●“海外に行きたい”夢に向かって一念発起

アメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に出場し、角刈りのカツラ&星条旗模様の際どい水着姿で爆笑をさらうなど、独自のお笑い道を切り開いている芸人のゆりやんレトリィバァ。最近、テレビ番組で30キロの減量成功を明かしたことも話題となっているが、お笑い、そして見た目についても「“こうならなあかん”とか、そこには正解も不正解もない。今、そう思える環境にいることができている」と胸の内を明かす。

さらに、「芸人としては、もしかしたら太っていた方がウケやすいかもしれない。でもそこに向けて頑張ったということが自信になって、“私は私です”と言えるようになる気がする」とにっこり。チャレンジ精神あふれるゆりやんが、オーディションに挑んだ扮装で“自分らしく生きる楽しさ”を語った。



歌やダンスの正統派から、手品や仮装、一発芸などの変わり種パフォーマンスまで、ありとあらゆる才能が集結し、賞金100万ドルをかけて競い合う『アメリカズ・ゴット・タレント』。ゆりやんは2019年6月の放送回に出場し、堂々たるパフォーマンスで会場を沸かせた。同番組が、8月2日21時よりFOXチャンネルにて日本初放送される。

「どんなジャンルでも関係なく、誰でも出られるのがこの番組の魅力。誰にでもチャンスがあるし、すごく夢のある舞台」と本番組の魅力を語るゆりやん。トライしたきっかけは、「もともと“アメリカに行きたい”という憧れがあったんですが、芸人になっていつの間にかそれを諦めてしまっていたんです。でも考えてみたら、ネタだけじゃなく、なんでも仕事にできるのが芸人。それだったら海外にも行って、芸人をやってみたいと思っていました」と小さな頃からの夢でもあったそう。

さらに背中を押してくれたのが、ピースの綾部祐二や渡辺直美ら、日本を飛び出して挑戦し始めた先輩芸人たち。「綾部さんも直美さんも日本でお忙しく仕事をされているのに、日本にとどまらず、海外に行かれた。すごいなと思ったんです。私はずっと“海外に行きたい”と言っているだけで、何も行動していないなとも思いました。言っているだけの人になりたくないし、道を切り開いてくださっている先輩方がいるのに、何もしないというのは嫌やなと思いました」と一念発起。「調べていたらちょうど『アメリカズ・ゴット・タレント』のエントリーが始まっていて。急いでエントリーしました」。

○■角刈りのカツラ&星条旗模様の水着を選んだ理由

ステージでは角刈りのカツラ、大胆に露出した星条旗模様の水着姿で不思議なダンスを披露。ゆりやんワールド全開で、パフォーマンス後には審査員と流暢な英語で笑いいっぱいのやり取りを繰り広げた。言葉も文化も違う、異国の地で勝負するにあたって、ネタはどのように決めたのだろうか。

「エントリーの際には、コント風のピアノのネタを動画で送ったんです。でも英語もあまりできない日本人がコントの説明をしたとしても、“何をやっているんですか?”という感じになりそうだなと思って。どうしようかなと思っているときに、日本でこの水着とカツラでネタをやったことがあって。ウケている、ウケていないというよりも、それをやっている自分がとても楽しかった。しかも見た目だけで言葉はいらないし、何をやっているかがひと目でわかる。これにしようと思いました」。

会場の反応については、「笑ってくれていましたし、びっくりしてくれていましたし、目を覆っている人もいました」とゆりやん。「番組の練習会場でこの衣装に着替えたら、みんなが『面白い』『写真、撮って』と言ってくれて。意味不明なものは、世界共通で意味不明なんだなと思いました(笑)。でもこの水着、オシャレなお店で買って、普通に着たらめちゃくちゃオシャレなんですよ! 何かの映画の予告編でポールダンサーのような方がこの水着を着ていましたから」と大笑い。

