(左から) MF南野、MF堂安、FW大迫、DF吉田、DF長友【写真:田口有史 & Getty Images】

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カタールに1-3敗戦 采配面の問題が見えた一戦でも、南野は「積極性を見せた」

 日本代表は1日、アジアカップ決勝でカタールに1-3と敗れ、2大会ぶり5回目の優勝を逃した。

 今大会で6戦全勝同士となった頂上決戦は、序盤から日本のプレスが思うようにハマらず、前半12分に豪快なオーバーヘッド弾で先制を許すと、同27分には強烈なミドルシュートを叩き込まれ、0-2で前半を折り返す。後半24分にMF南野拓実(ザルツブルク)が1点を返して反撃に出るも、同38分にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定からPKを献上し、これを決められて万事休した。

 2022年ワールドカップ開催に向けて急成長を遂げ、今大会で旋風を巻き起こしていたカタールに屈した形となったが、選手個々のパフォーマンスはどのようなものだったのか。1970年代から80年代にかけて「天才ドリブラー」としてその名を轟かせ、日本代表としても活躍した金田喜稔氏が、プロフェッショナルな視点でカタール戦に出場した全14選手を5段階で評価(5つ星が最高、1つ星が最低)。序盤から劣勢を強いられ試合中に修正できなかった点について、金田氏は前提として選手個々のパフォーマンスを引き出せなかった采配面での問題を指摘。そのなかで一矢を報いる得点を決めた南野には、唯一の“4つ星”を与えた。

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<FW>
■大迫勇也(ブレーメン)=★★★

 代えがきかない存在であることは間違いなく、カタール相手にもスペースへ顔を出すタイミング、足もとへの収め方には光るものがあった。南野のゴールシーンでは塩谷の縦パスを1タッチで落としてアシスト。一方で途中出場の武藤との絡みはスムーズではなく、結果的に自身に得点は生まれなかった。

<MF>
■南野拓実(ザルツブルク)=★★★★

 今大会を通してゴールへの意欲を示し、思うように得点を奪えなかったもののコンスタントにシュートは放ってきた。この決勝でも積極的な姿勢を示しており、後半24分には大迫との絶妙な連係で抜け出し、飛び出してきた相手GKの上を抜く技ありの一撃を決めた。後半途中からは中盤の左サイドに回ったが、個人的には得点が欲しい状況だっただけに、南野を最後まで中央に置いておきたかった。

塩谷とのプレーに戸惑い? 柴崎は「少し構えてプレーしていた」

■堂安 律(フローニンゲン/→後半44分OUT)=★★★

 アジアカップの“ラッキーボーイ”になるべき存在だった。大会を通して決して悪いパフォーマンスではなかったが、次世代の攻撃陣のリーダー候補であり、そのポテンシャルを考えれば物足りない。カタール戦でも1対1の場面で相手を振り切り、決定的なシーンを作れたわけではなく、アジアレベルで抑えられていた。もう少し得点に絡む場面を作ってほしかった。

■原口元気(ハノーファー/→後半17分OUT)=★★★

 攻撃時に最後まで周囲との呼吸が今一つ合わなかった印象。長友との連係で左サイドを突破する場面は少なく、相手に脅威を与えられなかった。ただ、高い位置でハードワークができる存在でもあるし、2点を追う状況では1枚目の交代としてベンチに下げられるのではなく、ピッチに残しておいても良かったと感じる。

■塩谷 司(アル・アイン/→後半39分OUT)=★★★

 遠藤の負傷により決勝での大役が巡ってきた。南野のゴールを導いた縦パスを供給した一方、特にゲーム序盤のビルドアップの局面ではスムーズなパス回しができず。期待された守備面での役割も、中盤のスペースを埋めきれず、相手のスピードに後手を踏むシーンもあった。

■柴崎 岳(ヘタフェ)=★★★

 塩谷とのコンビに戸惑いがあったのか、少し構えてプレーしており、ビルドアップ時に3タッチする場面がいつもより多かった印象だ。相手の中盤を横に揺さぶってスペースを生み出すパス回しができず、間のスペースで顔を出しながらボールを引き出し、効果的な配球ができなかった。またトルクメニスタン戦やベトナム戦でもそうだったが、5バックで引いた相手に対して無理やり縦パスを入れ、ボールを失う場面も多かった。そこはチームとしても修正したかった。

酒井はいつもより「攻撃のイメージが描けていなかった」

<DF>
■酒井宏樹(マルセイユ)=★★

 準決勝で足を痛めた影響もあったのか、いつもに比べて相手に追い込まれてのミスなどプレーにドタバタ感があった。前半からビルドアップ時にスムーズな配球ができずノッキングを起こしてしまう場面もあり、右サイドハーフの堂安との絡みを含めて攻撃のイメージがあまり描けていないように見えた。

■冨安健洋(シント=トロイデン)=★★★

 今大会を通じては間違いなく最高の出来だった選手で、日本代表の未来を明るく照らす存在となった。20歳という年齢を考えれば伸びしろは大きい。決勝でも持ち味は出していたものの、最終ラインの一員として3失点と結果を残せず。この悔しさを次に生かしてほしい。

■吉田麻也(サウサンプトン)=★★★

 オーバーヘッドによるカタールの先制点は相手を褒めるべきスーパープレー。もう少し厳しくいけたのかもしれないが、ペナルティーエリア内であることを考えれば最低限の対応はできていた。2失点目はチームとして翻弄された形で、最後は不運なハンドでPK献上。最後までキャプテンとして奮闘していたが、悪い意味で目立ってしまった。

■長友佑都(ガラタサライ)=★★★

 左サイドを駆け上がってクロスを送る場面もあったが、この試合でも攻撃面でのアグレッシブさをあまり示すことができなかった。チームとしてのやり方が影響しているのだろうが、持ち味を発揮できた大会にはならなかった。

<GK>
■権田修一(サガン鳥栖→ポルティモネンセ)=★★★

 前半の2失点は相手のスーパープレーを褒めるべきシュート。これまでの試合ではセーフティーにやるべき場面で軽率ミスを犯しても、その後は好セーブでしのぐパターンが多かったため、後半のPKでも期待感はあったが止められなかった。GKとしては少し酷な3失点のように見えた。

武藤は攻撃に変化を加えるも「切り札としてはやはり得点に絡んでほしい」

<途中出場>

■武藤嘉紀(ニューカッスル/FW/←後半17分IN)=★★★

 武藤が投入されてからフリーランニングで相手最終ラインの背後に走り込み、ボールを引き出して受けるシーンが増えていった。日本の攻撃に変化をもたらす存在となったが、0-2で投入された切り札としてはやはり得点に絡めないと厳しい。ヘディングシュートのチャンスも2本ほどあったが捉えきれず。チームとしては、今後高さというジョーカーもベンチに用意しておきたいところだ。

■伊東純也(柏レイソル→ヘンク/MF/←後半39分IN)=評価なし

 森保監督は持ち味のスピードに期待したのだろうが、それを発揮するにはあまりにも時間が短すぎた。サイドに張るべき選手なのに中に絞る場面もあり、効果的な起用ができているのか疑問が残った。

■乾 貴士(ベティス→アラベス/MF/←後半44分IN)=評価なし

 アディショナルタイムを含めても5分くらい。試合の流れを変えるためには、あまりにもプレー時間が短かった。負けているチームの采配としては疑問が残るものだった。


[PROFILE]
金田喜稔(かねだ・のぶとし)

1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。(Football ZONE web編集部)