モーリシャス重油流出で大活躍「油吸着材」に支援金2400万円
インド洋の島国・モーリシャス沖で起きた日本の貨物船「わかしお」の重油流出事故。絶滅危惧種が数多く生息する豊かな海に約1000トンもの重油が広がり、甚大な被害が発生した。
そんななか、現地に油を吸収する「油吸着材」が提供された。開発したのは、社員数わずか12名の「エム・テックス」だ。担当者の竹ノ下友基部長は、「ナノファイバーと呼ばれる、人間の髪の毛よりさらに細い特殊な繊維を素材としています。水を吸わず、油のみ吸収する技術を開発し、昨年から販売を始めました。今回の事故で政府関係者の方々からご連絡いただき、取り急ぎ20箱分、約1トンの油を吸えるぶんをご提供しました」と明かす。
実際の商品は、フワフワの綿のような見た目をしている。水に浮いた重油は1回で大半が吸い込まれ、うっすら残る油分も2〜3回で綺麗に。水を吸わないため、桶に強めに押し込んでも反発する感覚がある。ちなみに、プラスチック素材を使っているため、火に近づけると溶けてなくなってしまう。使用後は、産業廃棄物の扱いになるという。
今後、さらに多くの「油吸着材」をモーリシャスに届けるべく、2つのクラウドファンディングが始動した。ひとつはクラファンサイト「Makuake」で始めたもので、2400万円以上の支援が集まった(すでに終了)。現在は、HP上で公開している「モーリシャス緊急支援プロジェクト」が動いているところだ。
実は、「Makuake」で募集したクラファンは、もともとモーリシャスのために開設したわけではなかったという。
「昨年、佐賀県の豪雨災害で油流出事故が起きた際、弊社の商品を19万枚ほどご提供した経緯がありました。今後も非常事態が起きた場合にお役に立てるよう、商品を生産・備蓄するための支援ページを立ち上げていたところ、今回の事故が起きたんです。それで、モーリシャス支援に目的を変更し、予想以上にたくさんのサポートをいただきました」(竹ノ下氏)
竹ノ下氏は、災害時における商品提供の難しさについても明かす。
「力になりたいし、できることはボランティアでやりたいんですが、会社としてやれることの限界もあります。佐賀の災害時には、完全に寄付でやらせていただきましたが、トータルで1億円ほどの出費でした。小さな会社ですし、同じことをもう一度やってしまうと、会社がなくなってしまう(笑)。
今回ですと、モーリシャスに送る場合、船では届くまで時間がかかります。飛行機で運べばスピードはクリアできますが、資金的な問題が大きい。だからこそ、クラウドファンディングで支援していただくと、ものすごく動きやすくなるんです」
現地で油処理にあたるNGOとも連絡を取り、直接商品を送ることも決定した。モーリシャスの環境回復に、日本の技術が大貢献しているのだ。