「舐めていました」は最高の褒め言葉 - 森口博子が語るガンダムソングカバーアルバム『COVERS 3』前編
●珠玉のガンダムソングをセレクト
アーティスト・森口博子が、ガンダムソングカバーアルバム『GUNDAM SONG COVERS 3』をリリース。第3弾にして最終章となる今回は、男性ボーカル曲だけをセレクトしている。TM NETWORK、オーイシマサヨシ、押尾コータローら豪華アーティストとコラボレーションした珠玉のカバーソングアルバムとなる。
今回は、『GUNDAM SONG COVERS 3』に収録される各楽曲の魅力について語ってもらった。また、「森口博子オフィシャルYou Tubeチャンネル」にて、本アルバムの全曲ダイジェスト動画が公開されている。ぜひ、動画を流しながら本インタビューを楽しんでほしい。
○●名盤、再び
──ガンダムソングカバーアルバム第3弾、リリースおめでとうございます!
ありがとうございます! 第一弾のカバーアルバムでは、オリコンウィークリー3位を獲得して「日本レコード大賞」企画賞を受賞、そして第二弾では、オリコンウィークリー・Billboard JAPANウィークリーランキング2位を獲得できました。『ガンダム』や森口博子の、長年のファンのみなさんはもちろん、これまで作品や、私に全く興味を持っていなかった沢山の方々までも手に取って下さり、感謝の気持ちでいっぱいです。
アニソンやバラエティーの私への偏見などを払拭でき、おかげさまで、3枚目もリリースすることができました。今回も企画会議の段階からアイデアがあふれ出てきて、歌う日が来楽しみで仕方ありませんでした。収録を終えた今は、名盤がまた誕生したと自負しております。
──今回は男性ボーカル曲だけをセレクト一枚となっています。コンセプトはどのように決まっていきましたか?
2枚目のカバーソングアルバムでは、私に歌って欲しいガンダム楽曲をSNSなどで募集したところ、10万票を超えるリクエストが届き、その上位10曲をカバーしています。それらがすべて女性ボーカル曲だったんですよ。だから今回は、男性ボーカル曲のなかで、みなさんにぜひ聴いて欲しい名曲たちをセレクトしました。300以上もあるガンダムソングはどれも珠玉のものばかりなので、選ぶのが大変でしたね。
──私もガンダムソングが好きでよく聞きますが、本当に名曲ばかりですよね。
そうなんですよ。ガンダムソングの歴史を振り返ってみると、谷村新司さんが作詞・作曲を担当されたやしきたかじんさんが歌っている楽曲や、小林亜星さんや石井竜也さんが制作を担当された曲、西城秀樹さんが歌っている曲もあるんです。それぞれの楽曲は心に沁みるものであったり、オシャレであったりと、ふだんはアニソンを聞かない方でも刺さるようなものばかり。この事実をみなさんにもお伝えしたいと思いながら、アルバム収録曲を選曲しました。豪華アーティストの方々とコラボさせていただき完成した楽曲たちは、音楽通の方々にもたまらない仕上がりになっていると思います。
○●初めて「ガンダム」と歌で口にした
──収録楽曲について、まずはアルバム一曲目の「翔べ!ガンダム」。ビッグバンドアレンジが個人的には最高に刺さりました。
うわー、ありがとうございます! このアレンジは、企画会議のとき私の頭の中で鳴っている音をスキャットでお伝えしたんです。スタッフの方々にから「すごくいいね」と言っていただけて。管楽器をたくさん入れて、ジャズアレンジのビッグバンドスタイルでやりたいとリクエストしたところ、満場一致でOKが出ました。
──原曲は『機動戦士ガンダム』のOPテーマ曲。シリーズはじまりの一曲です。
シンプルで勇ましい曲ですが、富野由悠季監督(井荻 麟名義)が書かれた歌詞には「恐怖」という言葉が出てきます。「正義のために」や戦うことへ前向きな言葉を並べないところに、私は善悪では語れない人間模様の深さが表れていると感じました。また、シリーズ最初のオープニングということもあって、分かりやすく「ガンダム」という作品名を連呼しているのも印象的です。これまで30曲以上のガンダムソングをこのカバーで歌ってきましたが、実は「ガンダム」という言葉を歌詞のなかで口にしたのが初めてだったんですよ。
──えぇ!
