誰が何のために? 三重の公園にそびえ立つ、巨大な「牛乳パック」の謎を追う
みなさん、巨像はお好きだろうか。
筆者は大好きである。自分よりも何倍も大きいオブジェを見るとワクワクしてくるのだ。中でも、その土地ならではのシンボルを巨大化させたモニュメントは最高だ。旅先でそんな像を見つけられれば、「この辺りではこんなものが愛されているのか...」とその土地をより深く知るきっかけにもなる。
三重県度会郡大紀町にある大紀公園に堂々とそびえ立つのも、そんなご当地モニュメントのひとつ。高さ4メートルの「大内山牛乳」の牛乳パックだ。
手前のペットボトルと比較すると大きさがよくわかる(大内山酪農協同組合提供)
「大内山牛乳」とはいったい何?そう思った読者も多いだろう。
Jタウンネット編集部は2020年4月17日、この牛乳の製造・販売を行う大内山酪農協同組合を取材した。
三重県民のソウルドリンクらしい
大内山酪農協同組合は、巨大な牛乳パックのモニュメントがある大紀公園から、車で10分ほどの場所にある。
営業担当者によると、大内山牛乳は組合に加入する三重県下の21戸(20年4月現在)の酪農家が生産した生乳のみを使用した牛乳。生産者の顔が見える産直商品として、三重県だけでなく奈良・大阪・和歌山の生協とも40年以上の取引があるという。
特に地元・三重県では広く愛されているようで、
「地元の牛乳としてご愛顧頂き、宅配や量販店で販売。また、学校給食用牛乳として三重県内の約400校の学校に供給しています」
とのこと。その言葉通り、三重県民にとってはかなり馴染み深い商品らしく、ツイッターで「大内山牛乳」を検索してみると、
「大内山牛乳一滴は三重県民の血一滴」
「ちょっと贅沢したい時三重県民は大内山牛乳を買うのだ!」
「大内山牛乳は本当にかわいくて大好き 5000Lのモニュメントが作られるほど三重県民に愛されている」
「大内山牛乳って三重県だけなの!?」
などの投稿が見つかった。
味のみならず、パッケージも愛されているようで、モニュメントでも1000ミリリットルパックのデザインを忠実に再現。ただし、容量表示は5000リットルになり、「要冷蔵」などと表記される部分には、組合の電話番号とウェブサイトのURLが記載されている。
ちなみに、反対側に回り込むと、モニュメントは組合が販売するコーヒー牛乳「大内山コーヒー」に。像の2面には牛乳、もう2面にはコーヒー牛乳のパッケージが描かれているのだ。
組合の担当者によると、実はこのモニュメントは可動式で、180度回転するのだが、実際に動かしたことはないそうだ。
反対側はコーヒー牛乳(大内山酪農協同組合提供)
町長の発案で巨大化
三重県畜産協会のウェブサイトによると、モニュメントは2011年6月に完成した。
巨大な牛乳パックを作ろうと思いついたのは、大紀町の町長だったという。設置の目的は、町を代表する産品である大内山牛乳を、多くの人の目に止まる場所でアピールすること。
「公園の建設予定地は、高速道路と幹線道路が接続するこの町の交通の要所で、交通量も最も多いところ、そこに町を大々的にPRする広告施設を併設する。
ただ、一度作ったら長期間代り映えのしない看板ではすぐに飽きられてしまう。常に変化を持たせ人々の注目を持続できるものにしたい。
そこで、公園内に大内山牛乳のパックのモニュメントを建てもらいたい」(ウェブサイトより引用)
役場を訪れた大内山酪農農業協同組合の職員に対して町長はそう熱く語り、モニュメントが作られることになったそうだ。
周りがミニチュアに見える(大内山酪農協同組合提供)
編集部が同組合の営業担当者にモニュメントの評判を聞いてみると、
「大紀町や大内山牛乳の良い宣伝になると好評です。
観光客が写真を撮っている姿をよく見かけます」
とのことだった。