電子レンジでできる時短レシピを多く考案し、小さいお子さんがいらっしゃるお母さん、働く女性から大きな支持を受けている若菜まりえさん。twitterのフォロワーは54万人。多くの人に支持されるレシピは、簡単でおいしくできると評判。まりえさんの「バズる」レシピはどのようにして考えられているのか、「おいしい」のルーツについて聞いてみました。

料理家まりえさんが多くのフォロワーから支持される理由

ネットで簡単レシピを発信すれば多くのユーザーからのいいねやリツイートがつくなど瞬く間に拡散されます。今では54万人のtwitterフォロワーを抱えるまりえさん、そこまでの料理を出し続けられる、ルーツを教えてもらいました。

 

●多くの人から支持されるレシピのルーツ

――だれにでもおいしくつくれるレシピを考えるのは並大抵のことではないのではないでしょうか?

「おいしい」をさかのぼるとたどり着くのは、母の存在です。母は料理が得意で、ハレの日にはとびきりのごちそうを、ふだんの日は季節の食材を使った心のこもった料理をつくってくれました。そんな母は私が子どもの頃に長期入院することになったんです。わが家にかけつけてくれた伯母の料理はおいしかったのですが、「母の味とは違う!」と、さみしい気持ちがつのっていきました。

そんな中、料理をまったくしなかった父が、入院中の母から私と弟の大好物であるミートソーススパゲティのレシピを聞いて、つくってくれたんです。父がつくったミートソーススパゲティはみじん切りのタマネギは大きく、見た目は母の料理とは違いましたが、味は母の味そのもの。母の味を再現しようとがんばってくれた父の気持ちが、涙が出るほどうれしかったです。料理には人の心を動かす力があると感じました。

そして正しいつくり方がわかれば、だれにでもおいしい味は生み出せるのだと感じました。

 

●すべての経験が今に繋がる

――料理は昔からお好きだったのでしょうか? 現在に至るまでの経緯を教えてください。

私の料理好きを決定づけたのは23歳でのフランスでのインターンシップでした。滞在した一年間、フランス人家庭でホームステイをさせてもらったのですが、料理はほかの下宿人とホストファザーも含めた当番制でした。母の料理ノートを元に独学で学んできた料理をフランスの食材と調味料で独自にアレンジしてつくり、海外の方々に喜んでもらえたのは自分の中で大きな転機となりました。その経験を経て、帰国後の最初の就職先は食品原料メーカーにしました。

そして、食品原料メーカーで働いた経験は今、料理インフルエンサーとして活動する際に大変役に立っています。一般ユーザーとメーカー側の双方の視点から商品をとらえられるようになったからです。

 

●再現性の高いレシピにこだわります

――レシピを考える際に心がけていることはありますか?

私のレシピでは、食材には必ず「重さ」を表記しています。とくに個体差が大きい野菜では食材の微妙な重さのズレによって味にブレが出てくるため、使う量をはっきりグラムで書いています。皮つきのまま調理する野菜は「皮つきで○○g」、「皮むき後○○g」と明記することで、レシピを読んでつくってくださる際の再現度が上がります。

再現性が高いレシピを目指すうえで、炒め合わせる時間などにも必ず〇分と目安になる数字を入れています。色が変わったら、しんなりしてきたら、という表現はお料理が苦手な方には難しいと思うんです。でも数字は明確な指標になりますので、見た目で状態を確認しつつ、数字も参考にしてもらえたら料理のハードルは下がりますよね。

SNSでレシピを発信しているなかで、「体がつらいときでも簡単なレンジレシピだからつくることができてうれしかった」といったお言葉をいただくことがあります。涙が出るほどうれしく思うと同時に、「つらいときはがんばらなくてもいいんですよ」とお伝えしたい気持ちにもなります。私も外食やお惣菜に頼るときがあります。つらくても食事を用意しなくてはいけない状況はありますよね。だからこそ、レシピはなるべく家にある調味料と食材で、手軽につくれるものを考えて発信しています。買い物に行くのが大変な方、食材をそろえるのが難しい方、レトルトや冷凍食品を切らしてしまった方々のお役に立てたらうれしいので。

●反響が大きくなっても、エゴサーチはあえてしません

――フォロワーさんも増え、さまざまなご意見等多いかと思います。SNSとはどのように向き合っていますか?

「絶対に本を出したい!」という思いから始めたSNSですが、今はユーザーさんとの交流がなによりの心の支えになっています。「おいしかった!」のご報告は心からうれしいですし、ご質問や厳しいご意見もレシピ開発の際の重要な参考になります。料理についてはどんなフィードバックもありがたいので、精いっぱいお答えするようにしています。

SNSで名前を出して活動をしていますが、エゴサーチはしていないんです。Twitterで届く通知も日々かなりの数になるので、それを追うので精いっぱいです。また、自分よりもあとから活動をし始めて大きくフォロワー数を伸ばす人には必ずストロングポイントがあるので、そこに着目するようにしています。見つけても、なにもできないことのほうが多いんですけどね(笑)。

大人も子ども満足なボリューム冷凍つくりおきレシピ

まりえさんに「あとでラクさを実感できる!」というとくにおすすめのレシピを教えていただきました。

今回おすすめしてもらった「生から冷凍ハンバーグでつくるロコモコ丼」は、ひき肉を生のままポリ袋に入れて成形、タレごと冷凍。解凍と同時にレンジ調理ができる料理です。これは下ごしらえも調理もダブルにラクで、食べたいときにチンするだけでOKなのがうれしいです。

「忙しいときでもアツアツできたてのものを出せるので、この『まるごと冷凍チンするだけ』シリーズは夫にも大好評です。夫の帰宅が深夜になるときも、事前に伝えておけば、帰宅後の夫にレンジで加熱してもらって食べてもらうこともできますよ」

●生から冷凍ハンバーグ

材料(2人分)

豚ひき肉 300g
タマネギ 中1/4個(50g)
A[パン粉大さじ3 塩小さじ1/3]
B[中濃ソース、トマトケチャップ大さじ4 焼肉のタレ大さじ2]

【つくり方】

(1) タマネギはみじん切りにする。ポリ袋に入れて、ひき肉、Aを加えてもみ、袋の中で2等分して平丸方に整える。

 

(2) Bを混ぜ合わせ、(1)に入れる。袋の空気を抜いて口を結び、冷凍庫に入れる。

 

●ロコモコ丼

材料(2人分)

生から冷凍ハンバーグ 全量
温かいご飯 適量
卵 2個
塩 少々
アボカド、ミニトマト(各好みで)各適量

【つくり方】

(1) 耐熱ガラスボウルに袋から出した生から冷凍ハンバーグを重ならないように入れ、ふんわりラップをかけて電子レンジ(600w)で8分ほど加熱する。

 

(2) 取り出して肉を裏返し、再度ふんわりラップをかけて8分ほど加熱し、中まで火を通す。中が赤っぽい場合は追加で2分ほど加熱する。

 

(3) フライパンを中火で熱してサラダ油を入れ、卵を割り入れて塩をふる。弱火にしてフタをせずに3〜5分、黄身が好みの固さになるまで焼く。

 

(4) 器にご飯を盛り、(2)、(3)を1つずつのせ、好みでアボカド、ミニトマトを添える。

 

簡単で、すぐにできて、おいしい。そんな料理があるはずはない、と思ってしまいがちですが、まりえさんのレシピはそれを実現してくれます。忙しい日も、少しゆっくりしたい日も味方になってくれるレシピなのかもしれません。