取り組みとしては、むしろ遅いぐらいである。

 Jリーグが2月8日のゼロックス杯のチケットを、多言語で販売している。J1王者として出場する横浜F・マリノスには、タイ代表DFのティーラトンがいる。天皇杯王者のヴィッセル神戸には、言わずと知れたアンドレス・イニエスタがいる。「日本のみならずアジア、そして世界でも注目を集める一戦に向けて」、Jリーグは多言語による販売を実施したという。

 Jリーグのニュースリリースからリンク先をクリックすると、香港に本社を置くKLOOKのサイトへ飛んだ。言語はオーストラリア英語、アメリカ英語、中国語から、支払い通貨は30種類以上から、それぞれ選ぶことができるようだ。

 サッカー好きの日本人にとって、ヨーロッパでサッカーを観るのはごく当たり前の観光ルートになっている。インターネットでチケットが予約できるようになってからは、海外でのサッカー観戦のハードルが一気に下がった気がする。

 利便性が高まれば競争率は上がり、競争率が上がれば値段も上がる。便利になったことでチケット代は高くなっているのかもしれないが、とにもかくにも観戦のハードルは下がった。

 ヨーロッパ各国リーグを観ていても、観客席の国籍は豊かだ。外国籍選手が世界中から集まってくれば、観客の国籍もまた広がりを見せていく、というころだろう。

 ここ数年で訪日観光客が右肩上がりに増えていることを考えれば、彼らの選択肢にスポーツ観戦を加えないのはもったいない。それなのに、Jリーグの会場では外国人観光客を見かけることが少ない。

 観光案内所などに貼られているポスターにも、スポーツイベントは多くない。時間を有効活用できる手段でもあるスポーツ観戦を、個人的にはもっとアピールするべきだと以前から考えていた。「むしろ遅いぐらい」とするのは、そんなところに理由がある。
KLOOKで「Jリーグ」と検索したところ、チケットは引っかからなかった。タイミング的にまだ少し、早かっただろうか。

 それならば、と開幕したばかりの「ラグビートップリーグ」で検索してみる。こちらも何も出てこなかった。

 今シーズンのトップリーグはニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、サモアなどからW杯プレーヤーが何人も来日している。ラグビーがナショナルスポーツとなっている国からの観光客なら、トップリーグ観戦は滞在中のプランに加えていいもののはずだ。W杯効果でチケットが売れているとはいえ、今後はそのあたりへの目配せもしていけば、ラグビー人気の安定につながっていくかもしれない。

 話をサッカーに戻す。

 Jリーグは東南アジア方面を中心に、J1リーグをコンテンツとして売り出している。外へ向けた営業を継続していきながら、インバウンドの取り込みにもっと注力していいと思う。

 そのためにも、Jリーグを含めた日本サッカーが魅力あるものでなければならない。
クラブレベルではACLで勝つ。代表レベルでは各カテゴリーでアジアの覇権をつかむ。日本サッカーのプレゼンスを高めることで、ビジネスチャンスが世界へ広がっていくのは言うまでもない。U−23選手権のグループリーグ敗退も、そうやって考えるとさらに歯がゆさが募るのだ。