直面する過疎 住民の努力でキラリ 茂木町
中山間地域では人口流出や高齢化による過疎化が喫緊の課題となっていますが、この問題に地域住民が自ら取り組み、全国の見本となったとして表彰を受けた施設が茂木町にあります。
受賞の背景には地域の課題を自分事としてとらえ、工夫を積み重ねてた住民たちの努力がありました。
茂木町の観光施設と言えば道の駅やツインリンクもてぎが真っ先に思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
いずれも1990年代後半にオープンし、今では交流人口の増加に大きな役割を果たしています。
一方、そこから10キロほど離れた場所にある逆川地区。
中心地の活気が届かない典型的な中山間地域ですが、ここに小粒でもキラリと輝く市場があります。
「いい里さかがわ館」です。
2008年にオープンした農村レストランや直売所からなる複合施設で、農林水産省が行う「豊かなむらづくり全国表彰」でことし農林水産大臣賞を受賞しました。
さかがわ館の運営を担う協議会の会長、谷中和一さん(73)です。
野菜を作って売る場所も買い物をする場所もない。
そんな危機感から2006年、地域の農家など70人とともに協議会を設立しておよそ15年間、店と共に歩んできました。
住民の声をもとに最初に取り組んだのは周囲の観光資源の掘り返しです。
雑木に埋もれていた焼森山のミツマタ群生地に着目し、10年かけて草刈りや遊歩道整備を進めました。
今では春先の観光地として客の目を楽しませています。
店の商品づくりにも力を入れました。
看板メニューのそばもその1つで、原材料のそばの実を生産する農家の確保から始めたといいます。
職人が手打ちで作るそばは多くの人がこれを目当てに立ち寄ります。
そばの人気も追い風となり、さかがわ館のおととしの売り上げは過去最高の1億4千万円を記録。
従業員に賞与を支給でき、売上金のみの自立した運営ができています。
店が軌道に乗ったことで地域の雇用促進にもつながりました。
そばレストランで働く中田加代子さん(64)もその一人です。
店で働き始めておよそ3年。
設立から店を守る協議会のメンバーに支えられながら今では店長を務めます。
一方、これからの課題となっているのが担い手の高齢化です。
直売所とアイス部門の店長を兼務する木原那穂子さん(42)は、店を回す責任者としてこの問題に直面しています。
実は木原さん、谷中会長の娘です。
店のオープンが決まった時、当時は支配人だった父親の依頼でしぶしぶながら手伝い始めたといいます。
しかし、アイス部門の店長を任されたことがきっかけで店の課題に目を向けるようになりました。
以来、売り上げを増やすためさまざまな努力を積み重ねてきました。
地元産のハトムギを使ったソフトクリームの開発もその1つです。
働き始めてから13年間、しづつ小さくなっていく親の背中を見てきました。
今は次の担い手となる新たな世代に魅力を感じてもらえるような職場づくりを目指しています。
構想から15年の節目で得た大臣表彰。ここからがまた新たなスタートです。