ITライター・山口真弘の気になるグッズラボ 
〜「ゾンビケーブル」レビュー

2019年11月19日
TEXT:山口真弘(ITライター)

ケーブルの断線の多くは、コネクタの付け根部分で発生します。コネクタの抜き差しを繰り返しているうちに、その付け根に過剰な力がかかって内部が断線したり、あるいは外側の被覆が破れて最終的に断線に至るというわけです。スマホなどの充電ケーブルは、この傾向が特に高いでしょう。

今回紹介する「ゾンビケーブル」は、こうしたケーブルの欠点を解消すべく作られた、ユニークな製品です。一般的なmicroUSBタイプや、iPhoneやiPadに使えるLightningタイプなど複数のモデルがありますが、今回は片方がUSB Type-Cになったタイプを紹介します。


見た目は一般的なフラットケーブル。長さは1.5mで、色はレッドとブラックがあります


今回は片方がType-Cのケーブルを試用します。充電専用でデータ通信には非対応です

このゾンビケーブルでは、一般的なケーブルのようにコネクタとケーブルが圧着されておらず、ケーブルはレバーで挟むことでコネクタにがっちりと固定されています。

もしケーブルの付け根に断線が発生すれば、レバーを外してケーブルをコネクタから抜き、断線した箇所をハサミでカットした上で、再度コネクタに差し込んでレバーでロックします。こうして断線箇所を除去することで、元のように使えるようになるというわけです(カットできるのはUSB Type-C側のみ。Type-A側は不可)。

もちろんカットしたぶんケーブルは短くなりますが、1回につきせいぜい数センチ程度で、実用上は何ら問題ありません。ケーブルの長さが尽きるまでは、何度カットをしても使い続けられることから、ゾンビケーブルという名前がつけられているというわけです。

似た構造のLANケーブルと違って加工時に専用のかしめ工具を使うこともなく、またケーブル先端をストリッパーで剥くこもなくそのまま差し込むアバウトさゆえ、きちんと認識するかどうか不安ですが、試した限りでは問題ないようです。ケーブルはフラットタイプで、かつ表裏もありませんので、向きを気にせず手軽に使えます。


ケーブルは圧着されておらずレバーを跳ね上げると抜くことができます


断面。ケーブルを差し込み、レバーで押さえて固定する構造を採用しています


ケーブルの断線した部分をカットして取り除くことで新品同様の状態に復帰させられます


ケーブルを差し込んでレバーで固定すれば断線したケーブルも再度使えるようになります

長さは約1.5mあることから、3ヶ月に1回、10cmずつカットしても約5年間使い続けられる計算になる本製品ですが、購入前に知っておきたい点は2つあります。

ひとつは、熱可塑性ゴムでできたフラットケーブルの外皮はかなり硬く、よほどのことがない限り、断線自体が起こりそうにないことです。どちらかというとレバーで押さえたケーブルがコネクタから抜けかけて接触が悪くなる確率のほうが高そうで、利用に際してはそちらも念頭に入れておく必要があります。

もうひとつは、充電速度があまり高速ではないことです。テスターで測ってみると、一般のケーブルと比べて抵抗値がかなり高く、それゆえ通常のUSB Type-Cケーブルと比較した場合、時間がかかる可能性があります。

USB Type-Cと言えば、USB PD(USB Power Delivery)という急速充電規格を利用できることが特徴の一つです。本製品は両端がUSB Type-C、いわゆるC-Cケーブルではなく、一方がUSB Type-AのいわゆるA-Cケーブルですので、もとよりUSB PDには対応しないのですが、一般的なA-Cケーブルと比べても充電速度が遅いとなると、利用できるシーンが限られるのがもったいないところです。


抜いたケーブル。レバーで押さえ込まれていた部分がへこんでいるのが分かります


ケーブルは充電専用ですので、左右の2芯のみ使用します。表裏はありません

従って本製品は、充電速度はそれほど重視せず、かつ足に引っ掛けるなどして断線しやすい環境で使うのに向いた製品と言えます。例えば寝室は、夜中に足を引っ掛けやすい上に、一晩かかって充電が完了すれば速度はそれほど問わないため、本製品の利用に向いた環境と言えるでしょう。

そもそもケーブルの断線は、人に繰り返し踏まれたり、足を引っ掛けられることで簡単に起こってしまうものです。本格的に対策しようとすると、モールなどで保護する必要がありますが、そうなるとコストもかかります。敢えて断線しても構わないので、その後の修復しやすさを重要視した本製品は、面白いコンセプトだと言えます。

前述のように本製品は抵抗値が高く、充電速度があまり期待できないのがもったいない限りですが、フラットタイプのケーブルであれば、頑張ってもこれくらいが精一杯なのかもしれません。まずはどこで使うかを決めてから、購入を検討してみてください。


ケーブルの抵抗値は同種ケーブルの約10倍と高く、充電速度はあまり期待できません


極限までカットするとここまで短くなります。なお長さを復元することはできません

製品名:ゾンビケーブル(Type-C レッド 1.5m)
実売価格:1,480円
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07TXLM8X5/

[筆者プロフィール]
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn