月への衝突直前、高度7.5kmから見た月面。イスラエル民間探査機Beresheetが撮影

イスラエルの航空宇宙ベンチャーSpaceILが、月に送り込んだBeresheet探査機は、民間初の月面着陸を実現するため、打ち上げから6週間をかけて月軌道へと到着しました。そして、着陸態勢を整えた4月11日に歴史的な試みは実行に移されました。SpaceILは民間による月探査コンペとして開催されたGoogle LunarXPRIZE(GLXP)で、ファイナリストとして日本のHAKUTOらと月面への着陸と探査を目指し切磋琢磨していました。しかし、度重なる期限延長の末にGLXPは勝者不在のまま開催を終了。SpaceILはNASAなどの協力を得て打ち上げにまでこぎ着けることに成功しました。

予定では、Beresheetは月の表側、北緯28.0度、東経17.5度を中心に広がる「晴れの海」と呼ばれる月の海近くに着陸し、搭載した磁力計で月の磁場を測定する予定でした。さらにNASAの依頼で搭載した、地球と月の間の正確な距離を測るレーザーリトロリフレクター(再帰反射器)アレイを設置する計画もありました。そして、機体には英語版Wikipedia、世界の言語をアーカイブするスマートペンダント"ロゼッタ・ウェアラブル・ディスク"、ユダヤ経典(トーラー)、世界の子ども達の描いた絵、ホロコーストを生き残った人たちの回想録などを携えていました。

SpaceILは4月11日に着陸アプローチを開始した後、高度22kmでカメラを月の方向に向け機体を入れ込み、いわゆる"自撮り"を敢行。このときは民間企業らしい遊びごころのような、余裕を感じさせました。


しかし高度を下げ始めてから、突然Beresheetのエンジンが停止する問題が発生。地上管制は即座にリセットコマンドを送信して復旧を測るものの、エンジンが再起動したときには月への接近速度はおよそ480km/hに達しており、もはや減速〜軟着陸を実行するには手遅れの状態になっていたとのこと。

SpaceILはやむなく最後の写真をもう一枚だけ(冒頭に紹介した写真を)撮影しました。高度は約7.5km。Beresheetはこの直後に通信を途絶し、月に衝突したと考えられます。

最終的に衝突で終わってしまったものの、わずか1億ドルのコストで月にまで探査機を運んだSpaceILの挑戦は、民間企業としてかなりの成功を収めたと言っても過言ではありません。この挑戦によってイスラエルは米国、旧ソビエト連邦、中国につづく月面探査機を月に到達させた国の仲間に入ることになりました。

さらに、SpaceILは着陸失敗からわずか2日後に、新たなBeresheet探査機を開発することを宣言しました。これからのプロジェクト開始だと、再び月を目指すのは早くて2020年以降になると思われるものの、願わくば、次は成功して欲しいところ。また、日本のispaceが"HAKUTO-R"として2020〜2021年に実施を目指す月探査プログラムにも「民間初の月面探査」成功を期待したいところです。

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