新型コロナウイルスの感染予防対策と拡散防止のために、Jリーグが3月15日までの公式試合の延期を決定した。J1、J2、J3の各リーグとルヴァンカップのすべての試合が対象となる。

 延期は避けられなかっただろう。

 僕は2月21日の湘南対浦和戦の取材に出かけた。スタジアムではメディア受付で消毒液をたっぷりと両手に塗り込み(クラブからそのように促された)、試合中にも消毒液を何度か使った。マスクも着けていた。

 ただ、片道1時間以上電車に乗り、最寄り駅からスタジアムまでバスで移動している。バスは渋滞に巻き込まれ、30分ほどかかった。

 23日には水戸対大宮戦を取材した。電車の移動時間は片道2時間以上だった。水戸駅からスタジアムへのバスは、ここでも渋滞に巻き込まれて1時間強かかった。

 水戸のホームスタジアムにも、メディア受付と記者控室に消毒液が用意されていた。できるだけ使うように心がけた。手洗いもした。それでも、自分がウイルスを運んでいるかもしれないとの思いは拭えなかった。

 Jリーグとホームゲーム開催クラブが対応を尽くしても、ウイルスは目に見えず、臭いもしない。人が動く限りはリスクが伴う。

 魅力ある試合とは、監督以下選手とスタッフ、審判、ファン・サポーター、運営を支えるクラブスタッフとボランティアが揃うことで実現する。「この1、2週間の動向が、国内で急速に感染するかどうかの瀬戸際である」との見解を政府が明らかにしていることからも、延期は不可避だと考える。予定通りの開催を望む声もあるが、観戦拡大への不安が広がっているのも事実だろう。

 Jリーグの村井満チェアマンは、「3月18日の再開へ向けて準備を進めていく」としつつ、事態の推移によってはさらなる延長の可能性も残している。これもまた、避けがたいことだろう。
ラグビートップリーグは、Jリーグより1節少なく2節分を延期した。5月9日の最終節までに2週の隙間があり、順延分をうまくハメ込むことができている。

 Jリーグはそこまで簡単ではない。シーズンはまだ開幕したばかりで、スケジュールには余白がある。3試合分だけなら水曜日に当てはめればいいと思われがちだが、今シーズンは東京五輪と重なる。ラグビーのトップリーグにも、バスケットボールのBリーグにもない悩みだ。

 五輪の前後と期間中はリーグ戦を中断するため、そもそもスケジュールがタイトになっている。このうえ延期分が増えたら、各クラブにかなりの負担を強いることになってしまう。台風による延期などをあらかじめ織り込んで、現状のスケジュールには余白があると考えられるからだ。

 ウイルスとの戦いでは、政治も経済もスポーツも足並みを揃えなければならない。現状での3試合延期は支持されるべきもので、さらなる延期があっても個人的には驚かない。