コロナで「売れた」「売れなくなった」商品

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オートミールが売れている(写真:no_sick/PIXTA)

感染爆発が止まらない。東京都の1日の感染者数が5000人台という桁違いの数字にハネ上がり、緊急事態宣言による人流抑制の効果は以前より薄れている。重症化リスクのある人に病床を確保するためとして、政府は重症者などを除き自宅療養を基本とする方針を打ち出した。

8月16日時点で1回目のワクチン接種を終えた人は、国内の全人口の49.7%、2回目まで終えた人は37.6%。この進捗が遅いのかどうかの議論はさておき、読者諸氏の周囲でも接種を終えた人はかなり増えてきているだろう。

市場調査のインテージが、新型コロナの影響を受ける直前から週次で全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントショップなど、約6000店舗の販売動向を追っている「新型肺炎カテゴリー動向」。このほど公表した6月21日週までのデータには、ワクチン接種の進展による影響がより明確に表れた。

欠品続くアセトアミノフェン系の解熱鎮痛剤

6月21日週の総合トップ3は麦芽飲料、玩具メーカー菓子、しわとり剤だったが、ワクチン接種の進展効果だろう。4位の解熱鎮痛剤が6月に入ってから前年比140%台を維持している。相変わらずアセトアミノフェンの人気は高く、ドラッグストアの店頭では欠品が続いている。厚生労働省はイブプロフェンやロキソプロフェンも使用できるとしているものの、国民のアセトアミノフェン志向は根強い。

子ども連れでの遠出の必需品である鎮暈剤(酔い止め)も、昨年大幅に後退した反動で143.1%と大きく伸び、医薬品部門2位、総合でも5位に入った。あくまでそれは昨年大きく落ち込んだ反動のせいだ。

そこで、2年前比で比べてみた。医薬品だけを抽出して2年前の比べたものが、次のグラフだ。


解熱鎮痛剤が2年前と比較してもなお、134.1%と高水準であるのに対し、鎮暈剤は75.2%。国民の多くが外出自粛をしていた昨年4月には前年比10%台まで落ち込んだだけに、いまだにコロナ前の7割強までしか需要は戻っていない。

じわり高水準の需要が継続しているのが女性用保健薬。2年前と比べても110〜120%台を行ったり来たりしている。更年期障害や生理痛を抱える女性が急に増えるとは考えにくい。1年前ほどではないにせよ、家庭内における女性の負担増でストレスを抱える女性が相変わらず多いということか。

プロテインバーの売れ行きが伸びる

6月21日週で、食品部門で玩具菓子、冷凍水産に次ぐ3位に入った栄養バランス食品は今年2月頃から回復基調に乗った品目。牽引しているのはプロテインバーだ。

薄着になる季節に向け、外出も増える中でコロナ太りした体をどうにかしたいというマインドの表れか。ダイエット食品も前年比109.1%と約1割の伸びとなっている。


だが、これを2年前と比較すると、まったく異なる様相になる。


栄養バランス食品が124%と、2年前と比較するとさらに高い伸び率を示したのに対し、ダイエット食品は92.5%。増えてきたとはいえ、外出機会はコロナ前の水準にはほど遠い。やせたい願望への本気度がまだコロナ前ほど戻ってはいないということか。

注目に値するのはシリアル類。前年比109.6%で2年前比でも117.8%と高い伸びを示したのだが、これを牽引しているのが実はオートミールなのだ。直近の6月21日週でも前年比298.2%。6月8日週には608.8%を記録している。1年半の動きを見てみると、要所要所でハネ上がっているのがわかる。原因は言うまでもなくテレビだ。


オートミールは2年前比で1870%を記録

オートミールはオーツ麦を脱穀して加工したもので、食物繊維の含有量は玄米の約3倍、白米の約20倍、鉄分も玄米の約2倍含まれると言われる。しかも低カロリー。

さらに、白米や玄米は炊かないと食べられないが、茶碗にオートミールを入れてだし汁を注ぎ、レンチンすればちょっとしたお茶漬け代わりになるなど実に手軽だ。

そんな栄養価が高く低カロリー、しかも手軽な食品であることを昨年の巣ごもり時期以降、要所要所でテレビ番組が取り上げ、料理サイトではさまざまなレシピが紹介されている。

2年前と比べるとコンスタントに400〜500%。テレビ番組で取り上げられた週はさらにハネ上がり、NHKの『あさイチ』が取り上げた6月7日週は1年前比で608.8%、2年前比では1867.8%という驚異の伸びを見せた。


最後に玩具メーカー菓子について、インテージが通常のカテゴリー別の販売動向に加え、このたび興味深い数値を公表したので紹介しておきたい。

玩具メーカー菓子は、アニメ『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』の大ヒット効果に加え、それ以外のキャラクター商品の寄与もあって、目下のところ絶好調。直近の6月21日週でも前年比221.3%で総合2位。2年前比でも277.2%と、一貫して高い水準が続いている。

インテージが玩具メーカー菓子にカテゴライズしているのは、玩具メーカーが販売元になっている、おもちゃ付きの菓子のみだ。ブルボンのプチシリーズやベビースターなど、通常とは異なるパッケージで販売するコラボ菓子は、玩具メーカー菓子ではない。

つまり、玩具メーカー菓子だけでこれだけ伸びており、コラボ菓子もそれぞれのカテゴリーの牽引役になっている。

玩具メーカー菓子を買っている層は?

それではいったい誰が買って伸びたのか。今回インテージが公表したのは、性別、年代、それに子どもの有無別に、半年単位で購入金額を集計したデータだ。あくまでインテージが調査対象にしている約6000店舗での集計結果なので、世の中全体の合計ではない。

2019年の上半期、2020年の上半期、2021年の上半期の結果を男女別、年代別、子どもの有無別でグラフ化してみた。


2019年上半期に37億3300万円だった購入総額は、2021年上半期には81億8300万円へと、44億5000万円増えた。

このうち、最も増加額が大きかったのは30歳〜49歳の子育て世代の女性で、増加額は12億9200万円。次が同じ子育て世代の男性で、増加額は8億3600万円。この結果自体は極めて順当なのだが、注目してほしいのは30〜49歳の子どものいない男性の数値である。

2019年上半期から2021年上半期の間の伸びはわずか1億9200万円でしかないのだが、実はこの層、コロナ前までは同世代の子どものいる女性とほぼ同じ額だった。つまり玩具メーカー菓子のヘビーユーザー層なのだ。50歳代以上の動向とは対照的だ。

15〜29歳の女性も同世代の男性に近い水準まで増えてきている。この調査では誰のために買ったかまでは集計されていない。男性も女性も、子育て世代ではあっても、子どものために買っている人ばかりではないのかもしれない。