オマーンを下したあとも、日本代表の周辺は騒がしい。より正確に言えば、森保一監督への指摘が絶えないのだ。指摘ではなく「批判」と言っていいかもしれない。

 元日本代表やファンから多くの声が上がっているのは、選手起用についてだ。11月のベトナム戦とオマーン戦では、旗手怜央、前田大然、上田綺世が2試合連続でベンチ外となった。その一方で、コンディションが万全ではない選手、調子がいいようには見えない選手が使われた、という声が広がっている。分かりやすくまとめれば、森保監督の選手起用は「経験重視で変化に乏しく、思いきりに欠ける」と見なされている。

 ベトナム戦もオマーン戦も1対0で勝利し、オーストラリアのアシストもあってグループ2位に浮上した。ここまで4勝2敗の成績はやや物足りないが、それでもW杯出場権の2位で残り4試合を迎える。森保監督は最低限のノルマを果たしている、と言える。

 11月の2試合は「負けられない試合」ではなく、「勝たなければいけない」試合だった。自分たちから試合を壊さないためにも、経験のある選手を使って「手堅さ」や「安定感」を担保しつつ、必要に応じて選手を代えていく、という考えは成り立つ。

 そもそも、かつてより新戦力を使うのは難しい。コロナ禍で国際Aマッチのスケジュールが詰まり、日本代表の試合はすべて最終予選に充てられている。テストマッチを経て公式戦に臨むことができないため、新戦力を使うとなるとぶっつけ本番になってしまう。そこには必ずリスクがある。

 それでも新戦力を使うべきだという声が出てくるのは、ピッチに立っている選手のパフォーマンスが十分ではないからなのだろう。11月の2試合で言うならば、大迫勇也、長友佑都、南野拓実らは、自分なりの価値をピッチ上で示せなかったかもしれない。

 ただ、選手の価値はすべて可視化されない。経験を積んできた選手にしかできないこともある。

 さらに言えば、旗手、前田、上田らを起用したら、1対0ではなく2対0、3対0で勝つ可能性が高まったのか。試合内容が格段に良くなったのか。そうかもしれないし、そうはならなかったかもしれない。森保監督のチョイスが勝利につながった、と考えることもできる。

 国際経験の少ない選手を、森保監督が使わなかったわけではない。右サイドバックには、酒井宏樹ではなく山根視来を2試合連続で起用した。山根はベトナム戦が国際Aマッチ出場5試合目で、最終予選初出場だった。経験重視なら室屋成を選んだはずだが、個人の経験値よりも戦術へのフィット感を重視したのだろう。山根は所属する川崎フロンターレで、4−3−3に馴染んでいる。

 オマーン戦では三笘薫を後半から起用した。彼は今回が初招集だった。国際Aマッチのデビュー戦がW杯最終予選で、しかもアウェイゲームである。さらに言えば、独特な空気感の漂う中東での一戦だった。起用する森保監督には思い切りが必要で、起用された三笘は緊張感に縛られてもおかしくない。三笘の出場は誰もが待っていたが、それだけにプレッシャーがかかったはずである。三笘を起用するのはもちろん、後半開始から送り出したのは、森保監督の英断だったはずだ。

 中山雄太の交代も的確だった。三笘に思い切った仕掛けをしてもらい、できるだけ守備に引っ張られないためにも、左サイドの守備を強化するのは論理的だ。中山はベトナム戦で効果的なパスを配球しており、攻撃でも三笘をサポートできる。奇しくも中山のパスカットをきっかけに、決勝ゴールが生まれた。

 ベテラン重視で面白みに欠け、旬の選手を使わないと言われる森保監督だが、最終予選の6試合を経て守田英正と田中碧がレギュラーに昇格してきた。中山もいつ先発に食い込んでもおかしくない。三笘もプレータイムを増やしていくだろう。ゆっくりとした変化だが、世代交代は進んでいる。

 代表監督の仕事には、批判されることも含まれる。結果にかかわらず圧力を受けることはあるものだが、W杯出場権の2位以内へチームを持ってきているのだ。評価されるべきところはある、と考える。