「俺たちは同じことやっているのに誰も取り上げてくれない」ヤクルト版「地獄の伊東キャンプ」を振り返る 橋上秀樹氏×荒木大輔氏対談

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 プロ野球界の一流指導者たちが出演し、野球ファンの間で話題になっている、プロ野球東京ヤクルトスワローズなどで活躍し、引退後は楽天、巨人などでコーチを務めた現・新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ監督の橋上秀樹氏のYouTubeチャンネル「橋上秀樹アナライズTV」。

チャンネル4人目のゲストとして、現役時代ヤクルトで活躍し、引退後は西武、ヤクルト、日本ハムでコーチを務めた荒木大輔氏が登場。

今回は自身の高校生時代を振り返り、高校生の指導はどうするべきかについて、また2人がヤクルト時代に味わった伊東キャンプについてなどトークが繰り広げられた。

【動画】橋上秀樹氏と荒木大輔氏が90年代のヤクルトの強さの秘密を語る!
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高校生は「厳しく叩き込むべき」か、「ある程度楽しく自由にすべき」か


早稲田実業学校に通ってた荒木氏。当時の野球部は「楽しく野球をやる。あんまり練習しすぎちゃだめ」という方針だったという。

荒木氏によると、現在の早稲田実業学校野球部の監督、和泉実氏は「高校生は教えすぎたら教えたことしかできない。何かやらかしてくれるような感じに持っていってあげる。そうすると大きな大会で今までに見たことの無いようなプレーをしてくれることが多い」と話したという。

甲子園常連校の監督数人に話を聞いたことがある橋上氏。「厳しく管理して叩き込む」という人と「ある程度楽しく自由に」という人と両極端だったという。

それに対し、荒木氏は「でも本当に優勝するんだったらある程度のメンバーを揃えて叩き込まないとダメ。俺たちがやっていたように楽しくみんなで考えながらやっていると僕らもそうだったけどやっぱりある程度のところで勝てないし。楽しんでやってたから変なプレッシャーがないわけ、ピンチになっても」と話す。

両者とも強くしたいのであれば少し自由に楽にやらせる、さらに上を目指すならやっぱり厳しくと語った。

ヤクルト版「地獄の伊東キャンプ」


「地獄の伊東キャンプ」といえば、野球ファンの間ではジャイアンツが1979年に敢行した、長嶋監督による秋季キャンプが広く知られている。成績が低迷したことで若手に対して猛練習を課し、その時に参加した江川、西本、篠塚、中畑といった当時の若手選手が後の黄金時代を築いた。そして、実はヤクルトでも「地獄の伊東キャンプ」が行われていた。87、88年に同地で行われたもので当時の関根監督の肝入りによるものだった。このキャンプに橋上氏、荒木氏も参加した。

 その内容に関して「ひどい練習、地獄だった」と話す橋上氏。

内野1面にネットが低く張られ、長い間、中腰状態を強いられるなど、守備練習含め走り込みなど、徹底的に鍛えられたという。

そんな厳しい練習の中、癒しとなったのがお風呂だった。

「五右衛門風呂みたいな風呂が伊東にあって、刑務所じゃないですけど毎日朝起きると入れられて。体もものすごく張ってるのに熱湯みたいな風呂で。3分くらい入っていると体がホカホカになって張り感がちょっと取れるんですよね」と話す橋上氏。

一方で荒木氏はこんな不満もあるという。

「ジャイアンツの人は『地獄の伊東キャンプ』で、江川さんだ、西本さんだと色々取り上げてくれるじゃない?我々は同じことやっているのに何もない」

と巨人同様にハードトレーニングを行ったことがまるで知られていないことに悔しさを覚えると率直な感想を漏らす場面もあった。

またオフシーズンで休む当時の選手とオフシーズンでも練習している今の選手を比べ、橋上氏はこう話す。

「当時の選手はやっぱり秋の練習、キャンプであまりにも理不尽な練習を課せられすぎて。終わった瞬間に休めるという解放感が非常にあって。それがあったのが逆効果だったかなって」

さらに橋上氏は安定してパフォーマンスを発揮するためには完全にオフにせずにある程度維持したまま1年間トレーニングを続けた方がケガのリスクも減ると話した。

動画内ではほかに90年代のヤクルトの強さの秘密についても触れている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]