【戸塚啓コラム】引分けでも敗戦に等しい。早くも迎えた絶対に負けられない戦い
今回は本当に、絶対に負けられない戦いである。日本時間の9月7日深夜に行なわれる、中国とのカタールW杯アジア最終予選だ。
2日の開幕節で、中国はオーストラリアに0対3で敗れた。中国を下したオーストラリア、ベトナムを3対1で退けたサウジアラビアが、オマーンとともに白星スタートを飾っている。
開幕節の3試合から判断すると、W杯ストレートインの2枠は日本、オーストラリア、サウジアラビアの争いになるだろう。日本戦のパフォーマンスを維持できれば、オマーンもライバルに加わってくる。
中国とベトナムは、ワンランク下の印象だ。
中国は帰化選手を迎え入れ、その実力が未知数だった。それゆえに不気味な存在だったのが、オーストラリア戦は完敗だった。
元代表MFの李鉄(リ・ティエ)監督は、4−1−4−1のシステムで臨んだ。これがまったくハマらなかった。
1トップでも守備時は2トップへ可変するチームが多いなかで、中国はエウケソンひとりが前線に立つままだった。しかも、このブラジル生まれの32歳は、守備のスイッチを何度も入れるタイプではない。相手守備陣に大まかに規制をかける程度だ。
その結果として、オーストラリアの両CBは自由にボールを配球することができていた。前半23分のオーストラリアの先制点は、右CBのトレント・セインズベリーの縦パスをきっかけとしたものだった。
4−1−4−1の陣形を崩し、中盤の4枚の誰かが前へ出ていくと、空いたスペースを使われてしまう。中国は守備の整理がまったくつかないまますぐに2点目を失い、0対2のままどうにか耐えていったものの、70分にミッチェル・デュークにダメ押しの3点目を喫した。J2のファジアーノ岡山でプレーするデュークは、途中出場後すぐに得点を決めた。
オーストラリア戦のままでは、日本にもいいように振り回されてしまうだろう。李鉄監督が同じシステムと守りかたで、臨んでくるとは考えにくい。
日本から見れば、冨安健洋の復帰はプラス材料だ。アーセナル加入が決まったこの22歳は、左足をスムーズに使うことができ、ギリギリで判断を変えられる。ビルドアップはスムーズになるはずだ。
根本的なポイントとしては、森保一監督のキャスティングがあげられる。
オマーン戦は最終予選の開幕節ということもあり、経験重視のスタメンとなった。左サイドバックなら中山雄太、2列目左サイドなら久保建英や堂安律を先発させる選択肢もあったはずだが、森保監督は長友佑都と原口元気を選んだ。長友は所属クラブが決まっておらず、6月中旬から実戦を踏んでいないなかでの起用だった。
東京五輪にオーバーエイジで出場した吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航の3人も、疲労感を隠せなかった。とりわけ、酒井と遠藤はトップパフォーマンスに遠く、酒井はオマーン戦後にチームを離れた。オーバーワークを避けるための判断だった。
中国戦のメンバーを見ると、CBには冨安に加えて昌子源と植田がいる。中山も対応できる。それでも、キャプテンの吉田は外せないだろう。彼ばかりは取り換えが効かない。
ボランチは状況が少し異なる。柴崎岳が昨年11月以来の復帰を果たしており、オマーン戦に参加できなかった守田英正が合流している。守田は冨安とともに、中国戦が行われるドーハに先乗りすることになった。日本から移動していった選手に比べて、コンディションは整っていると考えられる。
オマーン戦と同じように、遠藤と柴崎のダブルボランチでスタートするのか。それとも、柴崎と守田のコンビにするのか。5人の交代枠を無駄にしないことも含めて、森保監督の選手起用が注目される。
前回のアジア最終予選を振り返ると、日本は6勝2分2敗の勝点20で首位通過している。日本の2敗は開幕節のUAE戦と、予選突破決定後の最終戦だった。
同グループで2位のサウジアラビアは、6勝1分3敗だった。こちらは勝点19である。3位で4次ラウンドへまわったオーストラリアも、5勝4分1敗の勝点19だった。
もうひとつのグループでは、イランが6勝4分の勝点22で首位通過した。2位の韓国はかなりもたついて、4勝3分3敗の勝点15で勝ち抜いている。シリア、ウズベキスタン、中国との僅差の争いを、辛うじて制したのだった。
勝点の計算をするのはまだ早い。しかし、前回予選をギリギリで勝ち抜いた韓国も、3敗しかしていないのだ。中国に勝点3を譲るようなことがあれば、予選突破に黄色信号が灯る。引分けでも敗戦に等しい。
本当に、絶対に、勝たなければいけない戦いなのである。
