DeNAのホセ・ロペス [写真=萩原孝弘]

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◆ 見せ場のない試合が突然

 DeNAが敗色濃厚だったゲームを土俵際で踏ん張り、価値ある引き分けに持ち込んだ。

 DeNAは9回まで神里和毅のソロホームランの1安打に抑えられ、1−3と2点のビハインドを追う展開だったが、ドラマはここから始まった。この試合で唯一ヒットを放っていた神里が先頭打者として打席に入ると、阪神の守護神・スアレスの直球をセンター前に運んで出塁。3番ソトと4番オースティンが倒れて万事休すかと思われたが、5番・ロペスが外角低めのスライダーをすくい上げ、起死回生の同点2ランを放った。

 試合は延長戦に入り、DeNAも守護神・三嶋一輝がマウンドへ。しかし二死走者なしから、代打の小幡竜平が内野安打と盗塁でセカンドへ。続く近本光司には安打を許して一三塁に。ここでラミレス監督がマウンドへ向かい「近本は走ってくるが気にするな。打者にフォーカスして、球種もいつも通りにやってくれ」とアドバイスを送った。

 続く島田海史にボール3となったところで申告敬遠し、打率が「.150」に満たない植田海との勝負を選択。ここでインコースのストレートが手首に当たったと植田が球審にアピールして死球判定となり押し出しかと思われた。ところがラミレス監督はリクエストを要求。長いリプレー検証の結果、バットのグリップに当たっていたとしてファール判定で試合再開となり、最後は150キロのストレートをインローに投げ切り見逃しの三振を奪った。

◆ 会心のリクエスト

 10回裏の攻撃は無得点に終わり、引き分けでゲームセット。試合後、ラミレス監督は「アメージング! 9回が始まるまで1安打。二死の状況で価値のあるホームランを打ってくれた」とロペスの一発を絶賛。リクエストについては、「150キロのボールが当たっていたら、手は骨折する。音も大きく、あのリアクションだったので」と考えたことを明かした。

 見事に判定は覆り、「グレートフィーリング! 一度失った流れがこちらに来て、三嶋がやってくれると思った」との言葉通りの展開で、「もし2位になることができたならば、(リクエストが)ターニングポイントになる」と、大きな意味を持つワンプレーだったとして、してやったりの表情を見せた。

 現在のターゲットは2位になることだが、「2位の前に3位にならなければいけない。阪神はいい野球をするので簡単な相手ではないが、明日の試合に勝つことにフォーカスして、一歩一歩進んでいければ」と先を見据えた。一方的にやられて終わりそうなゲームをドローに持ち込んだベイスターズ。ジャイアンツに3連勝し、目の前の胴上げ阻止に成功した勢いそのままに、最終目標の2位に向かって前進していく。

取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)