なアプローチをさせていただきました。そのなかで、『ガンダム』を知らなかった方、アニソンを聞いてこなかった方などと交流することもできました。これからも枠をあえて決めないで、いろいろな形でみなさんにガンダムソングをお届けできればと思っています。そのために、常にアップデートしたボーカリスト・森口博子であり続けたいですね。
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森口博子(もりぐちひろこ) 。6月13日生まれ。福岡県出身。TVアニメ『機動戦士Zガンダム』のOPテーマ「水の星へ愛をこめて」でデビュー。音楽活動と並行し、バラエティ・ドラマ・舞台・ラジオ・CMなど幅広く活躍する。2019年「機動戦士ガンダム40周年」のアニバーサリーイヤーに『GUNDAM SONG COVERS』を発売し、オリコンウィークリーチャート3位を獲得。同作で「日本レコード大賞」企画賞も受賞。翌2020年に続編「GUNDAM SONG COVERS 2」を発売。オリコン/Billboard JAPAN共に週間ランキング2位という前作を上回る実績を残し、シリーズ累計20万枚を超える大ヒットとなった
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○●『GUNDAM SONG COVERS 3』
初回限定盤(CD+Blu-ray)
価格:4,400円(税込)
通常盤(CD ONLY)
価格:3,300円(税込)
CD収録内容
01.翔べ!ガンダム (「機動戦士ガンダム」オープニングテーマ)
02.G の閃光 / with 押尾コータロー (「ガンダム G のレコンギスタ」エンディングテーマ)
03.BEYOND THE TIME 〜メビウスの宇宙を越えて〜 / with TM NETWORK (「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」主題歌)
04.いくつもの愛をかさねて / with SALT&SUGAR (「機動戦士V ガンダム」挿入歌)
05.砂の十字架 (「機動戦士ガンダム」主題歌)
06.STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜 / with オーイシマサヨシ (「機動戦士V ガンダム」オープニングテーマ)
07.RIVER / with 寺井尚子 (「機動戦士ガンダムSEED」エンディングテーマ)
08.Meteor (「機動戦士ガンダムSEED」挿入歌)
09.ターンA ターン / with 神永大輔 (和楽器バンド) (「∀ガンダム」オープニングテーマ)
10.ビギニング / with VOJA (「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」主題歌)
[BONUS TRACK]
「機動戦士Ζガンダム」メドレー (Ζ・刻をこえて〜水の星へ愛をこめて) / with 鮎川麻弥
Blu-ray収録内容
01.水の星へ愛をこめて / with 寺井尚子
02.フリージア / with 塩谷哲
03.一千万年銀河 / with 塩谷哲
04.君を見つめて -The time I'm seeing you- / with 本田雅人
05.翔べ!ガンダム
06.ビギニング / with VOJA