「今年の頭、スタンドアップコメディに挑戦しようと思って、L.Aに行ったんです。出場するためには抽選をしなくてはいけなかったんですが、抽選に外れてしまって……。残念に思いながらご飯を食べに行ったら、そこに小栗旬さんがいらっしゃったんです! ご挨拶したら、初めてお会いしたのに『一緒にご飯を食べましょう』と気さくに言ってくださって。さらに『アメリカの番組、観ました。それまでどういう面白さの人なんだろうと思っていたけれど、あれを観て好きになりました』と言ってくださった。アメリカで現地の方が声をかけてくれることもあって、本当にうれしかったですね」とたくさんの出会いも手にした。

●“こうならなあかん”の考え捨て自分らしさ大切に



異国の地でのチャレンジを経て、自身の“やりたい”と思うお笑いについても、改めて考えを巡らせたという。ゆりやんは「ピン芸人になる前は、ゴリゴリの漫才師になりたかったんです。でもピン芸人になって、“これは人には伝わらないんじゃないか”“もっとみんなが笑ってくれるようにしないとダメなんじゃないか”と悩んだりもした」と告白。

「でも友近さんをはじめとする先輩方にネタを見ていただいたり、一緒にお仕事をさせていただくと、みなさん、めちゃくちゃ笑ってくれるんです。“こうならなあかん”とか、そこには正解も不正解もないと思えたり、自分が面白いと思うことをやったらいいんじゃないかと思えるような環境に今、いさせてもらっています。だからといって、自分が面白いと思うことを、“これが面白いんですよ”と押し付けようとは思っていません。しょうもないことをやって、“でもゆりやんだからな”と笑ってもらえるようになったら、すごくうれしい。“みんながこうやから、私もこうします”ではなく、これでもか、これでもかと自分が面白いと思うことをやり続けていくうちに、“私はこういう人なんだ”とわかってもらって、その上で滑る分には、それも面白いのかなと思っています」と自分らしさを認めてもらえることが、何よりの喜びだと話す。

自分らしい笑いに向かって突き進む上では、先輩芸人の友近は「心強い存在」だ。「友近さんはいつも、『いいんですよ、あなたはそれで』と言ってくださる。友近さんって、もしネタで何をやっているかわからなかったとしても、みなさんが“友近さんやからな”と思うじゃないですか。それってすごいことですよね。そうなれたらすごく楽しい」。

○■「自分を大事に」“頑張った自分”の存在が自信へと変化

最近は、30キロの減量に成功したことを明かして話題を呼んだ。頑張った自分がいれば、自分らしさを受け入れられると、ゆりやんは語る。

「太っていた方が、芸人としてはウケやすいのかもしれません」と素直な心情を吐露しつつ、「でも見た目も関係なく、すべてを取っ払って、そこに向けて頑張ったということが、自信になって“私は私です”と言えるようになる気がする」と柔らかな笑顔を見せ、「私はザック・エフロンが大好きなんですが、もし美容院の予約を入れていた日にザックから『これから会おうよ』と言われたとしたら、これまでの私だったら会うための時間を作ったと思います。でも今なら『ごめんなさい。髪の毛を切りに行くので』と言える。『メガネをかけた方がかわいい』と言われたら、メガネを買いに行っていたと思うけれど、今なら『私、目がめっちゃいいので、かけへん』と言えるようになってきている気がします。自分を大事にしないといけないなと思っています」と熱弁する。

インタビュー中はもちろん、その前後も現場にいる一人ひとりに「ありがとうございます」と声をかけながら、終始、みんなを笑わせていたゆりやん。自分と同じく、周囲をも大事にするその姿は、人としての輝きにあふれていた。

















ゆりやんレトリィバァ

1990年11月1日生まれ、奈良県吉野郡出身。NSC大阪校の35期生で首席卒業を果たした。2015年には『R-1ぐらんぷり2015』決勝に進出。2017年、第1回『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝。2019年6月、アメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に出演し、日本のみならず、アメリカの観客を沸かせた。