驚きますよね(笑)。自宅で練習しているとき、その事実に気が付いたんです。すべてはここから始まったんだって。改めてガンダムの歴史の始まりや、ガンダムの主題歌でデビューさせていただいたことに心が震えて、涙が出ました。
──本カバー曲のMUSIC VIDEOはYouTubeで配信されています。反響はいかがでしたか?
私、毎日SNSでエゴサしているのですが、「ガンダム知らない人にもオススメ」という感想や、「アレンジがいい意味で予想を裏切ってくれました」など、驚きと感動の声を多くの方が呟いてくださっているのを見つけたんです。なかには「森口博子を舐めていました」なんておっしゃる方も(笑)。でもその言葉って、私にとっては最高の褒め言葉なんです。
──褒め言葉。
音楽を聴く方のなかには、「アニソンだから」「バラエティの森口博子の歌だから」ということで、手に取るのを避ける方もいると思うんです。作品の内容を知らない方でも心に刺さる名曲ばかりなんですよ。それを伝えたいという想いが私の中にあります。そういう意味で「翔べ!ガンダム」のカバーは、先入観を取っ払って聴いていただける突破口になったんじゃないかな。トロンボーン奏者の西村健司さんにアレンジをお願いして完成した本曲は、コアな音楽好きの方にも興味を持ってもらえる一曲になったと自負しております。
●挑戦的なカバー曲が新たな世界へ誘う
○●「栄光の女神」は向こうから来ない
──続いて収録されているのが「Gの閃光」。この曲は富野監督から今の若い方々へのメッセージともとれる歌詞が胸を熱くさせてくれます。
「Gの閃光」は、富野監督によると「大人ではなく、14、15歳くらいの子供たちに向けて書いた」そうです。歌詞が本当にいいんですよね。個人的には"向こうから来ない 栄光の女神 引き寄せる 未来という閃光"という部分がとても刺さります。私はこれまでの仕事において、「こうなりたい」ではなく「こうなるんだ」「こうなっています」とイメージしてきたものが、すべて現実になってきたんです。
『ガンダム』の主題歌も、40代の頃に「またオファーが来る。私は歌うんだ」と勝手に決めていたら、実現しました。エジソンやニュートンといった偉人たちの共通点も「引き寄せの法則」なんですよね。何かを成したことがある人はみんなイメージを現実にしていく。私は「引き寄せる」ってそういうことだと思うんです。
──なるほど。
この歌詞の通り、「栄光の女神」って向こうから来ないんです。私自身、17歳でデビューできたものの、その後のアーティスト活動が順風満帆な訳ではありませんでした。リストラ宣告も受けましたし、地元の福岡に帰されそうになったことも。時には大人たちの都合に振り回されましたが、それでも「こんちくしょー」「私は歌うんだ」という精神で踏ん張って、夢を叶えることができました。
──夢を引き寄せたんですね。
原曲を歌われているハセガワダイスケさんは、歌手を目指していたものの、なかなか夢を掴めず、いつしか年齢的にも叶えるのは難しいだろうと思うようになったらしいんです。それでもあきらめず、『Gのレコンギスタ』の音楽を担当されている菅野祐悟さんに出会い、弟子入りして「Gの閃光」の仮歌を歌唱した。
そのときの魂のこもった歌が、富野監督らにも認められて、今に至るんです。彼自身が栄光を自ら引き寄せたんですよね。そういうメッセージのこもったこの曲は、元気も出ますが、感動して泣きそうになる曲でもあります。
──まさに、心が震える曲だと私も思います。
そこに来て、アレンジは押尾コータローさんのギター1本という潔さ。バンドスタイルでロックテイストで表現したら迫力ある楽曲だと思います。押尾さんのギター1本で何役もの表現がカッコイイんですよ!! キラキラでパーカッシブなあの熱いサウンドに、みなさん興奮すると思います!
