山本昌が読者の質問に答える! 後編

山本昌氏に聞きたいことは?」とスポルティーバのツイッターで募ったところ、多くの質問が寄せられた。前編では対戦したなかで印象に残っている打者やドラゴンズ復活の条件について語ってもらったが、後編では日本代表の監督になったら誰を選ぶのかや、データ野球についてどう思うかといった質問が寄せられ、たっぷり語ってもらった。

「山本昌が対戦したくなかった打者は?」の前編はこちら>>


新フォームで挑んだ今季、開幕から9連勝と絶好調の巨人・菅野智之

── 後編最初の質問は、大阪府「ぷーやん」さんの質問です。もし侍ジャパンの監督になったら、どんなメンバーを選びますか。

山本昌 代表となると、その時の調子も踏まえて選ぶことになりますので、あくまで暫定的なメンバーになります。

── では、まずは投手からお願いします。先発3本柱はどうなりますか。

山本昌 先発はストレートに力があり、試合をつくれる選手を選びたいです。そう考えると、必然的に菅野智之(巨人)を軸に計算していくことになります。崩れるイメージが湧かない。千賀滉大(ソフトバンク)は外国人のバッターから三振が取れるイメージある。力勝負できるピッチャーですよね。あと左をひとりは入れておきたいので、大野雄大(中日)を選出します。大野のストレートも力があって、外国人相手にも十分通用すると思います。左の強打者が多いチームに大野をぶつけたいですね。先発はこの3人を中心に回していくことになります。

── リリーフに関してはどうですか。

山本昌 若手だと山本由伸(オリックス)がすばらしい。三振が取れる投手なので、彼はあえてクローザーで使いたいですよね。中継ぎでは、アンダーハンドの高橋礼(ソフトバンク)を入れておきたい。国際試合では彼のような変則投手は絶対に必要だと思いますし、ロングリリーフもできる。必ず戦力になってくれるはずです。あとは経験豊富な森唯斗(ソフトバンク)も頼りになると思います。左では、最近少し調子を落としていますが、福敬登(ふく・ひろと/中日)もボールに力があって、右打者も苦にしないから使い勝手がいい。あとはオリックスの田嶋大樹もほしいですね。彼のスライダーは慣れるまで時間がかかる。短期決戦では大いに力を発揮してくれそうです。

── 野手はどうなりますか。ポジションごとにお聞きしたいと思います。まずはキャッチャーからお願いします。

山本昌 国際試合になると捕手でも打力がある選手がゴロゴロいるので、打線の厚みという意味でも正捕手は森友哉(西武)に期待したいですね。個人的には小林誠司(巨人)も気になる存在です。リードで厳しい指摘を受けることもありますが、僕は彼の配球を評価しています。投手を気持ちよく投げさせることができる捕手で、そのなかで打者の狙いを外したり、すごくバランスのいいキャッチャーだと思います。代表レベルの投手だと、小林のリードはより生きてくるんじゃないかと思います。肩もいいですし、抑え捕手的な存在としてメンバーに入れておきたいですね。

── ファーストはどうでしょうか。

山本昌 村上宗隆(ヤクルト)を起用したいです。メジャーの名だたる打者にも引けをとらないポテンシャルがありますし、あのパワーは魅力的。まだ経験が浅いので外国人特有のムービングボールへの対応に苦労すると思いますが、レギュラーとして使っていきたいですね。

── セカンドはいい選手がたくさんいます。

山本昌 本来であれば山田哲人(ヤクルト)だと思うのですが、現時点だと浅村栄斗(楽天)を推したいですね。勝負強さがあり、しかもパンチ力もある。国際試合の経験もありますし、状況に応じたバッティングもできる。レベルの高い選手が揃っているポジションですが、総合的に見て浅村がいいと思います。

── 次にサードですが、どの選手を選出しますか。

山本昌 バッティングを重視するなら岡本和真(巨人)が筆頭ですが、守備面も考慮して高橋周平(中日)をレギュラーに据えたいです。サードの守備なら12球団ナンバーワンじゃないでしょうか。長打力はそこまであるタイプではないですが、昨年くらいからバットコントロールが非常にうまくなった。とくに変化球打ちは秀逸で、今のバッティングなら初見の投手が相手でも結果を残せると思います。

── ショートも代表クラスの選手が多く、選ぶのが難しいと思います。

山本昌 守備だけなら京田陽太(中日)ですが、総合力でいえば坂本勇人(巨人)になるでしょうね。経験も豊富ですし。ショートは守備での貢献も求められるポジションですので、終盤でリードしている場面になれば京田をはじめ、今宮健太(ソフトバンク)、源田壮亮(西武)といった守備力に定評のある選手を起用するのも面白いと思います。

