英・公共テレビ局チャンネル4(Channel 4)は広告ターゲティング力の強化を図り、自社ストリーミングプラットフォーム、オール4(All 4)においてオーディエンスを狙い撃つ3つの新ツールを導入した。サードパーティクッキーが消え去ろうとするなか、データプライバシーに慎重な広告主の恐怖の軽減が目的だ。

新ツールの1つ、ブランドマッチ(Brandmatch)は、パートナーのデータプラットフォームプロバイダー、インフォサム(Infosum)の中立的プラットフォームを介し、オール4が有する登録ユーザー2300万人のファーストパーティデータに広告主をアクセスさせるものだ。このいわゆるデータクリーンルームは当該情報をほかのどことも共有しない。つまり、広告主がクリーンルームに自身の顧客データを入れ、チャンネル4のデータとオーバーレイすることで、ターゲットオーディエンスを絞り込むことが間もなく可能になる。もしもマッチするデータが法外に少ない場合は、パートナーのメディアリズミクス(Mediarithmics)を介し、オール4はオーディエンスセグメントをターゲットオーディエンスに合わせて作成し直すこともできる。同社が1年を費やして開発したこのツールは、すでに6つの顧客が利用している。

「我々の顧客の多くは貴重なファーストパーティデータを豊富に持っている。その一方で、自身のデータセットと抵触してもバイイングを行なうべき、ごく限定的な、しかし明らかに拡張性の高いプラットフォームが存在する、Facebookもそうだ」と、チャンネル4のデジタル&パートナーシップイノベーション部門を率いるジョナサンズ・ルイス氏は指摘する。

テレグラフ(The Telegraph)やイミディエイト・メディア(Immediate Media) といったパブリッシャーも、ファーストパーティデータのオーバーレイを売りにして広告主を呼び込んでいる。加速するこの動きの背景にあるのが、Google ChromeによるサードパーティCookieのサポート打ち切りの発表だ。

最短10日で実施が可能

チャンネル4は以前からオーディエンスに詳細な情報を登録させており、同定にサードパーティCookieは利用してこなかった。ただ、これまでは独自のファーストパーティデータに基づいてオーディエンスセグメントを作成していたが、ルイス氏によれば、ターゲティングの選択肢が限られていた。6000人のヘビ−ユーザーを美容好きやDIY狂といったセグメントに分類するビヘイビオラル(行動学的属性)や、コメディやドキュメンタリーといったジャンルに基づくコンテクスチャル(文脈)ターゲティングはその典型例だ。

だがこれで、チャンネル4は広告主とファーストパーティデータ戦略を協議でき、スコープの拡大とビジネスディールの価値の向上も狙えることになる。またこれは、VODへの広告出稿になじみがなく、通常はテックプラットフォームに広告を出していた新規クライアントも惹き付けていると、ルイス氏は語る。

両者のファーストパーティデータプールをロックし、マッチしたもののみを提示するインフォサムのプラットフォームの利点のひとつは、迅速性だ。放送局およびブランド間のセカンドパーティデータパートナーシップ/セントラライズドデータプールには、従来、コンプライアンスおよび諸規制のクリアに、数年とは言わないが、数カ月を要する。一方、両者のデータを別個にしておければ、不適切なデータ管理のリスクを切り離すことができ、管理当局の厳しい監視の目からも自由になれるのだ。キャンペーンも現在のような半年単位ではなく、10日や20日といった短期間で行なえると、インフォサムのセールス部門VP、スチュアート・コールマン氏は述べる。

「企業の別にかかわらず、データが社を離れた途端、プロセスの速度は一気に落ちる」と、電通イージスのオーディオビジュアルプロダクトパートナー、リチャード・ブラント氏は指摘する。「しかし、これなら手早く進められる。[チャンネル4が]データマッチを速くできるほど、生産性も上げられる。ただし、いまはまだPoC(概念実証)的なものの気はするが」。

GDPRに完全に即した形

スカイ(Sky)やITVといった英民間放送事業者はチャンネル4に先んじ、それぞれ独自のプロダクト、アドスマート(AdSmart)とプラネットV(Planet V)(後者はまだ市場に出ていない)を開発し、ターゲティング力の向上に乗りだしていた。だが、クリーンルームへのデータ貯蔵というファーストパーティデータ戦略はそれらを上回るものであり、時機を待ったことがチャンネル4の有利に働いたのは間違いない。

「これなら顧客の自信を深められる」とエージェンシー、トータル・メディア(Total Media)のブロードキャスト部門トップ、ミヒア・ハリア・シャー氏は語る。同社は昨年、ある広告に触れた家庭がその商品を実際に買ったか否かを確かめるため、顧客のファーストパーティデータとある放送局のそれとのオーバーレイを求められたという。

「ただ、そのクライアントはオーバーレイの手法に満足していなかった」と、ハリア・シャー氏は指摘する。「GDPRに完全に即した形でそれができるのは、クライアントにとって非常に魅力的だ」。

大半のエージェンシーは依然、サードパーティCookieに大いに依存している。アクセス自体も、フリークエンシーや効果測定、アトリビューション分析といった、それを介して入手できるデータも然りだ。しかし、残り時間は刻々と少なくなっている。

「サードパーティに依存するソリューションの圧倒的大多数は、2020年末までに消滅するだろう。多くのユーザーがプライバシーの管理に対してより意識的になり、Cookieの存在価値が下落するからだ」と、コールマン氏は語る。「すでに代替ソリューションの時代が来ている」。

「いまだ決定的なものがない」

メディア業界は依然、サードパーティCookie亡き後の世界にふさわしいソリューションを探しているが、いわゆる特効薬はない。放送事業者らはウォールドガーデンを築いており、バイヤーにとっては厳しい状況だ。

「スカイやITVでもデータマッチングはやろうと思えばできたが、オーバーラップはどうだ?」と、ブラント氏は締めくくる。「同じことは異なるDSPを利用する方法にも言える――プラットフォームをまたいでのフリークエンシーマネジメント能力については、いまだ決定的なものがない」。

LUCINDA SOUTHERN(原文 / 訳:SI Japan)