──押尾さんとは第1弾、第2弾のカバーソングアルバムでもコラボされていましたね。
押尾さんとはシリーズでも、私の35周年記念コンサートなどでもご一緒させていただきました。ライブのときはアイコンタクトを互いに外さず、どや顔合戦(笑)。「私はこういく」「それなら僕はこう出ます」といったやり取りをすることで、相乗効果が生まれるんですよね。
今回、同時レコーディングすることは叶いませんでしたが、その場にいなくても押尾さんのアイコンタクトが私に届きました。コンサートでのどや顔合戦のエネルギーが持続していたんです。とても気持ちがいいレコーディングでしたね。
○●同じ曲をカバーして感じる確かな進化
──アルバムに収録される3曲目「BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜」では、原曲を歌唱しているTM NETWORKとコラボしています。
この曲は第1弾のときにもカバーさせていただいたのですが、男性ボーカル曲でセレクトする際にこの曲が入ってないのは寂しいという話になって。とはいえ一度カバーしている曲なので、どうすれば盛り上がるだろうと考えたとき、ご本人様方に参加していただいたらみなさんが喜んでくれるのでは? というアイデアが湧いたんです。
早速、TM NETWORKのメンバーである木根尚登さんに相談したところ、「てっちゃん(小室哲哉)とウツ(宇都宮隆)に聞いてみるよ!」と言ってくださいました。その後、すぐに「みんなOKだったよ」って返事をいただけたんです。感激しました。みなさんのご厚意で豪華コラボレーションが実現しました。
──本当に豪華ですよね!
ですよね! 小室さんがこのカバーのために新しいアレンジを考えてくださったんです。美しくて宇宙を感じる立体的なサウンドはまるで3D音楽のよう!! そこに宇都宮さん、木根さん、小室さんの重厚感のあるコーラスが加わったときは、感動して鳥肌が立ち、涙が出ました。この曲は特に、ガンダムソングカバーアルバムの確かな進化を感じましたね。
──続く「いくつもの愛をかさねて」では、佐藤竹善さんと塩谷哲さんによるユニット・SALT & SUGARとコラボされています。
このアルバムの中での、うっとりポイントです。ピアニストのSALTさんには第1弾・第2弾でもお世話になったのですが、神がかった同時レコーディングを経験しました。36年間の音楽人生で、あんなに透明感のある歌声を出せたのは初めて!
とにかくSALTさんの繊細なタッチから力強いタッチまでのダイナミクスがすごいんですよね。あのキラメキのある音が私は大好きです。名プレイヤーです。竹善さんには第2弾がリリースされたとき、ラジオで「森口博子ちゃんのボーカルがすごい。クラシック歌手がロックやヘビメタに挑戦したくらいの変化と成長を感じる。ガンダムソングも音楽的にとても丁寧に作られている。名盤誕生ですね」と褒めてくださって。それが嬉しかったので、今回は絶対にお声がけしようと決めていました。
──そういう経緯があったんですね。
はい。竹善さんはワンフレーズを歌っただけで人の心を鷲掴みにする歌唱力と心がトロけるあの歌声をお持ちで間違いありません! 私は人たらしヴォイスと呼んでいます(笑)。人たらしヴォイスの持ち主なんです。
おふたりと一緒に同時レコーディングでピアノ・ツインボーカルというスタイルでこの曲をお届けできて、感無量ですね。そういえば、今回のアルバム制作中も竹善さんが褒めてくださったんです。「ジャズやJ-POPの世界で生きている人たちとアニメの世界がいい融合を果たした。ひとつの音楽として成り立っているのがすごい。僕たちも知らない感動を体験できた。知らない世界に連れてきてくれてありがとう」って。
──聞いている方々だけでなく、コラボしているアーティストの方々にとっても新たな発見があったり、感動が生まれたりしているんですね。
そうなんです。やっぱり音楽っていいなぁと改めて感じました。
インタビュー後編へ続く。
