歩きスマホや、ながらスマホによる事故が増えています(写真:つむぎ/PIXTA)

iPhoneやAndroidスマホで遊べる位置情報ゲーム「ドラゴンクエストウォーク(以下、ドラクエウォーク)」が人気だ。ドラクエウォークは、位置情報ゲームながら人気ゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」の世界観を活かしたRPG仕立て。


「ドラゴンクエストウォーク」(筆者撮影)

ドラクエシリーズのBGMや効果音がそのまま採用されていることもあり、ドラクエ世代に刺さる内容となっている。

9月12日のサービス開始から約1カ月でダウンロード数が800万を突破する人気ぶりであり、11月15日には1000万ダウンロード突破を発表。有吉弘行さんや伊集院光さん、中村倫也さんなど、芸能人の愛好者も多い。

有吉さんは、夢中になるあまりゲーム内の「ご当地土産」を手に入れるため、わざわざ高尾山に登ったそうだ。

ご当地土産は47都道府県に4つずつ用意されており、決められた場所に行ってクエストをクリアすれば、手に入れられる。

歩きスマホの原因は「ゲーム」?

「ドラクエウォーク」や「ポケモンGO」など位置情報ゲームの人気は年々高まっているが、歩きスマホにつながりやすく、さまざまな問題を引き起こしている。

ある40代の男性からは次のような話を聞いた。

「最近、4歳の子どもが自転車にぶつけられそうになった。子どもがびっくりして泣いているのに、自転車が行ってしまって腹がたったよ。スマホを見ながらポケモンをしていたから、余計に頭に血が上った。ぶつかっていたら絶対に訴えたのに」


「ドラゴンクエストウォーク」安全にプレイをして頂くためのお願い(YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=OvSngfStg6I

「ポケモンGO」が社会問題となったのは、自動車や自転車などを運転しながらプレイするユーザーによって、事故が多発したためだ。2016年には、小学4年生の男児が同ゲームをプレイしていた男のトラックにはねられて亡くなるなど、死亡事故も起きている。

一方の「ドラクエウォーク」は、後発の強みで歩きスマホ対策に力を入れている。ゲーム内で「ウォークモード」をオンにして歩くと自動で近くのモンスターとバトルできるなど、歩きスマホをしなくても、ある程度ゲームがプレイ可能だ。なお、同ゲームには安全に遊ぶための啓発動画も用意されている。

しかし、ウォークモードだと効率的にプレイできないなどのデメリットもある。「敵が強くなるとウォークモードでは回復できずにすぐに全滅する」「気づいたらすぐにMP(マジックポイント)がなくなっていて使い物にならない」という声も聞く。

実は、前述した40代男性も「ドラクエウォーク」や「ポケモンGO」の愛好者だ。「メガモンスターなど強い敵を倒すときには、コマンドを入力しながら戦わないと負ける。画面を見ながらじゃないと正直勝負にならない」「でも、プレイするときは絶対に足を止めるのが自分のこだわり。死亡事故のニュースも見るから、運転中にプレイするなんて考えたこともない」と言う。

近年、歩きスマホによる事故が多発

位置情報ゲーム以外にも、歩きスマホや、ながらスマホを原因とした事故は多い。2019年6月にも17歳の女子高生がスマホを操作しながら自転車に乗り、77歳男性と衝突、重症を負わせたため、書類送検されている。

2018年7月には、静岡県葵区のJR東海道線東静岡駅で14歳の男子中学生が列車とホームの間に挟まれて死亡した。生徒はスマホに気を取られてホームから転落して事故にあったとされる。歩きスマホ、ながらスマホの危険性がよく分かる話だ。

電気通信事業者協会(TCA)の「『やめましょう、歩きスマホ。』に関する調査」(2019年3月)によると、歩きスマホについて「危ないと思ったり、普段から注意や意識をしている人」は9割以上と多い一方、「歩きスマホをしてしまう人」も約半数いることがわかっている。怖いと感じながらも、ついつい歩きスマホをしてしまう人が多いというわけだ。

歩きスマホの多発により、交通事故が増えていることは統計でもわかっている。警察庁によると、平成30年中の携帯電話使用等に係る交通事故発生状況は、死亡事故率を比較すると、携帯電話使用等の場合は、使用なしと比べて死亡率が2.1倍になった。時速60キロで走行した場合、2秒間に約33.3メートル進むため、スマホ等に目を奪われている隙にブレーキが間に合わず、重大事故につながってしまうのだ。

携帯電話やスマホを使用しながら車を運転する「ながら運転」による事故があまりに多発しているため、12月に施行予定の改正道交法により、罰則強化と反則金引き上げが予定されている。

現行の「5万円以下の罰金」が、「6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金」になる。また、事故を起こしかねない危険を生じさせた場合は、「3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金」から、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」に引き上げられる予定だ。

世界中で問題視されている

歩きスマホやながらスマホを問題視する国は、日本だけじゃない。アメリカでは、「ポケモンGO」により推定10万件以上の交通事故が増えたとも言われている。事態を重く見て、ハワイ、クロアチア、ニューヨークなどでは、歩きスマホをしながら道路を横断すると罰金刑が科せられるようになった。

歩行者が歩きスマホで視線を落としていることを前提に、対策を始めている国も多い。オランダでは、信号機に連動したLED照明が横断歩道手前に埋め込まれた。クロアチアの首都ザグレブでも、歩きスマホでも赤信号を見逃さないよう、地面を照らす装置が導入された。韓国京畿道高陽市の交差点では、歩きスマホに注意を促すレーザー信号灯が設置された。

「営業で出張が多いので、せめて位置情報ゲームで移動を楽しもうと思った。営業マンでプレイしている人は多い」とある営業マンに聞いたことがあるし、「位置情報ゲームのおかげで、散歩が楽しくなり、長く歩けるようになってきた」という高齢者もいる。

あくまで歩きスマホや、ながらスマホがいけないわけで、位置情報ゲームが悪いわけではない。ケガをしたり、周囲の人を傷つけたりしないためにも、位置情報ゲームを楽しむ場合は、必ず安全な場所で立ち止まってプレイするようにしてほしい。