歓喜の瞬間かと思いきや、おっとっとと踏みとどまる神戸イレブン。イニエスタの表情が印象的だ。(C)SOCCER DIGEST

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 埼玉スタジアムで起こった“春の珍事”が世界中で話題をさらっている。

 2月8日、Jリーグの新シーズン到来を告げる風物詩、富士ゼロックス・スーパーカップが開催された。横浜F・マリノスとヴィッセル神戸の一戦は壮絶な3−3の撃ち合いを経て、勝敗はPK戦に委ねられ、後者が3−2で勝利。世界のメディアが着目したのはやはり、そのPK戦での大失態だ。9人連続でPKをミスするという前代未聞の事態に飛びついた。

 英紙『Evening Standard』は「日本のスーパーカップはお粗末な茶番劇とともに幕を閉じた」と報道。驚きをもって以下のように伝えている。

「9人が連続してPKを失敗するなど聞いたことがない。数年前、リーグカップ、マンチェスター・ユナイテッド対サンダーランド戦のPK戦でキッカー10人中7人が外してバッシングを浴び、EURO2016の準々決勝、ドイツ対イタリア戦でも7選手がPKを失敗したが、ここまでおぞましいものではなかった。疑いなく、史上最悪だろう」

 米最大のスポーツチャンネル『ESPN』はサッカーコーナーのトップ記事として扱い、「9人失敗のPK戦を終えて、アンドレス・イニエスタがスーパーカップを掲げる」と銘打った。こちらは「ノーマルタイム(90分間)はスリリングで娯楽性に満ちたゲームだった」と称えつつ、「それもこれも、PK戦の衝撃で吹き飛んだ。忘れられないPK戦として語り継がれるだろう」と綴り、「(PK戦は)ちょっとクレイジーだったね」というイニエスタのコメントも紹介している。

 
 さらに『Fox Sports Asia』は「アジアをリードするJリーグにとって、9人連続のPK失敗はやや恥ずかしい事態と言えそうだ。それはシーズンの幕開けのゼロックス・スーパーカップで起こってしまった」と報じ、スペイン全国紙『Marca』は「観衆が目を覆いたくなるショー」と揶揄、フランスの専門誌『France Football』は「まさに異例のシュートアウト」と評した。

 イタリアの『Sport Mediaset』にいたっては「信じられないシーンの連続に5万1397人の大観衆がタメ息」と伝え、「横浜は(公式マスコットの)マリノスケがファン投票で1位を獲得したが、チームは勝利を飾れなかった」と追記した。
 そしてベルギーの全国紙『DH』は「いつもクールなベルギー代表(神戸のトーマス・フェルマーレン)も大事な場面でPKを枠外に外した」とピックアップ。「9人が連続して失敗する異様な空気のなか、いったい彼になにがあったのか」と不思議がった。

 日本で起こった今回の珍事がこれだけ世界中のメディアに波及したのは、やはり名手イニエスタの存在が大きかっただろうか。鮮やかなスルーパスで先制点をアシストするなどハイパフォーマンスを連発してフル出場を果たし、最後はキャプテンとしてカップを掲げた。どのメディアもイニエスタの写真を前面に押し出しつつ、PK戦のハイライト動画を添えてレポートしている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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