ポッドキャスト の小さく美しい時代は、次のフェーズへ:勢力強めるプラットフォームとアドテク
インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)による年次イベント「ポッドキャスト・アップフロント(podcast upfront)」が10月16日・17日、ニューヨークで開催された。今回は第5回となっていたが、来年以降はプラットフォーム勢が圧倒的な存在感を見せるかもしれない。昨年のIABアップフロントにおいてプレゼンターたちは、はじめて測定とターゲッティングにフォーカスを据えた。今年のポッドキャストの非公式テーマは、プラットフォームだろう。オーディオプラットフォームのパンドラ(Pandora)も、今年はじめてプレゼンターとして登壇している。ステージ上のイベントであれ、ステージの外のゴシップであれ、ポッドキャスト分野もほかのすべてのデジタルメディアのフォーマットと、同じ方向に進んでいるようだ。それは少数のプラットフォームによる寡占状態、そして小規模な個々のパブリッシャーやネットワークがパイの残りをめぐる争いでクリエイティブになろうとする、という方向性だ。
これは、ポッドキャストがディスプレイ広告エコシステムのような環境になることが避けられないことを意味している。コモディティ化され、自動化され、文脈ではなく、オーディエンスを中心に運営されるという形だ。ポッドキャスト広告の世界はこれまで、手作りであったが、今後機械化されることが運命付けられている。
「コンテンツ独自の、司会者が読み上げるタイプでスケールするのは非常に難しい」と、オーディオ部門に投資するメディアエージェンシーのエグゼクティブのひとりは語った。「小さなことの積み重ねでジワジワとスケールする、というのが以前の形だった。クライアントとして、ポッドキャストに興味を持っており、2つか3つの大きなパートナーと協働できるのであれば、何百もの異なる取引をするよりもずっと面白くなる」。
パワーバランスの変化
この転換に向けてのパワーバランスの変化はまだ起きていない。これは大手プラットフォームがまだ準備をしている最中だから、というのがひとつある。Spotify(スポティファイ)やパンドラ(Pandora)といったプラットフォームにポッドキャストを組み込む買収劇の多くは、まだ1年も経っていない。
「買収したものについて、まだ学んでいる段階だと思う」と、メディアエージェンシー、ヴェリトン・ワン(Veritone One)のインフルエンサー・ポッドキャスト支出部門のシニアバイスプレジデントであるスティーブン・スマイク氏は言う。
しかし、業界の他方では、マーケターたちがマスへのリーチを期待し、業界水準のメトリックスとのコンプライアンスを期待するような状況に向けて、準備をしようとしている。先日、ステッチャー(Stitcher)の広告ネットワークであるミッドロール(Midroll)は、自分のネットワークに属している番組たちに新しいホスト形式へと移行する締め切りを設定した。広告販売の方法を変更するためにインプレッションベースのシステムへと段階的にシフトしようとするミッドロールの戦略の一環だ。
「変化は始まった。エピソード回に対応する形式で非効率に取引されているなか、たくさんの在庫がまだ存在している」と、ステッチャーのCEOであるエリック・ディーン氏は言う。
効率性の先にあるもの
効率性が達成されれば、ポッドキャスト分野に入ってくるブランドからの支出が増えるだろう。IABのデータによると、ポッドキャスト収益のうち38%はブランド広告が占めている。ブランデッドコンテンツは10%だ。これらのバイヤーたちはシンプルであること、そしてスケール、に慣れている。ポッドキャスト分野がこれまで提供するのに苦戦してきた点だ。
業界のほかのプレイヤーたちも揃って準備をしている。8月にはポッドキャストホストとマネタイゼーションのプラットフォームであるアート19(Art19)が広告ネットワークをローンチしたと発表した。これによって、彼らが抱える200ほどの番組で、バイヤーたちはリスナーごとに広告を配信することができるようになる。
プラットフォームが提供するようなスケールはパブリッシャーが個別に提供できはしないだろう。しかし、なかにはポッドキャストを広告主のための多面的な契約に自社のポッドキャストを組み込むことで対抗しようとするパブリッシャーたちもいる。IABのモバイル部門バイスプレジデントであるゾーイ・スーン氏は、デジタル、プリント、オーディオ、そしてその他のフォーマットを含む広告プロダクトを構築する能力を持っていることで、ポッドキャスト広告が複数の場面でのアトリビューション・モデルに入り込めることを証明する競争でひとつ、頭を抜き出すことができるかもしれないという。
スーン氏は、「これらのプラットフォームは、支出が入り込むところを追いかけていることを我々は目にしている。『こんなオーディエンスを我々は持っている、彼らにリーチする方法はこうだ』とアピールする責任がパブリッシャー側にある」というのだ。
純広にこだわるところも
その一方でバースツール・スポーツ(Barstool Sports)のように、自説を固く表明するパブリッシャーたちもいる。先日、バースツールが登壇する第1回目のアップフロントを目前に控えて、CEOのエリカ・ナーディーニ氏はポッドキャスト広告の向かう先についてTwitter上で熱弁をふるった。バースツールの収益のうち1/3はポッドキャスト広告から来ており、彼らは決して完全にプログラマティックへと移行はしない、というものだ。
「頭のうえを飛び越すことができる中間の作業者として広告を作っていると、飛び越されてしまう。ひとつの部品の一部でしかなく、対話全体に参加していなければ、取り残されるだろう」と、ナーディーニ氏はツイートした。
「いま起きていることは驚くことではなく、メディアにおけるジェントリフィケーション(都市の中下層地域を再開発して高級化すること)の最たるものだ」と、オックスフォード・ロード(Oxford Road)のCEOであるダン・グレンジャー氏は言う。「ポッドキャストは誰でも簡単に参加できる形ではじまった。早い段階で参加した我々の多くは非常に大きな恩恵を受けてきた。しかしいま、インプレッションの一つひとつの価値がこれまでよりも低くなるような新しいルールやプロセスが課されようとしている」。
Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)
