ワークスペースやスタディコーナーのある家。プランの仕方と事例を紹介
リモートワークやステイホームが一般化。LDKなどの一角に、デスクをつくりつけたワークスペースやスタディコーナーがあれば、仕事や勉強にとても便利です。では、新居に設けるとしたら、「どこに」「どのように」つくればよいのでしょうか。一級建築士の新井崇文さんが解説。自身の設計した事例を交えて考え方を紹介します。
自宅のどこで仕事や勉強をする?
そもそも自宅のどこで仕事や勉強をするか。とくに家族で暮らしている方にとっては、興味深いテーマではないでしょうか。
ここでは筆者なりの切り口で「書斎・個室などの区切られたスペース」と「LDKなどのオープンスペース」の2タイプに分けて、それぞれの特徴を説明していきます。
1.書斎・個室などの区切られたスペース
【メリット】
・扉を閉めれば音や視線が区切れる
・雑音のない静かな場所になるので、仕事や勉強に集中しやすい
・リモート会議やリモート授業に参加する環境として好ましい
【デメリット】
ひとりきりの空間でリラックスできる反面、緊張感に欠け、だらけてしまう場合も
専用のスペースを必要とするので、間取りに組み込みにくい
2.LDKなどのオープンスペース
【メリット】
・広がりのある開放的な空間で、仕事や勉強に取り組める
・家族の気配や会話など、適度な雑音があったほうが仕事や勉強に集中できる人に向いている
・「家事をしながら仕事する」「子どもの様子(遊び・勉強など)を見ながら仕事する」といった場合にも適している
・あるスペースの一部を利用するので、間取り的に組み込みやすい
【デメリット】
・LDKなどの生活スペースが雑然としてしまわないよう、書類・文具などをこまめに片づける配慮が必要
上記のふたつのタイプには、それぞれ特徴があります。自分に合ったタイプを選ぶのもよし、あるいは状況により双方を使い分けるのもよいでしょう。
筆者が手がける新築や改修の設計では、スペースの一角にデスクをつくりつけた「ワークスペース・スタディコーナー」を提案することが多々あります。これは、多くの住まい手(筆者のクライアント)が「LDKなどのオープンスペース」で仕事や勉強するのを好むためです。
また、つくりつけのデスクなら、コンパクトなスペースにもピッタリ納めることができます。デスクの周りに収納も確保すれば、LDKなどの生活スペースが雑然としてしまうことも防げます。
ここからはワークスペース・スタディコーナーについて、筆者が設計した事例を交えて紹介していきます。
ダイニングの一部に設けるワークスペース・スタディコーナー
まずはダイニングの一部にワークスペース・スタディコーナーを設けたお宅の事例です。手前にリビング、右奥にキッチン、左奥にダイニングが配されています。
ダイニングの壁側に幅220cm、奥行き60cmのデスクをつくりつけ、ワークスペース・スタディコーナーとしています。
ダイニングの一部にワークスペース・スタディコーナーを設けるメリットは、ダイニングテーブルも含めて、作業スペースとして活用できる点でしょう。そうした点から、ワークスペース・スタディコーナーを設けるなら、リビングよりはダイニングのほうが相性がよいと筆者は考えています。
その代わり、食事の際にはきれいに片づけてダイニングの雰囲気が雑然としないよう配慮する必要があります。このお宅では、上部にはつり戸棚、デスク下には引き出し家具を設置。書類や文具を収納できるようにしています。
キッチンに隣接したワークスペース・スタディコーナー
次はキッチンに隣接してワークスペース・スタディコーナーを設けたお宅の事例です。手前にダイニング、右奥にキッチン、左奥にワークスペース・スタディコーナーが配されています。
キッチンの背面カウンターとつながる形で、幅180×奥行60cmのデスクがつくりつけられています。キッチンに隣接してワークスペース・スタディコーナーを設けるメリットは、調理作業と並行して仕事を進めやすい点。「鍋の火加減をチラチラと横目でみながら仕事も進める」といった具合です。
ワークスペース・スタディコーナーには、パントリー収納(写真奥・左手)も併設。スペースを効率よく利用しています。
キッチンとリビングに隣接したワークスペース・スタディコーナー
次の事例は、キッチンとリビングに隣接してワークスペース・スタディコーナーを設けたお宅。リフォームによって実現したプランです。手前にリビング・ダイニング、左奥にキッチン、右奥にワークスペース・スタディコーナーが配されています。
ワークスペース・スタディコーナーとリビングは、棚を隔ててほどよく「見える・見られる」関係となっています。
既存の外壁の形状を生かし、ワークスペース(左)とスタディコーナー(右)を分けて設けました。キッチンに隣接したスタディコーナーであれば調理・片づけの合間に子どもの勉強を見るのにも便利です。
リビングの吹き抜け上部に設けるワークスペース・スタディコーナー
最後は、リビングの吹き抜け上部にワークスペース・スタディコーナーを設けたお宅の事例です。左手から階段を上がっていき、吹き抜けの右手上部にワークスペース・スタディコーナーがあります。
階段上部、2階の動線空間。右側が子ども室、正面が階段下り口、左側が吹き抜けを望むワークスペース・スタディコーナーです。
デスク前方に腰壁があるため、吹き抜け下部のリビングから丸見えにならず、落ち着いた空間に。でもほどよく家族の気配が感じられ、立ち上がれば、吹抜下部のリビングを見下ろすこともできます。
このようにリビングの吹抜上部にワークスペース・スタディコーナーを設けた場合、オープンスペースでありながらも、家族とちょうどよい距離感をもたせることができます。
家族のライフスタイルを設計士に伝えて、最適なプランを
ワークスペース・スタディコーナーのバリエーションを4つの事例で見ていただきました。これらは比較的コンパクトな家でも実現しやすいプランかと思います。
日常生活と「仕事・勉強」を、家の中でどう両立させるか。その手法として、LDKなどのオープンスペースにワークスペース・スタディコーナーを設けるのは、ひとつの有効な方法かと思います。家族の暮らしのシーンを一緒に考えてくれる設計士に相談しながら、自分たち家族にピッタリのワークスペース・スタディコーナーを考えてみてはいかがでしょうか。