by Falklands Maritime Heritage Trust

100年以上前に南極海の氷に閉じ込められて難破した伝説の木造船「エンデュアランス号」が、水深約3000mの海底から当時の原形をとどめた状態で発見されました。調査隊の責任者を務めたメンスン・バウンド氏は、「これは私が見た中で最もよい状態の木造難破船です」と述べています。

Endurance is Found - Endurance22

https://endurance22.org/endurance-is-found



Shackleton's ship "Endurance" found beneath Antarctic ice, 100 years on | ロイター

https://jp.reuters.com/article/us-antarctica-shipwreck/shackletons-ship-endurance-found-beneath-antarctic-ice-100-years-on-idUSKBN2L60TG

Endurance: Explorer Shackleton's ship found after a century | AP News

https://apnews.com/article/ernest-shackleton-endurance-ship-found-antarctic-4906562ce1c9d27ec472f628709073a8

Shackleton's Famous Antarctic Shipwreck Finally Discovered in The World's 'Worst Sea'

https://www.sciencealert.com/shackleton-s-famous-ship-has-been-on-the-antarctic-floor-a-century-after-sinking

エンデュアランス号はイギリスが1914年に派遣した帝国南極横断探検隊の船です。イギリス人探検家のアーネスト・シャクルトンが率いるこの探検隊は、南極大陸の大西洋側にあるウェッデル海から太平洋側のロス海へと、史上初となる南極大陸の横断を目指すものでした。

ところが南極上陸前の1915年1月、ウェッデル海でエンデュアランス号の航路が氷に阻まれてしまい、探検隊は数カ月にわたり船に閉じ込められてしまいました。その後、氷の圧力によって船体が損傷を受けたため、シャクルトンは10月に船を放棄することを決定し、11月21日には完全に船が氷の下に沈んだと伝えられています。

船を失った探検隊はアザラシやペンギンを食料として生き延び、氷上でのキャンプや救命艇での移動を続けて南極海のエレファント島へ上陸しました。当初の航路から離れていることや付近に他の船が通る航路がなかったことから、シャクルトンは1500km離れたサウスジョージア島まで航海し、捕鯨基地に助けを求めることを決断。6人の選抜隊で小さなボートにすぎないジェイムズ・ケアード号に乗り込み、荒れ狂う海を渡ってサウスジョージア島にたどりついて救助を求めました。エレファント島に残った22人も過酷な状況で4カ月も生き延び、チリ海軍から借りた船で救助に来たシャクルトンらによって、1916年8月に無事すべての乗組員が助け出されました。

シャクルトンたちの過酷な漂流や奇跡のような生還劇は数々の書籍や映像作品の題材となっており、難破したエンデュアランス号もその名が広く知られています。

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そんなエンデュアランス号を発見しようとする試みは以前にもあったものの、これまでは失敗に終わっていました。そこで、Falklands Maritime Heritage Trust(フォークランド海洋遺産財団)は「Endurance22」という調査隊を組織し、シャクルトンの死からちょうど100年目となる2022年に調査を実施。南アフリカ環境局が所有する砕氷船のS. A. Agulhas IIから水中ドローンを送り込み、気候変動や気象パターン、氷の移動を考慮した上で推測した領域を捜索したところ、探検隊が記録した難破地点から約6km離れた場所の海底3008mで、沈没したエンデュアランス号を発見したと報告しています。

実際に撮影されたエンデュアランス号の写真がこれ。デッキの構造や舵輪(かじ)がそのまま残っているほか……



by Falklands Maritime Heritage Trust

船尾には金色の「ENDURANCE」という文字が確認できるなど、全体がかなり良好な保存状態であることがわかります。



by Falklands Maritime Heritage Trust

沈没から1世紀以上も経過した木造船がこれほど良好な状態で保存されているのは、南極の海水温が非常に低く日光もほとんど届かない海底に沈んだため、木造船を腐らせるバクテリアや小動物が繁殖しにくい環境であることが原因と考えられています。調査隊の責任者であるバウンド氏は、「私たちはエンデュアランス号を発見し、写真を撮影するという幸運に圧倒されています。これは私たちが見た中でも最高の木造難破船です。エンデュアランス号は直立し、海底を誇りに思っているかのようで、無傷で、そして素晴らしい保存状態です」と述べました。



by Falklands Maritime Heritage Trust

エンデュアランス号は南極条約の下で歴史的建造物として保護されており、船の撮影やスキャンは許可されているものの、船体に触れたり実物のサンプルを持ち出したりすることは禁じられているとのことです。