2日の開幕節で、中国はオーストラリアに0対3で敗れた。中国を下したオーストラリア、ベトナムを3対1で退けたサウジアラビアが、オマーンとともに白星スタートを飾っている。
開幕節の3試合から判断すると、W杯ストレートインの2枠は日本、オーストラリア、サウジアラビアの争いになるだろう。日本戦のパフォーマンスを維持できれば、オマーンもライバルに加わってくる。
中国は帰化選手を迎え入れ、その実力が未知数だった。それゆえに不気味な存在だったのが、オーストラリア戦は完敗だった。
元代表MFの李鉄(リ・ティエ)監督は、4−1−4−1のシステムで臨んだ。これがまったくハマらなかった。
1トップでも守備時は2トップへ可変するチームが多いなかで、中国はエウケソンひとりが前線に立つままだった。しかも、このブラジル生まれの32歳は、守備のスイッチを何度も入れるタイプではない。相手守備陣に大まかに規制をかける程度だ。
その結果として、オーストラリアの両CBは自由にボールを配球することができていた。前半23分のオーストラリアの先制点は、右CBのトレント・セインズベリーの縦パスをきっかけとしたものだった。
4−1−4−1の陣形を崩し、中盤の4枚の誰かが前へ出ていくと、空いたスペースを使われてしまう。中国は守備の整理がまったくつかないまますぐに2点目を失い、0対2のままどうにか耐えていったものの、70分にミッチェル・デュークにダメ押しの3点目を喫した。J2のファジアーノ岡山でプレーするデュークは、途中出場後すぐに得点を決めた。
オーストラリア戦のままでは、日本にもいいように振り回されてしまうだろう。李鉄監督が同じシステムと守りかたで、臨んでくるとは考えにくい。
日本から見れば、冨安健洋の復帰はプラス材料だ。アーセナル加入が決まったこの22歳は、左足をスムーズに使うことができ、ギリギリで判断を変えられる。ビルドアップはスムーズになるはずだ。
根本的なポイントとしては、森保一監督のキャスティングがあげられる。
オマーン戦は最終予選の開幕節ということもあり、経験重視のスタメンとなった。左サイドバックなら中山雄太、2列目左サイドなら久保建英や堂安律を先発させる選択肢もあったはずだが、森保監督は長友佑都と原口元気を選んだ。長友は所属クラブが決まっておらず、6月中旬から実戦を踏んでいないなかでの起用だった。
東京五輪にオーバーエイジで出場した吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航の3人も、疲労感を隠せなかった。とりわけ、酒井と遠藤はトップパフォーマンスに遠く、酒井はオマーン戦後にチームを離れた。オーバーワークを避けるための判断だった。
中国戦のメンバーを見ると、CBには冨安に加えて昌子源と植田がいる。中山も対応できる。それでも、キャプテンの吉田は外せないだろう。彼ばかりは取り換えが効かない。
ボランチは状況が少し異なる。柴崎岳が昨年11月以来の復帰を果たしており、オマーン戦に参加できなかった守田英正が合流している。守田は冨安とともに、中国戦が行われるドーハに先乗りすることになった。日本から移動していった選手に比べて、コンディションは整っていると考えられる。
オマーン戦と同じように、遠藤と柴崎のダブルボランチでスタートするのか。それとも、柴崎と守田のコンビにするのか。5人の交代枠を無駄にしないことも含めて、森保監督の選手起用が注目される。
前回のアジア最終予選を振り返ると、日本は6勝2分2敗の勝点20で首位通過している。日本の2敗は開幕節のUAE戦と、予選突破決定後の最終戦だった。
同グループで2位のサウジアラビアは、6勝1分3敗だった。こちらは勝点19である。3位で4次ラウンドへまわったオーストラリアも、5勝4分1敗の勝点19だった。
もうひとつのグループでは、イランが6勝4分の勝点22で首位通過した。2位の韓国はかなりもたついて、4勝3分3敗の勝点15で勝ち抜いている。シリア、ウズベキスタン、中国との僅差の争いを、辛うじて制したのだった。
勝点の計算をするのはまだ早い。しかし、前回予選をギリギリで勝ち抜いた韓国も、3敗しかしていないのだ。中国に勝点3を譲るようなことがあれば、予選突破に黄色信号が灯る。引分けでも敗戦に等しい。
本当に、絶対に、勝たなければいけない戦いなのである。
![戸塚啓コラム](http://image.news.livedoor.com/newsimage/vender/totsuka.jpg)
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している