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森口博子(もりぐちひろこ) 。6月13日生まれ。福岡県出身。TVアニメ『機動戦士Zガンダム』のOPテーマ「水の星へ愛をこめて」でデビュー。音楽活動と並行し、バラエティ・ドラマ・舞台・ラジオ・CMなど幅広く活躍する。2019年「機動戦士ガンダム40周年」のアニバーサリーイヤーに『GUNDAM SONG COVERS』を発売し、オリコンウィークリーチャート3位を獲得。同作で「日本レコード大賞」企画賞も受賞。翌2020年に続編「GUNDAM SONG COVERS 2」を発売。オリコン/Billboard JAPAN共に週間ランキング2位という前作を上回る実績を残し、シリーズ累計20万枚を超える大ヒットとなった
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○●『GUNDAM SONG COVERS 3』
初回限定盤(CD+Blu-ray)
価格:4,400円(税込)
通常盤(CD ONLY)
価格:3,300円(税込)
CD収録内容
01.翔べ!ガンダム (「機動戦士ガンダム」オープニングテーマ)
02.G の閃光 / with 押尾コータロー (「ガンダム G のレコンギスタ」エンディングテーマ)
03.BEYOND THE TIME 〜メビウスの宇宙を越えて〜 / with TM NETWORK (「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」主題歌)
04.いくつもの愛をかさねて / with SALT&SUGAR (「機動戦士V ガンダム」挿入歌)
05.砂の十字架 (「機動戦士ガンダム」主題歌)
06.STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜 / with オーイシマサヨシ (「機動戦士V ガンダム」オープニングテーマ)
07.RIVER / with 寺井尚子 (「機動戦士ガンダムSEED」エンディングテーマ)
08.Meteor (「機動戦士ガンダムSEED」挿入歌)
09.ターンA ターン / with 神永大輔 (和楽器バンド) (「∀ガンダム」オープニングテーマ)
10.ビギニング / with VOJA (「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」主題歌)
[BONUS TRACK]
「機動戦士Ζガンダム」メドレー (Ζ・刻をこえて〜水の星へ愛をこめて) / with 鮎川麻弥
Blu-ray収録内容
01.水の星へ愛をこめて / with 寺井尚子
02.フリージア / with 塩谷哲
03.一千万年銀河 / with 塩谷哲
04.君を見つめて -The time I'm seeing you- / with 本田雅人
05.翔べ!ガンダム
06.ビギニング / with VOJA
アーティスト・森口博子が、ガンダムソングカバーアルバム『GUNDAM SONG COVERS 3』をリリース。第3弾にして最終章となる今回は、男性ボーカル曲だけをセレクトしている。TM NETWORK、オーイシマサヨシ、押尾コータローら豪華アーティストとコラボレーションした珠玉のカバーソングアルバムとなる。
今回は、『GUNDAM SONG COVERS 3』に収録される各楽曲の魅力について語ってもらった。また、「森口博子オフィシャルYou Tubeチャンネル」にて、本アルバムの全曲ダイジェスト動画が公開されている。ぜひ、動画を流しながら本インタビューを楽しんでほしい。
──ガンダムソングカバーアルバム第3弾、リリースおめでとうございます!
ありがとうございます! 第一弾のカバーアルバムでは、オリコンウィークリー3位を獲得して「日本レコード大賞」企画賞を受賞、そして第二弾では、オリコンウィークリー・Billboard JAPANウィークリーランキング2位を獲得できました。『ガンダム』や森口博子の、長年のファンのみなさんはもちろん、これまで作品や、私に全く興味を持っていなかった沢山の方々までも手に取って下さり、感謝の気持ちでいっぱいです。
アニソンやバラエティーの私への偏見などを払拭でき、おかげさまで、3枚目もリリースすることができました。今回も企画会議の段階からアイデアがあふれ出てきて、歌う日が来楽しみで仕方ありませんでした。収録を終えた今は、名盤がまた誕生したと自負しております。
──今回は男性ボーカル曲だけをセレクト一枚となっています。コンセプトはどのように決まっていきましたか?
