大規模山林火災から9カ月 両崖山復興プロジェクト
今年2月末に足利市の両崖山一帯で発生した大規模な山林火災は鎮火までおよそ1カ月間かかり大きな被害がありました。
この火災により登山愛好家に親しまれていた見晴台も焼けてなくなりました。
見晴台に代わる休憩所の設置に取り組んだ地元企業の復興プロジェクトを取材しました。
足利市の両崖山一帯で起きた大規模な山林火災。今年2月21日に火が出てると広範囲に燃え広がりました。
地元の消防や自衛隊、他県の協力も得た懸命な消火活動により鎮火したのは、およそ3週間後の3月15日。
この間、近隣の住民は一時避難を余儀なくされ、焼失面積は167ヘクタールにもなりました。
両崖山には手軽に登れるハイキングコースがあり、頂上付近の見晴らし台は長年、登山愛好家に親しまれていました。
ユニバースプロダクツ 小堀翔太さん:「山火事で被害にあった足利市の両崖山復興プロジェクトクラウドファンディングで募金を募っています。このプロジェクトではみんなが使える休憩場所の復興を目指しております」
復興プロジェクトに取り組んだのは地元・足利市の物流業、ユニバースプロダクツの登山部のメンバーです。
メンバーたちは鎮火宣言の2日後にすぐさまクラウドファンディングに着手。目標金額を50万円に設定し、休憩所の設置を目指しました。
去年の秋に登山部を結成した矢先、会社の事務所からも見える馴染みの山が燃え、 メンバーは突き動かされました。
ユニバースプロダクツ 須藤三津男さん:「自分たちが本当に登っている山が燃えているのかと信じられないのを毎日見続けていてすごくつらかったです。あの山に登ることでやっぱり何かやすらぎを求めていたところがあったので、すごくホームグラウンドのようなそんな気持ちです」
今年3月末、登山部のメンバーとともに両崖山のハイキングコースを歩きました。
山道を歩いて行くと途中には焼け焦げた木や枝、そして灰で黒くなっている山肌が目につき、頂上付近にあった見晴台は焼け跡だけが残っていました。
クラウドファンディングを始めてから44日、132人の支援者から目標を超える60万円が集まりました。
ユニバースプロダクツ 須藤三津男さん:「想定していた金額以上にみなさんからご協力頂きまして、できたことに対しては感謝しかありません」
支援金に加えてメンバーたちが動いて集めた募金をもとに今年6月、足利大学附属高校に山の頂上で休憩ができるウッドデッキの製作を依頼しました。
建築科の3年生12人が課題研究の授業の一環として取り組み、設計した地元の工務店から技術指導を受けて製作に当たりました。
足利大学附属高校 建築科3年 荒川遙さん:「慣れ親しんだ人がとても悲しんでいると思うので自分もそれに協力して喜んでもらえるようなものを作れるように頑張る」
10月、デッキは完成しました。しかし、登山口から1.3キロ離れた設置場所に運ぶには大きすぎるため、これを分解してそこへ持っていき、その場で組み立てなければなりません。
1カ月後の11月19日。
ウッドデッキを運ぶため登山口には製作に携わった足利大学附属高校の生徒や一般のボランティアなどおよそ120人が集まりました。
足利大学附属高校 建築科3年 荒川遙さん:「みんなと協力してこれから作りに行くことを考えるととても楽しみです」
クラウドファンディングの支援者も返礼品の手ぬぐいを持って参加していました。
クラウドファンディングの支援者 中井誠さん:「設置までしないと気分が・・・。今度は体で貢献してぜひいいベンチを作ってもらいたいなと思っています」
ユニバースプロダクツ 須藤三津男さん:「両崖山の復興というところに力を合わせて尽力して頂く方たちが来て頂いたので本当に感謝しかありません。行動を起こして頂いたってことで僕らとしても感謝しかありません」
ユニバースプロダクツ 鈴木利和代表:「僕らだけではなくてですね。足利の里山を守りたい人たちのために何か一石を投じれればいいなと思って始めたことですので皆さんの協力がなければできませんでした。本当にありがとうございます。それでは元気に復興していきましょう宜しくお願いします」
設置場所までのルートには急な勾配やでこぼこした道があり大きな荷物を持っての移動は骨が折れます。
木材は長さが60センチから3.75メートル、重さは3キロから25キロと大小さまざまな100個ほど。
1人で運んだり3人が協力して担いだりして頂上付近を目指しました。
足利大学附属高校 建築科3年 荒井遙さん:「道がとても険しいんですけどみんなが協力してすいすい行けているところがすごいなと思います」
ユニバースプロダクツ 鈴木利和代表:「(部材を運んでの登山は)いやーきつい、本当にきついまだザックで20キロ背負った方が楽」
復興プロジェクトを支える大集団は40分かけて無事たどり着きました。
クラウドファンディングの支援者 中井誠さん:「安心して登れる山にまた戻ってもらいたいなと思います」
日が暮れることも考慮してすぐさま組み立てに取りかかります。
訪れたハイカー:「よく登らせてもらっています。来るたびにここでご飯食べるのが楽しみです」
そして組み立てを始めてから5時間後、ついに新たな休憩所が完成しました。
足利大学附属高校 建築科3年 荒川遙さん:「実際に山の上で作ってみてこんなに素敵な物が出来上がるとは思っていなかったのでとても嬉しい気持ちが大きいです。皆さんに座ったり休憩したりしてこの景色を楽しんでもらえたらいいなと思います」
登山部のメンバーたちが復興プロジェクトをスタートさせてからおよそ8カ月、数人から始まった計画は多くの人の共感を呼びその思いを形にしたのです。
ユニバースプロダクツ 須藤三津男さん:「もう感無量です。朝10時ぐらいからみなさんスタートして頂いて約6時間、7時間になるかな、高校生が本当に頑張って頂いてネジ1個1個を1人1人が気持ち込めて打って頂きまして本当に感謝の気持ちでいっぱいです。なかなかこういう体験というのはやろうと思ってもできないことですので単純に山の復興だけではなくて人1人が成長できたようなそんな素晴らしい体験だったのではないかと思います」
ユニバースプロダクツ 鈴木利和代表:「誰かの思い出になるような何かのきっかけになるような場所になってほしいなと思います。山火事だけではなくて色々なところでいろんな災害が起きていますけれども、その復興はやっぱり誰かの優しさだったり誰かの気持ちで元に戻っていくもんなんだなとこの事業を通して感じました」