交際14年で結婚、半年で離婚した34歳女性 夫の“同じ価値観”は仮の姿…
“長過ぎた春”という言葉があります。それでめでたしなら万事OKですが、10年以上の交際期間を経て、ようやく結婚にこぎつけたと思ったら即離婚してしまった、または離婚の危機を迎えてしまったという話を聞くこともあります。長い時間を一緒に過ごし、お互いの長所も短所も分かり切っているはず。それなのになぜ、そうした状況になってしまうのか。長い春カップル「ナガハルカップル」の不思議について、事例をもとに考えてみましょう。
「価値観が一緒」は仮の姿
現在、ナガハルで付き合っているパートナーがいる皆さん、あるいは2人で住んでいる皆さんに問います。
・友人にパートナーを紹介するとき、どう言うか悩む
・周囲から、「いつ結婚?」と聞かれると面倒くさい
・3年以上付き合っていて、セックスレス状態
・随分長く「デートらしきもの」をしていない
・生活感が満載で、パートナーに対して実家の家族と同じ距離感を覚える
・会話のテーマが生活に関連することばかり(帰宅時間、風呂、ご飯、寝る)
・パートナーの親との関係があまりよくない、あるいは会ったことがない
これらに心当たりがあり、かつ、問題意識を感じない場合、一緒にいるメリットが多いから付き合っていますか? あるいは「いずれは結婚するよね」と確固たる自信があり、さほど気にしていないですか? ナガハルカップルは一瞬立ち止まり、「付き合っている理由」を考察する必要があります。
問題意識がある場合、「解決策は結婚しかない」と思っている人もいるでしょうが、そんなことはありません。結婚で解決と思いきや、離婚騒動で疲弊するという「こんなはずではなかった問題」の危険があります。結婚は、交際時とは全く別次元の問題を次々に差し出してきます。実家、子育て、経済状況、親戚付き合い、借金発覚、介護、お墓…などです。
ある1組のナガハルカップルの事例をご紹介します。
良美さん(仮名、34歳)は大学時代の彼と14年もの間、お付き合いをしてきました。ゼミとサークルが同じで気が合い、長い合宿生活なども一緒に過ごしました。長期のバックパッカー旅行にも行って、いつも仲良し。良美さんは、彼と結婚して一緒に暮らすことに何の迷いも恐れもありませんでした。「お互いの嫌なところを理解している」と思い込んでいたからです。しかし、実際に結婚して生活を共にしてみると、彼は“亭主面”をし始めます。
良美さんは職場では、組織をまとめる有能なチームリーダー。結婚前の彼は対等に話し、買い物から掃除、洗濯まで何でも一緒にやっていました。「女だから」「男だから」という縛りが最も嫌いな良美さんにはピッタリだったのです。「価値観が一緒の彼」。それが“仮の姿”だと分かったのは結婚後です。
「週末、会社の同僚が遊びに来るからパーティー料理を作ってくれ」
「うちの母親の誕生日に、メッセージを付けて花を送っておいてくれないか」
「社会人として残業はしょうがないけど、それで疲れた顔をするのはやめてくれ。不愉快だ」
「月に1度はうちの実家で食事しよう」
彼は結婚という制度、夫婦という形式の固定観念から解き放たれていませんでした。彼の父母が典型的ビジネスマンと専業主婦だったということもあり、「結婚後の男性にとって、家は癒やしの場」のイメージだったようです。
良美さんは「彼が思う夫婦像に合わせることができない」と離婚を決意。結婚後、わずか半年というスピード離婚です。お互いのことを尊重して、ライフスタイルや趣味、好みを理解し合えていたとしても、自分が小さい頃から刷り込まれてきた結婚観を断ち切るのは並大抵のことではないのです。
子どもが欲しいのに…
私はセックスレス改善の専門家なので、ナガハルカップルの性の問題もひもといてみます。
「今はセックスレスだけど結婚して、子どものことを考えるようになったら復活するだろう」と思っていたら大間違いです。セックスレスのまま結婚して、その状態が改善したという報告を聞いたことはありません(あったかもしれませんが、忘れるほど少数事例)。子どもをつくるために何度か営んだとしても、目的を達成した後は元のレスカップルに戻ります。
また、ナガハルのセックスレスカップルが結婚し、いざ、子どもをつくろうと思ったら、夫に「いまさら女として見ることができない」と拒絶されたという報告は数々あります。「じゃあ、何で結婚したのよ」と聞くと「セックスレスでもよさそうだったから、子どもも欲しくないと思っていた」と言われ、返す言葉をなくした――。そんな展開を話してくれる女性に私はたくさん会っています。
妊娠・出産できる時期には限りがあります。「長くお付き合いをしてきたから、30代半ばを迎えている」という女性も多いことでしょう。自分が子どもを欲しいと思っているのなら、意思の擦り合わせは避けては通れぬ高い壁です。セックスレス状態であったならばなおのこと、子どもを望むかについて、パートナーに意思をきちんと確認するのが大事です。
結婚することで意見が一致した、しかし、パートナーは子どもを欲しいと思っていなかった…そう分かったらどうしますか? ナガハルの彼と結婚して毎晩説得するのか、それとも、子どもを望み、一緒に育ててくれる相手を探すのか。人生の大きな分岐点になります。
結婚自体がゴールではない
「長年付き合ってきたから」といっても、帰る場所が一緒になり、365日一緒にいるようになり、寝食を完全に共にするようになると、知らなかった部分が山のように出てきます。その昔、「成田離婚」という言葉が流行しました。1週間のハネムーンでも「げっ」と驚くケースがあるように、1カ月、半年、1年と一緒に暮らすうちに相手の嫌なところが目に付き、耐えられなくなるということがあるのです。
人生100年時代、仮に35歳で結婚したとして、その先の人生は365日×65年として計算すると、2万3725日も一緒にいることになります。気が遠くなる日数です。「嫌だな」と感じることを減らしておかないとイライラ老人になってしまいます。
「恋人・夫婦仲相談所」でよく聞くのは「昔はこんな人じゃなかった」という言葉です。例えば、モーニングルーティンの違いだったり、お風呂のタイミングだったり、洗濯物の干し方だったり、いびきがうるさかったりと、1、2日なら目をつぶれたことが毎日続くと大きな問題になってしまうのです。ポイントは「違いを共有して歩み寄る努力ができる相手か否か」ということです。違いを受け入れ、歩み寄る。「長年、付き合ってきたんだから分かるでしょ」は言ってはいけない言葉です。
ナガハル交際の期間中、ずっと「結婚」というゴールを目指して頑張ってきた。やがて、そのゴールを手に入れて達成感を得る。そして、次なる努力をするモチベーションが落ちる――。このパターンは避けましょう。「結婚後、どんな夫婦になりたいのか」というビジョンがなく、結婚をゴールと捉えた場合に起こり得ます。結婚自体を目標にすると、燃え尽きる可能性があるのです。
かつては私もそうでした。「この人、違うかも」と思いながらも「取りあえず結婚」という意思を優先させてしまい、傷つくことになりました。どんな人生を自分が歩みたいのか、明確なビジョンを描くとよいでしょう。パートナーが支えてくれる場合もあれば、逆に邪魔をしてくる場合もあると知っておくことです。
何を手に入れるために結婚するのか、自分に問い掛けてください。自分の幸せの形は自分にしか分かりませんし、決して人と同じではないのです。自分自身を満たすために必要なものがくっきり浮かび上がったときが、ナガハルの相手と結婚について話し合う時期です。ナガハルを終えて、新しい人生の幕開けを迎えると同時に、次なる夢を2人で話し合えますように。