Anonymouzが2022年1月28日(金)、東京・日本橋三井ホールにてワンマンライブ『Anonymouz Live 2022 〜Forward〜』を開催した。

J-POPの英語カバー動画などのYouTube総再生回数が1500万回を突破している20歳の女性アーティスト、Anonymouz。「名前のない女の子」というアーティスト名を名づけた彼女は、「ビジュアルにとらわれずに純粋に歌声を聞いてほしい」という思いから顔を出さず活動を続けている。昨年2021年5月21日に恵比寿LIQUID ROOMで初のワンマンライブを開催し、今回が自身二度目のワンマンにして初のホールライブとなる。バンドメンバーに、クレハリュウイチ(Key.)、伊藤ハルトシ(Gt. Vc.)、松本拓郎(Ba.)、MITSU(Dr.)の4人を迎えて奏でたワンマンライブをレポートする。

関連記事:Anonymouzが告白「孤独に刺さる歌を」

19時7分、暗転し、ピアノ音のSEが流れるとバンドメンバー4人が登場。少し遅れて白い衣装に身を包み、目元を花冠の衣装で覆ったAnonymouzが登場、お辞儀をすると拍手が起こった。ピアノの弾き語りで「Winds of Time」を歌い出すと、バイオリンとピアノの音色から日本語詞の「足りないよ」へ。ドラムとベースが入りアンサンブルの中で歌唱し、躍動感とドラマティックさで違った表情を見せた。「今日は最後まで楽しんでいきましょう」とバンドサウンドの上で挨拶をすると、壮大なサウンドスケープで展開する「In Our Hearts」へ。それまでより高いキーでバンドのアンサンブルを一層高みへ引き上げるようなエネルギッシュな歌い方で観客を魅了していく。スキャットとダンサブルなリズムの「Snake Love」ではステージ前方に迫り出した舞台まで歩み出して客席に向けて言葉を噛み締めて歌った。

「改めまして、今日は本当に大変な中、寒い中、来てくださってありがとうございます。最後まで楽しんでいってください」と挨拶をし、「Wonders of Art」へ。ピンクの照明の中で重心の低いモダンでネオソウル調の楽曲を大人っぽく歌い、デジタルなトラックとそれを切り裂くような凛としたヴォーカルが美しい「Homesick」を続けて歌っていく。それぞれの楽曲に寄り添うような歌声が時間を水のように淀みなく流していった。

「今回みなさんに聞きたいことがあって。ところどころタメ口でしゃべってもいいですか?」と問いかけると大きな拍手がわき起こった。「普段顔を隠しているから、もっともっとみなさんと近づきたいと思っていたのでタメ口もいいかなと思って聞かせてもらいました」と語ると、「ファンの名前を決めたいです」と3つの案を自ら提案。「ムーザー」、「az」、「ネーマー」の中から観客たちの拍手によって、「AからZから始まる世界中の皆さんが虜になる」という意味の「az」に決定した。そして「azのみなさんいつも本当にありがとう。カバーで知ってくれた人が多いと思うので、聞きたいと思うカバーをメドレーにしてきました」とイングリッシュメドレーへ。

ピアノの上でback numberの「水平線」、azたちの拍手とアコギとピアノの伴奏とともにAimerの「カタオモイ」、ピアノとチェロの響きの中で優里の「ドライフラワー」、異国情緒あふれるジャジーなアレンジの中で藤井風の「もうええわ」、モダンなジャズ調のYOASOBI「夜に駆ける」と、彼女を世の中に知らしめたルーツのひとつでもあるカバーをじっくりと聴かせた。



そこから一転、ダークな雰囲気とトラックから始まる「Your Plan」へ。サビでのバンドのアンサンブルがハードで静と動を表したかのように響く。そして「1 MINITUE ORIGINAL」としてYouTubeチャンネルで1分間のオリジナルを公開していた動画から明るく弾けたR&Bの新曲「Hide & Seek」をフルバージョンで初披露。「リハーサルをやっていても盛り上がっていて、すごい楽しい曲なので手拍子をして聞いてください」という言葉通りazは体を揺らして楽しんだ。ヘビーなドラムと怪しげなシンセとギターカッティングとともに赤い照明の中で「Lips」を歌い、ヴォーカルが楽曲を引っ張っていくように歌い上げる「Thrill」へ。後半の伴奏でバンド紹介をし、ライヴでの一体感がより一層生まれていった。

「小さい頃からの夢が、ずっとずっと歌が好きだったので、この活動を通してどんどん叶っていっています。本当にみなさんの応援が届いて、刺さって、本当に何度も何度も救われてきました。本当にありがとう。みなさんにもらう以上の力を歌と音楽を通してどんどん届けていきたいなと思っています」と語り、「この曲を書く過程でもまだ整理のつかない気持ちをたくさん並べて、ヒントを得て、そこから少しづづ理想に近けるように書いていきました。それって少し絵と似ているなと思って。生きていたら誰でも苦しいこともいっぱいあると思うんですけど、その苦しいことからヒントを得て、少しずつでも理想に近づいていければきっと大丈夫なんじゃないかと思います。時間は過ぎていって、必ず苦しいことも過ぎていくと、そんなメッセージがこめられた1曲になっています」と、東京都美術館『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』のテーマソング「Unbreak」を、YouTubeチャンネルWith ensembleで演奏しているストリングスとサックスのメンバーとともに一緒に披露した。

「今回「Forward」っていうタイトルを付けましたが、みなさんにたくさんの明るい光を与えられましたか? 私も本当にたくさんのパワーをいただきました。ありがとう」と丁寧に言葉を紡ぎ、そのまま一呼吸つき、ピアノの伴奏の上で「Eyes」へ。途中でストリングスが加わり、厳かな演奏のなか、最後まで淀みなくすべての楽曲を歌い切った。



鳴り止まないアンコールの拍手に応えて再びステージに登場したAnonymouz。初めてのグッズ紹介をし、「今日はたいへんなところ来てくれて本当にありがとうございます。これからもみなさんの日常を少しでも鮮やかにしていけるようにたくさん曲を書いて、たくさん届けられるようにがんばりますので、ぜひこれからも応援してください」とazに伝えると、赤い照明にミラーボールが回る中、ミドルテンポでムーディーな新曲「赤」をしっとりと力強く歌った。「また必ず会いましょう」と語り、ステージを後にした。

「名前のない女の子」というアーティスト名と、目元を隠した匿名性を持ちながらも、ステージ上でバンドメンバーたちとともに堂々と身体性を持って楽曲を歌い上げていったAnonymouz。透明性のある歌声を見せたかと思えば、心の芯に突き刺さるような深い歌声も聴かせるなど、掴めそうで掴めない懐の深いヴォーカルが印象的だった。まだまだポテンシャルを秘めていそうな彼女の今後にますます興味を持ったワンマンライブだった。

Photographer:Viola Kam (Vz Twinkle)

『Anonymouz Live 2022 〜Forward〜』
セットリスト
1. Winds of Time
2. 足りないよ
3. In Our Hearts
4. Snake Love
5. Wonders of Art
6. Homesick
7. 水平線(cover)
8. カタオモイ(cover)
9. ドライフラワー(cover)
10. もうええわ(cover)
11. 夜に駆ける(cover)
12. Your Plan
13. Hide & Seek
14. Lips
15. Thrill
16. Unbreak
17. Eyes
EN. 赤

公式サイト:https://anonymouz.jp/s/n109/?ima=4300