これで森保監督の信頼を完全に勝ち取り、3月シリーズ以降はレギュラーに定着。6月のコパ・アメリカ(ブラジル)でも年長の植田をリードし、危ない場面で好プレーを連発した。さすがにチリ、ウルグアイ、エクアドルという強豪相手に無失点で乗り切ることはできなかったが、国際経験値が増したのは間違いない。

 昨年9月からスタートした2022年カタール・ワールドカップ・アジア2次予選でも、冨安と吉田が「鉄板コンビ」となっている。冨安が負傷離脱によって、10月のタジキスタン戦(ドゥシャンベ)と11月のキルギス戦(ビシュケク)は植田・吉田コンビが出場したが、冨安・吉田の安定感と連動した守備、攻撃の起点となるボール出しには及ばない。

 ビルドアップやパス出しの部分では畠中にも優位性があるが、吉田や冨安が不在だった11月のベネズエラ戦(吹田)や12月のE-1選手権(釜山)の韓国戦での一挙手一投足を見ると、まだまだ日本の最終ラインを託すには至らない。現状では吉田と冨安の2人を動かせないのが実情だろう。
 
 しかしながら、2次予選前半戦終了から5か月が過ぎ、それぞれの置かれた環境も大きく変化している。ご存じの通り、吉田は今年1月にサウサンプトンからサンプドリアへレンタル移籍。3月8日のヴェローナ戦で新天地デビューを飾ったものの、直後から新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグ戦がストップしてしまった。契約期間は6月30日までで、サウサンプトンとの契約も今季で切れるため、今後の身の振り方が定まっていない。今季サウサンプトンでも長期間出場機会を得られず、さらに実戦機会から長く遠ざかるとなると、パフォーマンスを維持できるか否かが不安視される。

 それは同じ欧州組の冨安、植田も同じ。冨安もセリエA再開を待ちながら自宅待機中で、植田の方はリーグ打ち切りですでに帰国している模様だ。東京五輪世代の板倉滉(フローニンゲン)や中山雄太(ズウォレ)も含めて欧州組は3月から全体練習ができていないため、コンディションやメンタル面を含めて難しい状況に直面している。代表活動が再開された時、誰がどのような状態なのかハッキリしないのは不安というしかない。

 コロナの影響は国内組にも言えること。森保体制発足後、存在価値を高めていた三浦や畠中らはこの状況をどう乗り切っていくべきか頭を悩ませている。彼らは3月末まで全体練習を消化していた分、欧州組よりは現在の状態はいいだろうが、5月中の練習再開が難しいという見方もあるだけに、やはりコンディションやモチベーションの維持は難しいだろう。

 ただ、2月にフランス・トゥールーズから復帰した昌子に関して言えば、中断期間が得られたのはプラスだろう。Jリーグに復帰した2月の時点では右足首の怪我が癒えておらず、公式戦復帰はまだまだ先と見られたが、すでに3月中には90分ゲームをこなせる状態まで回復している。この期間にフィジカルコンディションも上げていると見られるだけに、彼も吉田と冨安の鉄板コンビとのポジション争いに加わってくる可能性も大いにあるだろう。

 いずれにしても、代表キャップ数100を数える吉田、短期間で急成長した冨安を軸に複数の組み合わせを考えられるのが、センターバック陣の強み。計算できる存在を軸にしながら、森保監督が今後、どのような守備陣を形成していくのか。A代表ではあまり取り組んでいない3バックの併用を含め、バリエーションを広げていくことになりそうだ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)