安倍総理へ…盟友・田原総一朗の直言「有事の首相の器ではない」
通算在職日数が憲政史上最長となり、“一強” として君臨し続けている安倍晋三首相(65)。だが、新型コロナウイルスの危機に直面し、その “最強政権” に動揺が続いている。“アベノマスク” 配布や、特別定額給付金をめぐる迷走ぶり、検察庁法改正問題などに、国民の不信感が高まっている。
さすがに、これまで政権を擁護してきた “盟友” たちからも、手厳しい声が上がっている。本誌は今回、ジャーナリストの田原総一朗氏(86)に、率直な声を聞いた。
田原氏は、安倍首相と面談を重ね、“知恵” を授けてきた “ご意見番”。その田原氏が、安倍首相は「有事の首相の器ではない」と、舌鋒鋭く切り捨てた。
「いまの世の中は、新型コロナウイルスと全人類が戦っているようなもので、その意味では “有事” なんです。でも安倍さんには、その意識がない。閣僚たちも、そう。だから緊急事態宣言にしろ、すべて対応が遅れた。
戦後の日本は、“戦争をしない国” になっているが、本末転倒で、何よりも “有事を作らない” ことが最優先になってしまっている」
緊急事態宣言が出された直後の4月10日、田原氏は官邸に乗り込み、安倍首相に「欧米に比べて、なぜ宣言がこれほど遅くなったのか」と尋ねた。
「安倍さんは、こう言った。『宣言を出すことに、ほとんどの閣僚が反対していたんです』とね。というのも、1100兆円もの国債を抱える日本の財政事情は、先進国でも最悪のレベル。
『ただでさえ、数年後には破綻するかもしれないのに、このうえ緊急事態宣言を出すことで100兆円以上のお金が必要になれば、財政破綻が早まるだけだ』との懸念が、政権内にあったというわけです。
でも、それは “平時の発想”。いまは有事なのだから、もっと思い切った考え方をしないといけない。安倍さん自身も、世の中の様子を見ていて、ようやくそれに気づいた。安倍さんを筆頭に、政権の閣僚たちは皆、危機感が足りない」
では、“有事の首相” に求められる資質とはなんなのか。
「強力なリーダーシップです。安倍さんには、あまりない。彼は非常に素直な人だから、まわりの言うことはよく聞く。
欧米や中国・韓国では、外出制限には罰則規定があるのに、日本では、あくまで自粛を要請するだけ。わが国の緊急事態宣言は、きわめて中途半端なものになった。
でも、日本では『基本的人権は不可侵だ』という考え方が強いから、そうなったと言える。自民党の中だけじゃなくて、国全体で『安全のためには、基本的人権を侵してもいいという意見が相当強まっている』と、安倍さんは言った。基本的人権を尊重するのは、バランス感覚があっていいと思う。
でも、リーダーとして方向性を決然と示す力には欠けている。戦後日本で、強力なリーダーシップを発揮した首相といえば、田中角栄・中曽根康弘・小泉純一郎の3人だけ。だが、そういう人を、自民党は簡単に総裁にしない。下手をすると独裁政治を生むから。
森友、加計、桜を見る会と、次々とスキャンダルが起きた。でも、野党が弱いから、自民党は高を括ったまま。党内も、安倍さんのイエスマンばかりだ。かつての自民党なら、いまの安倍さんに、党内から『もう辞めろ』と声が上がっているね。
岸信介には池田勇人、田中角栄には福田赳夫というふうに、総理総裁にはライバルがいたけれど、安倍さんにはそうした人がいない。ただ、安倍さんが悪いというよりも、日本の国の構造そのものに問題がある。これを根底から変えていかなくちゃいけない」
たはらそういちろう
1934年滋賀県生まれ。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)の司会者として、テレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。『激論!クロスファイア』(BS朝日)にも出演中だ
(週刊FLASH 2020年6月2日号)