元号が令和になってから、世の中がなんとなくあわただしい。新型コロナウイルスの問題もその一つだが、この先どうなるのだろうという不安もよぎる、今日この頃だ。こんな時、人は過去を振り返るのかもしれない。

平成という時代も良かったが、その前の昭和を懐かしむ人もなぜか多いようだ。まだ日本が貧しくて、がむしゃらに働いていた頃の、昭和のことである。ただやたら元気だったかもしれない。

そんな昭和ノスタルジーを想起させる写真が、2020年8月10日にツイッターに投稿されて、いま話題になっている。

「昭和要素のごった煮感が凄まじい」というコメントどおり、昭和なエネルギーが満ち満ちた建物である。外壁には、ぎっしりホーロー引きの看板が貼られている。大村崑さんのオロナミンCがある。ライオンや金鳥の蚊取り線香も見える。このツイートには、3万5000を超える「いいね」が付けられ、今も拡散中だ(8月12日夕現在)。

ツイッターには、「懐かしい看板たちですね」「いいなぁこういう雰囲気」「昭和よくばりセットかな」などといった声が寄せられている。

投稿者の胡麻油(@hanabi4732)さんに聞くと、これは兵庫県赤穂市にある「赤穂玩具博物館」というところだという。「昭和を感じさせる様々な看板が並んでる外観を観るだけでも価値があると思います」と答えてくれた。

いったい何がきっかけで、こんな博物館が生まれたのだろう?

Jタウンネット編集部は、「赤穂玩具博物館」鈴原義経館長に取材した。

平成生まれにも人気


赤穂玩具博物館外観。 胡麻油(@hanabi4732)さんのツイートより

Jタウンネット編集部に、鈴原館長はこう答えた。

「開館したのは2004年ですが、それは玩具コレクターの北原照久さんとの出会いがきっかけでした。ブリキのおもちゃを集めていたのですが、北原さんに啓発され、本格的にコレクションをスタートしました」

北原照久さんとは、有名なブリキのおもちゃコレクターで、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」にも鑑定士として出演している人物だ。「横浜ブリキのおもちゃ博物館」(横浜市)、「河口湖北原ミュージアム」(山梨県南都留郡)などの館長を務め、そこで自らのコレクションを展示している。

「赤穂玩具博物館」の鈴原館長は、展示のために大正末期建築の民家を2軒入手したという。木製の陳列棚を手配して、その中にコレクションを並べていった。いちばん古いものは、大正時代のブリキのおもちゃだというが、主に、1950年代から70年代の、セルロイド、ソフトビニール製のおもちゃが1万点以上納められている。

収蔵品は増える一方だという。「高齢化社会になってきたせいか、終活というんですか、断捨離をしたい人も多いようです。思いがけない貴重な品物を手に入れるチャンスはけっこうあるのです」と鈴原館長。

開館以来、3万人近い来場者を迎えた。昭和世代の人が多いのはもちろんだが、最近は平成生まれと思われる若い女性も増えてきているそうだ。彼女たちは、一様にこう言うらしい。

「エモい!」

「最近の流行語なんですか? ま、良いことだと思いますが...」と、鈴原館長は苦笑する。