2005年から『ドラえもん』でスネ夫役を演じ、最近では『鬼滅の刃』の不死川実弥役や、『呪術廻戦』のパンダ役など、話題作にも多数出演している関智一さん。その魅力ある声で、さまざまな役を演じ分けて幅広い世代から支持を獲得しています。

人気声優・関智一さん。今を楽しみながら将来を見据える

今回は、声優としてはもちろんのこと、役者としても活躍する関さんにお話を伺いました。

●ストーリーの中にドラマを生んでくれる存在

現在公開中の『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021』は、タイトル通り「宇宙」が舞台。スネ夫の「人間らしさ」にスポットライトが当たる一幕もあり、関さんはいつもの映画以上にやりがいを感じたと語ります。

「スネ夫くんって、ほかの主要キャラクターと比べて、現実の僕らにより感覚が近いと思うんです。だれもがみんな“勇気”だけをもっているわけではないですし、彼が『危ないことはしたくないよ…』と、ひと言人間らしさを出してくれることで、1つドラマが生まれますよね。スネ夫くんがいることによって、ほかのキャラクターのカッコよさが際立つし、とってもいい、いぶし銀の役回りを担ったと思っています」

怖さを抱きながらも、冒険へと立ち上がるスネ夫の姿はとても印象的な場面のひとつ。関さんは、自身が怖がっていた「歯医者」に通ったことで、「実際に行動に出る」ということの大切を感じました。

「歯の治療がイヤでなんとなく行けていなかったのですが、昔の印象とは違って全然怖くないものになったんです。そこで、冒険っていうのは想像で怖くなるが、一歩踏み出したら意外とできた、平気だったってことは多々あって、想像の不安だけにとらわれすぎず、実際に行動することは近道でもあり、有効な手段なのかなって思いました」

●足したり引いたりして、組み立てていく作業が好き

ちょっとカッコつけたことを言っても、実際はすごく臆病だったり、腰が引けちゃったりする部分は、多くの人がもっている一面ではないでしょうか。関さんも昔からスネ夫というキャラクターにいちばん共感できるそう。

「僕は、漫画やオモチャ、ラジコン収集など、興味をもっているものも近いんです。ただ、それはもしかしたら彼から影響受けて似ていった部分もあるのかも。憧れとかも含めた共感もあるのかな。大人になって自由に使えるお金が増えてきたから、年々似てきたかなと思います(笑)あと、大人ぶってるのにいざとなるとやっぱりちょっと怖がったりって言うのが共感できますよね」

そんな多趣味の関さんですが、オフのときは造形(粘土や彫刻、絵画など)や料理を楽しんでいます。造形と料理に共通しているのは、「足したり引いたりして、組み立てていく」感覚だということ。

「粘土細工は辞めどきがないから、いつまででもいじってて、気づいたら深夜! みたいなことも。料理も好きで、カレーとかもスパイスからつくるのですが、熱中すると延々と鍋のそばから離れられません(笑)。彫刻や料理などは自分の好きにつくれて、仕事との“創作”とは少し違う部分があります。役者は演出の方の意図に沿ってつくっていくという部分がありますが、趣味の部分は自分好みに演出していくので、そこでオンオフのバランスを取っているのかもしれません」

●関さんが目指す「理想の生活」とは?

声優として第一線で活躍し続ける関さんですが、そのキャリアを振り返ったときに、ポイントとなったのは「スネ夫」役に抜擢されたことをあげます。

「もちろん、初めてデビューにつながったような大きい役をもらった瞬間というのもそうですが、『ドラえもん』に決まったのは一個大きい節目になりましたね。演じている役柄も、いわゆるアニメのかっこいいヒーローみたいなところから、ファミリー向けのお子さんたちにも楽しんでもらえるような作品に役柄もシフトしていくようなタイミングにあたっていたので、これから先の自分の声優としての立ち位置も考えさせられました」

自身の役の幅を広げたスネ夫も17年目に突入し、関さんも今年で50代になります。

「今までは仕事を中心に一生懸命やってきました。お芝居をすることは好きだから趣味の延長線上にありますが、そのほかにもいくつか自分の好きなものがあるので、興味が出てきたことも並行して楽しめる50代にしたいですね。人生をより豊かにして、お芝居にも生かせたらもっといいなって思ってます」

「ただ、将来的には田舎に引っ越して、仕事で東京に出てくるけど、そのほかは郊外で野菜育てる…みたいな、老後も考え始めましたね。お試しじゃないですけど、家でプランターを買ってとうもろこしを育てました。毎日手をかけて、育て方を勉強しながら、僕も一緒に育っていくみたいな。ものすごく愛着がわいて、実ったときはうれしくて…味もとてもおいしかったです。あれもこれもやってみたいなって思うようになって、そうやって変わっていく自分も楽しいなって感じました」

●ふとしたことがきっかけで考え始めた「終活」

今を楽しみながらも未来を考える関さんですが、趣味で集めている模型やフィギュアがたまっていったことがきっかけで、「終活」についても考え始めたのだとか。

「今までがむしゃらに価値のあるものを集めてきたけど、『これを人にどう受け継いだらいいんだろう。僕のコレクションのゴールってなんだろう。これからどうするんだろう』って、ふと我に返ったときに考え始めました。もし急に自分になにかあった場合、人に託すためにも、分かるようにしとかなきゃいけないとなって思ったんですよね」

「残りの人生を冷静に数字で見たら、今まで生きてきた年数より多分短いかな…ってなると、謙虚な気持ちでいたから、この年まで手をつけなかったことや挑戦をひるんでいた部分もあったけど、躊躇していたらすぐに年を取ってしまうと思うと、自信がなくても積極的に挑戦すべきだって思いましたね。田舎に住みたいっていうのも、やり残しがないようにするための終活の一個です」

今まで自分が得てきた知識などを頼りに、これをどこにあげてほしいとか、ノートに書くために気持ちをまとめている最中なんだそう。「とにかく分量が膨大なので、それの価値の順位とかもつけてますね」と自身の終活方法も教えてくれました。

「僕は、終活をしながらも長生きしたいですね。ただ年を取って先細りではなく、これからどんどん広がっていきたいと思っています!」

そう答える関さんの真摯な態度はとてもすてきで印象的でした。今を最大限楽しみながらも将来をしっかり見据える関さんの今後の活躍が益々楽しみです!