スネークアイズ役のヘンリー・ゴールディング(右)に指示を出す谷垣健治アクション監督(中央)
 - (C) 2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. (C) 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

写真拡大

 ハリウッド映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(公開中)でアクション監督/セカンドユニットディレクターを務めた谷垣健治がリモートインタビューに応じ、10年近く携わった代表作『るろうに剣心』シリーズ完結後の心境と共に、転換期を迎えつつある大作映画シリーズについて語った。

 2021年は谷垣にとって、新たなステージの幕が上がる年だった。北米映画に初挑戦した『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』が日本公開を迎えた一方で、2012年からアクション監督として参加した大ヒット映画『るろうに剣心』シリーズが、今年4月と6月に公開された完結編2部作『るろうに剣心 最終章 The Final』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で10年の歴史に終止符を打った。

 「経験値も含めて、『るろうに剣心』が与えてくれたものはすごく大きいです」と改めてシリーズ完結を振り返った谷垣。今では、世界各国から谷垣が演出する桁違いのアクションを求める声が続々と届いているという。「世界中の方が『るろうに剣心』のことを知っていて、『るろうに剣心』みたいなアクションがほしいと言ってくれる。そんな作品に出会えることは滅多にないですし、アクション面で僕らの正しい活かし方を理解している大友啓史監督に出会えたことも含めて、すごく貴重な10年でした」

 『G.I.ジョー』のほか、12月にはスタントコーディネートで参加したドニー・イェン&ニコラス・ツェーのW主演映画『Raging Fire(原題)』の公開も控えている。「今はすごく身軽な感じで、面白そうな話だったら世界のどこにでも行きたいなという感じです」と現在のスタンスを語った谷垣は、「『るろうに剣心』が終わったから、今なら何でもできるという感じです」と自信に満ち溢れていた。「『るろうに剣心 最終章 The Final』のクライマックスで登場した気が狂ったようなアクションは、条件的にも時間的にもすごく厳しいものでした。それでも、俳優、スタッフ一丸となってしっかりと形に残せたことは僕の中ですごく自信になりましたし、『るろうに剣心』のアクションやった後だからこそ、何も怖いものはないと思いますね」

 『るろうに剣心』完結によってアクション演出における基準も生まれた。「『るろうに剣心』みたいなアクションをやりたいとすると、それをやったときの基準が既に出来てるじゃないですか。だから『こういうシーンをやりたいのであれば、何人ぐらいのスタントマンを稼働させて、何日くらいかかります』と言えるからお互いの考え方のギャップを埋めやすい」と明かした谷垣は、何か特別なことをしようとするのではなく、普段のコンディションに近づけることが大切だと説く。

 「アクションチームにしても、人数にしても、仕事の進め方にしても、その国で特別なことするっていうわけではなくて、『るろうに剣心』をやっていた時のコンディションに近づける工夫をする。そうすると、自分の中で間違いないという基準に達するわけです」

 2019年から2020年にかけて、『るろうに剣心』はもちろん、盟友ドニー・イェン主演の『イップ・マン』、マーベル・スタジオ製作の『アベンジャーズ』といった大作シリーズが一つの区切りを迎えた。谷垣は、自身が参加した『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』についても「脚本の最初には、『G.I.ジョー』ユニバースと書かれていて、これもユニバースとしての作品だという思いがありました。終わったものがあれば、そこから始まるものがある。そういう意味では、新たなフランチャイズを目指すことは自然な流れだと思いますね」と新たなユニバースの誕生に期待を膨らませていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)