2024年のパリ五輪へ向けて、韓国が動き出した。9月15日に黄善洪(ファン・ソンホン)監督の就任を発表したのだ。

 パリ五輪を目ざすアジアのチームは、10月末のAFC U―23アジアカップ予選から始動する。韓国が黄善洪監督の就任を決めたのも、フィリピン、東ティモール、シンガポールとの同予選へ向けた最初のアクションだ。

 日本はグループKに割り振られ、10月29日にカンボジア、同31日に香港と対戦する予定だ。本大会にはホスト国のウスベキスタンに加えて、予選グループの首位チーム11か国と、2位チームから成績上位の4か国が進出する。日本からすれば、監督を慌てずに決めなくても、本大会進出を逃すことはない組み合わせだ。

 10月の2試合には、U−20日本代表が臨むことになるだろう。U―23選手権と呼ばれたこともあるU−23アジアカップは、隔年で開催されてきた。五輪最終予選を兼ねないタイミングの大会には、U−21日本代表を派遣するのがこれまでのパターンだ。つまりは現在のU−20日本代表である。

 そのU―20日本代表は、8月下旬から9月上旬にかけてトレーニングキャンプを開いた。

 スタッフは富樫剛一監督、武藤覚コーチ、川口能活GKコーチ、それに矢野由治フィジカルコーチで編成された。6月の活動までは影山雅永監督、富樫コーチ、高桑大二朗GKコーチ、菅野淳フィジカルコーチだったが、9月は前述のスタッフとなっている。

 富樫監督はJリーグ開幕以前の読売クラブでキャリアをスタートし、ヴェルディやコンサドーレ札幌でプレーした。現役引退後はヴェルディのアカデミーを中心に指導歴を積み上げ、14年から16年までトップチームの監督を務めた。19年に日本サッカー協会のナショナルコーチングスタッフ入りし、U−18からU―20世代の強化に関わっている。

 武藤コーチは分析畑で力を発揮してきた人材で、10年南アフリカW杯や12年ロンドン五輪でスタッフを務めた。川口能活GKコーチについては、説明を必要としないだろう。先の東京五輪でもGKコーチを務めた日本代表のレジェンドだ。

 矢野フィジカルコーチは、08年北京五輪にスタッフとして参加している。その後はクラブレベルでフィジカルコーチを務め、今年1月からはU−24日本代表のスタッフに加わっていた。

 10月末のU−23アジアカップ予選に、富樫監督以下のスタッフで臨むとの正式なアナウンスはない。五輪代表監督は「Jリーグで実績を残してきた日本人に」というこれまでの選考基準に照らすと、富樫監督のもとで始動しても暫定的と予想する。

 そもそも、日本人でなければいけないのだろうか。

 五輪代表監督は日本人で、という方針には賛同する。日本人指導者が、国際的な経験を積む機会は確保したい。

 ただ、この年代から海外でプレーする選手が増えている。監督と選手の経験値に、開きが生じている現状は見逃せない。

 さらに言えば、東京五輪で見せつけられた「差」がある。

 五輪はスケジュールが過密だ。監督のマネジメントが勝敗に占める割合が、W杯などよりも大きくなる印象だ。試合ごとのメンバー選定から交代選手投入のタイミング、さらには試合中の戦術変更など、必要な手立てを機動的に講じなければ勝てないことがはっきりした。

 そこまでの経験と感度を持った日本人監督が、果たしているだろうか。もしいるならば、五輪代表ではなく真っ先に日本代表を任せたい。

 五輪代表監督は日本人という方針を堅持するなら、外国人コーチをスタッフ入りさせるのはどうだろう。日本サッカーの特徴を生かしたチーム作りを維持しながら、勝負にこだわった戦いのできるスタッフを作る。パリ五輪でメダルを獲得するなら、これまでとは違うアプローチが必要だと思う。