2枚目のカバーソングアルバムでは、私に歌って欲しいガンダム楽曲をSNSなどで募集したところ、10万票を超えるリクエストが届き、その上位10曲をカバーしています。それらがすべて女性ボーカル曲だったんですよ。だから今回は、男性ボーカル曲のなかで、みなさんにぜひ聴いて欲しい名曲たちをセレクトしました。300以上もあるガンダムソングはどれも珠玉のものばかりなので、選ぶのが大変でしたね。
──私もガンダムソングが好きでよく聞きますが、本当に名曲ばかりですよね。
そうなんですよ。ガンダムソングの歴史を振り返ってみると、谷村新司さんが作詞・作曲を担当されたやしきたかじんさんが歌っている楽曲や、小林亜星さんや石井竜也さんが制作を担当された曲、西城秀樹さんが歌っている曲もあるんです。それぞれの楽曲は心に沁みるものであったり、オシャレであったりと、ふだんはアニソンを聞かない方でも刺さるようなものばかり。この事実をみなさんにもお伝えしたいと思いながら、アルバム収録曲を選曲しました。豪華アーティストの方々とコラボさせていただき完成した楽曲たちは、音楽通の方々にもたまらない仕上がりになっていると思います。
○●初めて「ガンダム」と歌で口にした
──収録楽曲について、まずはアルバム一曲目の「翔べ!ガンダム」。ビッグバンドアレンジが個人的には最高に刺さりました。
うわー、ありがとうございます! このアレンジは、企画会議のとき私の頭の中で鳴っている音をスキャットでお伝えしたんです。スタッフの方々にから「すごくいいね」と言っていただけて。管楽器をたくさん入れて、ジャズアレンジのビッグバンドスタイルでやりたいとリクエストしたところ、満場一致でOKが出ました。
──原曲は『機動戦士ガンダム』のOPテーマ曲。シリーズはじまりの一曲です。
シンプルで勇ましい曲ですが、富野由悠季監督(井荻 麟名義)が書かれた歌詞には「恐怖」という言葉が出てきます。「正義のために」や戦うことへ前向きな言葉を並べないところに、私は善悪では語れない人間模様の深さが表れていると感じました。また、シリーズ最初のオープニングということもあって、分かりやすく「ガンダム」という作品名を連呼しているのも印象的です。これまで30曲以上のガンダムソングをこのカバーで歌ってきましたが、実は「ガンダム」という言葉を歌詞のなかで口にしたのが初めてだったんですよ。
──えぇ!
驚きますよね(笑)。自宅で練習しているとき、その事実に気が付いたんです。すべてはここから始まったんだって。改めてガンダムの歴史の始まりや、ガンダムの主題歌でデビューさせていただいたことに心が震えて、涙が出ました。
──本カバー曲のMUSIC VIDEOはYouTubeで配信されています。反響はいかがでしたか?
私、毎日SNSでエゴサしているのですが、「ガンダム知らない人にもオススメ」という感想や、「アレンジがいい意味で予想を裏切ってくれました」など、驚きと感動の声を多くの方が呟いてくださっているのを見つけたんです。なかには「森口博子を舐めていました」なんておっしゃる方も(笑)。でもその言葉って、私にとっては最高の褒め言葉なんです。
──褒め言葉。
音楽を聴く方のなかには、「アニソンだから」「バラエティの森口博子の歌だから」ということで、手に取るのを避ける方もいると思うんです。作品の内容を知らない方でも心に刺さる名曲ばかりなんですよ。それを伝えたいという想いが私の中にあります。そういう意味で「翔べ!ガンダム」のカバーは、先入観を取っ払って聴いていただける突破口になったんじゃないかな。トロンボーン奏者の西村健司さんにアレンジをお願いして完成した本曲は、コアな音楽好きの方にも興味を持ってもらえる一曲になったと自負しております。
●挑戦的なカバー曲が新たな世界へ誘う
○●「栄光の女神」は向こうから来ない
──続いて収録されているのが「Gの閃光」。この曲は富野監督から今の若い方々へのメッセージともとれる歌詞が胸を熱くさせてくれます。
「Gの閃光」は、富野監督によると「大人ではなく、14、15歳くらいの子供たちに向けて書いた」そうです。歌詞が本当にいいんですよね。個人的には"向こうから来ない 栄光の女神 引き寄せる 未来という閃光"という部分がとても刺さります。私はこれまでの仕事において、「こうなりたい」ではなく「こうなるんだ」「こうなっています」とイメージしてきたものが、すべて現実になってきたんです。
