2019年の家具店の倒産は、既に前年の2倍発生。東日本大震災以降で最多だった17年の水準にも並ぶなど、増加傾向が目立つ

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窮地に立たされる「街の家具店」 量販店に太刀打ちできず、倒産は増加傾向で推移

 家具店の倒産が増えている。帝国データバンクの調べでは「家具店」の倒産が2019年10月までに26件発生、既に2018年全体(13件)の2倍の水準に到達した。東日本大震災が発生した2011年以降で最多となった2017年全体(26件)の水準にも並ぶなど、家具店の倒産増加が目立っている。

 経営破綻した家具店の多くは、地元密着で経営を続けてきた「街の家具店」。品揃えで圧倒する大型量販店の台頭に加え、ニッチな高級家具市場と低価格帯市場の二極化が進行したことで、固定客を中心に従来通りの中価格帯で「家具を売る」ビジネスモデルだけでは太刀打ちできなくなったことが、経営難に陥る背景にあるようだ。

家具業界に迫る低価格化の波 「お値段以上」についていけない中小家具店

 近年の国内ホーム家具市場は、大きく二つの変化が訪れている。一つ目は大型チェーン家具店などによる市場の寡占化が進んでいることだ。帝国データバンクの調べでは、2018年の国内家具店の売上高合計は約1兆2300億円。このうち、売上高100億円超の上位5社が占める割合は約6割に上る。5年前に比べると、上位5社が占める割合は5.8ポイント上昇した。総じて中堅・大手企業への集約化が進み、優勝劣敗が目立っている。

 二つ目の特徴は家具そのものに対する消費者意識の変化だ。総務省によれば、2018年の一般家具や室内装備品、寝具などに対する支出額合計は2万3905円、30年間で半額以下に縮小。特に、購入頻度そのものが減少している、タンスなどの一般家具では金額が6割も減少した。昔は結婚を機にタンス類を揃える婚礼需要が多かったものの、現在は婚姻件数の減少や少子高齢化の進行などで購買機会そのものが減少した。また、クローゼットなどがビルトインされたマンションなどが一般化したことで新築時のまとめ買いニーズも縮小。代わって「必要なときに必要なだけ」購入するニーズが高まった背景もある。

 家具に対する消費者の支出減少には、家具自体の「低価格化」による影響も無視できない。特に近年は、売上高で他を大きく引き離す首位のニトリと、2位のイケア・ジャパンを中心とした、家具の低価格チェーンの台頭が著しい。両社とも、商品企画から生産、販売までを一貫させたSPAの手法を採り入れ、中間コストを大幅に圧縮。手頃な価格帯ながらも品質の高い家具を提案する「価格破壊」を実現してきた。こうした低価格戦略がマンションなど手狭な住宅に住む都市部の顧客を中心に支持されたことが成長の原動力となってきた。

 「大手の台頭」と「低価格化」。この二つの大きな変化は、地元の固定客などを中心に、中価格帯の家具を取り扱う地場の中小家具店などで特に大きな影響を受ける。顧客獲得を目指す中小家具店では、売り筋の商品を低価格帯に切り替えるなど、大手の戦略に追随する動きもある。しかし、単純な価格戦略では薄利多売状態に陥りやすい。そのため採算が取れなくなることで資金繰りを悪化させ、結果的に経営破綻に繋がるケースも多い。そのため、「家具を仕入れて売る」というビジネスの在り方そのものについて、大幅な見直しを迫られている。

デザイン、機能性、VR―ライバル、異業種も続々参入 混迷の市場で顧客獲得できるか

 ただ、市場を独占する大手の間でも近年競争が激化するなど、市場は混戦の様相を呈している。若い女性に幅広い支持を得るインテリア雑貨大手のフランフランは、家具に特化した新ブランド「MODERN WORKS」を設立。シンプルモダンな家具を手頃な価格で提供し、男性客の支持獲得を図る。ホームセンターでも、九州を地盤に全国展開するナフコが、インテリアと家具の専門業態「ツーワンスタイル」を展開するなど、幅広い業態で家具販売事業の拡大を狙っている。

 インターネットを活用した取り組みも進む。家具販売大手のベガコーポレーションは、EC市場に特化した家具「LOWYA」ブランドを展開。5月にはVR機器を用いたコーディネートツールの提供を開始した。ウェブ上で家具商品の比較・検討を可能とすることでリアル店舗に直接行かなくても良くなる。顧客の利便性を向上させることで、購入の後押しに繋げることを目指す。

 群雄割拠の家具店で進む差別化戦略。顧客の獲得が各社共通の課題となるなか、地元密着の家具店がいかに逆境を打破するのか注目される。