オムニチャネル小売りではいま、劇的な革命が起きている。

店舗は何カ月ものあいだ閉鎖され、各ブランドが生き残りをかけてeコマースへと焦点をシフトさせているなかで、実店舗とeコマースの関係を再認識する機会がめぐってきた。アーバン・ディケイ(Urban Decay)のようなブランドが、オンラインと実店舗の両方でAR(拡張現実)を積極的に採り入れる一方、グロッシアー(Glossier)の体験は、店の営業再開はいつになるかわからないものの、実店舗での人間とのつながりの大切さを確認するものとなった。ビューティブランドはほぼすべて、デジタルeコマースはよりリッチな体験を提供する必要があると同意しているが、実店舗もまた、店で買い物をしてもらうための魅力的な理由を、顧客に提供しなければならない。

今回の記事では、8つのブランドの創設者や幹部に、オムニチャネル小売りの未来についてのそれぞれの考えを語ってもらった。なお、読みやすさを考慮して、内容を少しまとめて編集している。

小売は調達の場を超えた存在に

「我々は、この瞬間の、そして今後のオフライン体験の再考に取り組んでおり、喜びを呼び起こし、人々に安全を提供するための新しい方法を見つけようと一生懸命努力している。我々は創業当初からデジタルファーストの企業であり、『ノーマル』のときでさえ、我が社の販売の大多数はオンラインで行われている。これは小売の役割を減退させるものではなく、それを高めるものだと思っている。ビューティ製品をオンラインで買うことが標準となり、そして、現在の状況がそうしたトレンドを加速することは間違いなく、小売は単なる調達の場を超えた存在になる。それは人間のつながりの場になる」――グロッシアー創業者で最高経営責任者(CEO)のエミリー・ワイス氏

よりリッチなデジタル体験を優先

「我々が見続けている最大のオムニチャネルの進化のうちのひとつは、通常は実店舗で見られる『人間的なふれあい』体験のデジタル化へのフォーカスだ。物理的なマーチャンダイズや、顧客を誘導する店舗スタッフの専門知識がない場合、製品教育や専門的チュートリアル、コミュニティ形成をオンラインですることが非常に重要になる。強化された安全確保のための実施要項とアップデートされた手順を用意して、実店舗が営業を再開することになったとしても、スキンアイスランド(Skyn Iceland)も、ビューティ業界のほかの多くのブランドも、取引や新製品の発売だけにとどまらない、よりリッチなデジタル体験を優先することになると、私は予測する」――スキンアイスランドCEOのケリー・マーティン氏

バーチャルに注力できるチャンス

「これは、現時点では目新しい、バーチャルな試用機能に注力することに開発者が集中できるチャンスだ。そうした機能はいまでも使って楽しいものだが、助言や芸術的効果を次のレベルに進化した双方向のインタラクティブなツールとなる必要がある。顧客は、最近購入した現実世界の製品のコピーをアプリでも手に入れ、ビデオ会議のフィルター用にバーチャルでもそれを使えるようになるかもしれない。小売店は、印刷された色見本カードを顧客に送り、顧客がオンライン予約をしたときに、デジタルツールで標準色との差を読み取って、それを肌に投影し、より適切にマッチするファンデーションをオンラインで作れるかもしれない。実店舗でのバーチャルな試用は、店舗で色を試す場となり、肌に選んだ色合いを投影し、顧客が正しい色をチョイスし、カバレッジ(カバー力)や肌への効果を評価する助けになるだろう」――アーバン・ディケイ最高クリエイティブ責任者(CCO)のウェンデ・ゾムニール氏

規模が小さく、機転が利く地域の店舗へ

「デジタルチャネルは製品提供を減らす原因となり、上位の販売者だけが不釣り合いな勝利を手にすることにつながる。携帯電話のホーム画面上で顧客がみられる製品数は5つだけで、その5つが販売を独占してしまう。空港の保安検査場を通るのと同じくらい単調なものならわざわざ買いに行く価値はないと顧客に思われてしまうので、人とのつながりを減らし、製品に触れる機会をなくしてしまった大手ストアは失敗するだろう。だが、規模が小さく、機転が利く地域の店舗は、個人的かつ物理的なつながりや接触を求める顧客の支持を得、近隣地域の復興にもつながる」――ダーマロジカ(Dermalogica)CEOのアウレリアン・リス氏

小売店はショールームのような存在に

「現実世界の環境で特定の製品を実際に見て、あとからオンラインで買うことを選ぶ人もいる。我々が新しい暮らし方に適応していく過程で、小売店はショールームのような存在となり、在庫はどこかほかの場所で保管し、ショッピングをより感覚的で安全なものにすることを検討しなければならないだろう」――イリア(Ilia)創業者のサーシャ・プラブシッチ氏

ドットコム・ビジネスが生き残りの鍵

「オムニチャネルは、コロナ危機後のビューティ業界全体を変えてしまうだろう。ドットコム・ビジネスが生き残りの鍵になると証明されており、コロナ危機後には多くがここに焦点を当ててくると思う。効率的か、ユーザーが利用しやすいページか、発送や割引のタイミングは適切かといったことが、競争を勝ち抜くために必要不可欠な要素となるだろう。今後数週間から数カ月のトラフィックがどうなるか、興味を持って見ている。製品がどのように試され、店舗内のイベントやデモンストレーションがどのように継続されていくのか、その変化を見ることになるだろう」――ボウシャ(Boscia)共同創業者のラン・ペリンキー氏

店舗を「単なる取引の場所」以上に

「店舗が単なる取引の場所なら、顧客は、家から出ずにオンラインで手に入れられるとわかっている。小売業者は、店舗限定製品や発売前の製品への先行アクセスなどのインセンティブに加え、優れた製品教育と発見体験を提供する必要があるだろう。我々は、セフォラ(Sephora)とともに、クライアント専用の顔チャートを使って、彼らが自分のために特別に選ばれた製品の使い方を学ぶ助けをするような楽しいプランを通して、店内体験をパーソナライズするつもりでいる。動画コンテンツやアプリケーションのチュートリアル、ライブストリーム、デジタルな製品発売キャンペーンを増やすことが重要になるだろう。消費者とのコラボレーションや、ソーシャルやドットコムを通じたブランドとオーディエンスとのつながりを強調することが、今まで以上に重要になるとも思う」――ローレス・ビューティ(Lawless Beauty)創業者のアニー・ローレス氏

シームレスなオムニチャネル体験を

「ビューティ業界は、完全に統合されたシームレスなオムニチャネル体験をタッチポイント全体で提供するよう進化しなければならないだろう。ブランドは、コミュニティと密接なつながりを維持し、消費者の生活に自社が及ぼすユニークな大きな力や自社が果たす役割に焦点を絞り、ビジネスモデルを合理化し、機敏かつリアルタイムに適用していく必要がある」――ミルク・メイクアップ(Milk Makeup)CEOのティム・クーリカン氏

Emma Sandler(原文 / 訳:ガリレオ)