『ガンダム』の主題歌も、40代の頃に「またオファーが来る。私は歌うんだ」と勝手に決めていたら、実現しました。エジソンやニュートンといった偉人たちの共通点も「引き寄せの法則」なんですよね。何かを成したことがある人はみんなイメージを現実にしていく。私は「引き寄せる」ってそういうことだと思うんです。
──なるほど。
この歌詞の通り、「栄光の女神」って向こうから来ないんです。私自身、17歳でデビューできたものの、その後のアーティスト活動が順風満帆な訳ではありませんでした。リストラ宣告も受けましたし、地元の福岡に帰されそうになったことも。時には大人たちの都合に振り回されましたが、それでも「こんちくしょー」「私は歌うんだ」という精神で踏ん張って、夢を叶えることができました。
──夢を引き寄せたんですね。
原曲を歌われているハセガワダイスケさんは、歌手を目指していたものの、なかなか夢を掴めず、いつしか年齢的にも叶えるのは難しいだろうと思うようになったらしいんです。それでもあきらめず、『Gのレコンギスタ』の音楽を担当されている菅野祐悟さんに出会い、弟子入りして「Gの閃光」の仮歌を歌唱した。
そのときの魂のこもった歌が、富野監督らにも認められて、今に至るんです。彼自身が栄光を自ら引き寄せたんですよね。そういうメッセージのこもったこの曲は、元気も出ますが、感動して泣きそうになる曲でもあります。
──まさに、心が震える曲だと私も思います。
そこに来て、アレンジは押尾コータローさんのギター1本という潔さ。バンドスタイルでロックテイストで表現したら迫力ある楽曲だと思います。押尾さんのギター1本で何役もの表現がカッコイイんですよ!! キラキラでパーカッシブなあの熱いサウンドに、みなさん興奮すると思います!
──押尾さんとは第1弾、第2弾のカバーソングアルバムでもコラボされていましたね。
押尾さんとはシリーズでも、私の35周年記念コンサートなどでもご一緒させていただきました。ライブのときはアイコンタクトを互いに外さず、どや顔合戦(笑)。「私はこういく」「それなら僕はこう出ます」といったやり取りをすることで、相乗効果が生まれるんですよね。
今回、同時レコーディングすることは叶いませんでしたが、その場にいなくても押尾さんのアイコンタクトが私に届きました。コンサートでのどや顔合戦のエネルギーが持続していたんです。とても気持ちがいいレコーディングでしたね。
○●同じ曲をカバーして感じる確かな進化
──アルバムに収録される3曲目「BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜」では、原曲を歌唱しているTM NETWORKとコラボしています。
この曲は第1弾のときにもカバーさせていただいたのですが、男性ボーカル曲でセレクトする際にこの曲が入ってないのは寂しいという話になって。とはいえ一度カバーしている曲なので、どうすれば盛り上がるだろうと考えたとき、ご本人様方に参加していただいたらみなさんが喜んでくれるのでは? というアイデアが湧いたんです。
早速、TM NETWORKのメンバーである木根尚登さんに相談したところ、「てっちゃん(小室哲哉)とウツ(宇都宮隆)に聞いてみるよ!」と言ってくださいました。その後、すぐに「みんなOKだったよ」って返事をいただけたんです。感激しました。みなさんのご厚意で豪華コラボレーションが実現しました。
──本当に豪華ですよね!
ですよね! 小室さんがこのカバーのために新しいアレンジを考えてくださったんです。美しくて宇宙を感じる立体的なサウンドはまるで3D音楽のよう!! そこに宇都宮さん、木根さん、小室さんの重厚感のあるコーラスが加わったときは、感動して鳥肌が立ち、涙が出ました。この曲は特に、ガンダムソングカバーアルバムの確かな進化を感じましたね。
──続く「いくつもの愛をかさねて」では、佐藤竹善さんと塩谷哲さんによるユニット・SALT & SUGARとコラボされています。
このアルバムの中での、うっとりポイントです。ピアニストのSALTさんには第1弾・第2弾でもお世話になったのですが、神がかった同時レコーディングを経験しました。36年間の音楽人生で、あんなに透明感のある歌声を出せたのは初めて!