── 外野手3人は誰を選ばれますか。

山本昌 今回のメンバーで、鈴木誠也(広島)を打線の軸にしたいと考えていました。今はどうしても左の好打者が多いのですが、鈴木のように右打者で長打力と技術力を兼ね備えたバッターは希少です。不動の4番として頑張ってもらいたいです。彼の場合は守備もいいし、足もある。絶対に外せない選手です。

── あとふたりは誰になりますか。

山本昌 センターはギータ(柳田悠岐/ソフトバンク)でしょうね。あの活躍をみれば、もはや説明不要でしょう。レフトは近藤健介(日本ハム)と吉田正尚(オリックス)の争いになってくると思います。近藤にはほかの選手が真似できない技術がありますし、吉田のあのフルスイングは魅力です。その日の調子を見ながら使い分けたいですね。

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── 国際大会はDH制が採用されます。

山本昌 一発がある山川穂高(西武)に任せたいですね。打順はクリーンアップというより、下位に置きたい。そのほうが相手は怖いと思います。あとは経験値とチームの精神的支柱として内川を入れておきたい。ここぞという場面での代打として、彼の力は必要になるはずです。

── 続いての質問は、神奈川の「Pisces」さんからです。現代の野球はデータ分析が盛んになっていますが、現役時代にデータを活用したり、有効だなと思ったことはありますか。

山本昌 現役を引退してから5年経ちましたが、その期間、どれだけ変わっているのかはわかりません。ただ、投手というのはスコアラーからもらったデータをもとに、相手チームの状態や調子のいい打者というのはチェックします。そのなかで僕がとくに意識していたのが、初球を振ってくる打者かどうかです。もちろん苦手なコースや球種はある程度把握していましが、基本は捕手に任せていました。

── 初球を振ってくる打者と、そうではない打者では意識が変わってくるものですか。

山本昌 たとえば、高橋由伸はストライクゾーンであればどんな球種でも振ってきます。純粋に来たボールを振ってくるのですが、しっかりアジャストしてくる。そういうところが天才と呼ばれる所以(ゆえん)なのでしょうね。だから、初球の入り方はすごく慎重になりました。コントロールミスは許されないですから。

── 逆に、初球から振ってこない打者はいましたか。

山本昌 金本知憲ですね。初球はほぼ見逃していたというか、追い込まれるまでは手を出さない。だから2ストライクまでは簡単にいくのですが、そこから打ちとるまでが大変でした。あえて相手投手のウイニングショットを狙ってダメージを与えるということも、金本は考えていたと思います。

── いま現役のプレーヤーで、対戦時にデータを参考にした選手はいましたか。

山本昌 現役の選手だと、巨人の坂本には絶対にインローは投げないとか、そういうデータは参考にしていました。ただ、現役を長くやっていると相手の苦手なコース、得意なコースはお互いわかっているんですよ。そのなかでどうやって打ちとる確率を上げていくのかということを考えていました。

── データも大事だけど、ピッチングの技術や感性も大事になってくると。

山本昌 僕はコントロールピッチャーですから、制球には自信がありました。そこで決め球になる変化球が3つあって、その精度を上げることで投球に幅を持たせていました。相手に的を絞らせないというのが、僕のピッチングスタイルでした。二軍から上がってきた投手にありがちなのは、ストレートとスライダーでしかカウントを取れず、結果打たれてしまう。つまり、コントロールが伴わないとデータも意味を持ちません。

── 中村武志さんや谷繁元信さんといった名捕手とバッテリーを組んできましたが、それぞれリードに特徴はありましたか。

山本昌 中村は結構強気なリードで、投手の投げたい球を選ぶタイプでした。追い込んだら意外とストレート勝負が多かった印象です。谷繁は試合序盤にエサをまいて、終盤に生きるような配球をするタイプでした。もっといえば、3連戦、シーズンを考えてリードしていた。だから、序盤は「なんでこんな配球なの?」と疑問に思うことがあるのですが、終盤になると「なるほど」となる。それに終盤になるとアウトローの割合が圧倒的に増えるのも谷繁の特徴でした。

── キャッチャーのサインに首を振ることはありましたか。

山本昌 データや数字については絶対的にキャッチャーのほうが頭に入っているわけで、ピッチャーよりも深く考えている。だから、リードに関して首を振ることはほとんどなかったですし、配球の組み立てについては一任していました。僕はサインどおりに投げるだけだったので楽でした。