食材の宝庫・北海道。おいしいものを食べに、一度は訪れてみたい地ですよね。今回は演劇ユニット・TEAM NACSのリーダーであり、ホクレンアンバサダーとして北海道農業の魅力を発信し続ける森崎博之さんにお話を伺いました。

教えて森崎博之さん!北海道の食材はなぜおいしいの?

森崎さんは、ごはんソムリエを取得し、食育の大切さや北海道農業の素晴らしさなどを発信しています。北海道は「おいしいものがいっぱい」といいイメージがありますが、その理由や裏側についてはじつは知らないことばかり。

●北海道の四季がおいしい野菜を育てる

とにかく冬は寒い北海道。雪が降る日も当然多く、積もると野菜が育たないのでは…? と思ってしまいますよね。しかし、森崎さんに伺うと、それは「冬を越す」ということに秘密があるといいます。

というのも、野菜や果物などの甘味は昼夜の寒暖差で生まれるため、昼夜の気温差が激しい北海道ではおいしい野菜が育つというわけです。とくに冬は、大雪の影響で日常生活で困ることも多数。その過酷な条件が北海道を肥沃(ひよく)な大地にしてくれているのだと教えてくれました。

「一切暖房を入れていない『無加温ハウス』では、昼間は太陽光でビニールハウス内は20℃以上ですが、夜になると0〜5℃に下がります。毎日20度近い気温差を野菜に与えることで、ぐんぐん甘みが育つんですね。

野菜は本来、光を浴びるとエネルギーを吸収するのですが、暗くなると呼吸するためにエネルギーを消費します。そこで温度がぐんと下がると、野菜は息苦しさを覚えて少し冬眠状態に。その冬眠状態のときに、野菜のもつでんぷんが糖に変わり、タンパク質がアミノ酸に変わるので、糖が強くうま味が多い、甘くておいしい野菜になります」

これが北海道野菜のメカニズム。ちなみに暖房を入れたビニールハウスだと、温度がそこまで下がらないので、トマトやイチゴなどに加え、南国の果物のイメージがあるマンゴーもじつは栽培しています。

北海道の冬は害虫も少ないので、防除や農薬などを使用することもなくマンゴーを出荷できます。しかし、施設にお金がかかるのでお値段は高級なのだとか…!

●みんなでコロナに打ち勝っていくために

そんな北海道の農業・酪農も、コロナの影響を大きく受けました。なかでも、意外と知られていないのが、「農家・酪農家」さんへの影響です。

「食品業界というくくりでは飲食店さんには手が差し伸べられていたりしますが、食事のスタートでもある農家さんや酪農家さんにはじつはそこまで支援がされていません。コロナ禍で給食の供給停止や外食自粛によって、元々そこに食材を卸す予定だったものがすべてストップ。『消費は落ち込んでいるから、供給を止める』というのは命ある農作物において、大変難しいことなんです」

だから、行き場のなくなった食材が余ってしまうという事態に…。年末年始に懸念されていた生乳の廃棄問題もその一つ。森崎さんは、昨年12月に各企業と「#ミルクに恩返し」というプロジェクトを立ち上げ、SNSで発信しました。

「レシピなどを発信し、たくさんの方のご尽力のおかげで廃棄は免れました。私たちは、コロナが落としていったものに対して1個ずつ打ち勝っていくしかない。だから、こういう風にニュースを苦しいものだけではなく、明るくお祭り化し多くの人を巻き込めば、いろんなものに勝てる気がしました。今回はミルクだったけど、それはほかの食べ物でも同じ。私たちは取り戻していくことができるんです!」

この日、「北海道地チーズ博 2022」のイベントに登壇した森崎さんは熱くその想いを私たちに伝えてくれ、その姿はとても印象的でした。

●「#ミルクに恩返し」の次は「お米に恩返し」

そんな森崎さんが次に考えている支援企画が「お米」。意外かもしれませんが、じつは今お米離れが進んでいる影響で、お米が余っているそう。私たち日本人が昔から食べているお米にそんなことが起きていたとは驚きですよね。

「お米は消化にもよくて、おいしい。その米を私たちは裏切るわけにはいかないんです。とくに一昨年採れた、『古米』が余っていて、新米ももちろんおいしいのですが、古米には古米のよさがあります! だから、今回は私がおいしい古米の使い方についてお伝えしますね」

「新米は、水分をたくさん含んでいるのでそのまま炊くだけでもおいしいんです。一方古米は、乾燥して水分が飛んでいるため、雑炊やリゾットなどの外から味を染み込ませていきたいものにぴったり。だから、おうちの手巻きずしのシャリは古米にお任せを! 乾燥した古米に、すし酢、塩、砂糖を調合したものをいれると、おいしく仕上がります」

森崎さんによると、リゾットの本場・イタリアでは、5年・10年古米の価格にプレミアがついているそうです。それはイタリア人が古米の価値を知っているからこそ。古くなったからと言って、それらすべての価値がなくなってしまうわけではありませんよね。

「使う用途を知ることで、もったいないがなくなる。だから僕はその使い方の発信をしていきたい! じつは土地の生乳を使用した“地チーズ”にも同じことが言えるんです。ついつい使い切らなければ…! とプレッシャーがあるかもしれませんが、1日目はそのままお酒などのあてに食べていただいて、余ったものは料理などで使えばチーズを多方面から楽しめます。地チーズは時間をおくことによって、そのつくり手である工房さんの個性が出てくるんですよ。ぜひ北海道の地チーズも楽しんでほしいです」

北海道農業の魅力を発信し続ける森崎さんは、食品ロス問題にも真摯に取り組んでいます。私たちも、まずは「興味をもつ」というところから向き合っていきたいですね。

なまら…北海道の方言で、非常に、とても