とにかくSALTさんの繊細なタッチから力強いタッチまでのダイナミクスがすごいんですよね。あのキラメキのある音が私は大好きです。名プレイヤーです。竹善さんには第2弾がリリースされたとき、ラジオで「森口博子ちゃんのボーカルがすごい。クラシック歌手がロックやヘビメタに挑戦したくらいの変化と成長を感じる。ガンダムソングも音楽的にとても丁寧に作られている。名盤誕生ですね」と褒めてくださって。それが嬉しかったので、今回は絶対にお声がけしようと決めていました。
──そういう経緯があったんですね。
はい。竹善さんはワンフレーズを歌っただけで人の心を鷲掴みにする歌唱力と心がトロけるあの歌声をお持ちで間違いありません! 私は人たらしヴォイスと呼んでいます(笑)。人たらしヴォイスの持ち主なんです。
おふたりと一緒に同時レコーディングでピアノ・ツインボーカルというスタイルでこの曲をお届けできて、感無量ですね。そういえば、今回のアルバム制作中も竹善さんが褒めてくださったんです。「ジャズやJ-POPの世界で生きている人たちとアニメの世界がいい融合を果たした。ひとつの音楽として成り立っているのがすごい。僕たちも知らない感動を体験できた。知らない世界に連れてきてくれてありがとう」って。
──聞いている方々だけでなく、コラボしているアーティストの方々にとっても新たな発見があったり、感動が生まれたりしているんですね。
そうなんです。やっぱり音楽っていいなぁと改めて感じました。
インタビュー後編へ続く。
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森口博子(もりぐちひろこ) 。6月13日生まれ。福岡県出身。TVアニメ『機動戦士Zガンダム』のOPテーマ「水の星へ愛をこめて」でデビュー。音楽活動と並行し、バラエティ・ドラマ・舞台・ラジオ・CMなど幅広く活躍する。2019年「機動戦士ガンダム40周年」のアニバーサリーイヤーに『GUNDAM SONG COVERS』を発売し、オリコンウィークリーチャート3位を獲得。同作で「日本レコード大賞」企画賞も受賞。翌2020年に続編「GUNDAM SONG COVERS 2」を発売。オリコン/Billboard JAPAN共に週間ランキング2位という前作を上回る実績を残し、シリーズ累計20万枚を超える大ヒットとなった
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○●『GUNDAM SONG COVERS 3』
初回限定盤(CD+Blu-ray)
価格:4,400円(税込)
通常盤(CD ONLY)
価格:3,300円(税込)
CD収録内容
01.翔べ!ガンダム (「機動戦士ガンダム」オープニングテーマ)
02.G の閃光 / with 押尾コータロー (「ガンダム G のレコンギスタ」エンディングテーマ)
03.BEYOND THE TIME 〜メビウスの宇宙を越えて〜 / with TM NETWORK (「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」主題歌)
04.いくつもの愛をかさねて / with SALT&SUGAR (「機動戦士V ガンダム」挿入歌)
05.砂の十字架 (「機動戦士ガンダム」主題歌)
06.STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜 / with オーイシマサヨシ (「機動戦士V ガンダム」オープニングテーマ)
07.RIVER / with 寺井尚子 (「機動戦士ガンダムSEED」エンディングテーマ)
08.Meteor (「機動戦士ガンダムSEED」挿入歌)
09.ターンA ターン / with 神永大輔 (和楽器バンド) (「∀ガンダム」オープニングテーマ)
10.ビギニング / with VOJA (「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」主題歌)
[BONUS TRACK]
「機動戦士Ζガンダム」メドレー (Ζ・刻をこえて〜水の星へ愛をこめて) / with 鮎川麻弥
Blu-ray収録内容
01.水の星へ愛をこめて / with 寺井尚子
02.フリージア / with 塩谷哲
03.一千万年銀河 / with 塩谷哲
04.君を見つめて -The time I'm seeing you- / with 本田雅人
05.翔べ!ガンダム
06.ビギニング / with VOJA