ドライバー以外も乗る機会が多ければN-BOX一択!

 今、ニッチな売れ筋軽自動車が、働く軽バンの革新的ニューモデルであるホンダN-VANだ。国産車のなかで、もっとも売れているホンダN-BOX、Nシリーズの1台として加わった4ナンバーの軽バンである。

 ベースはN-BOXのFFモデル。ホンダ独創のセンタータンクレイアウト、軽バンの世界では革新的と言える助手席側センターピラーレス構造のボディ、後席に加え、助手席までもをダイブダウン格納できるフルフラットフロアなど、見るべき点は数多い。

 そんなN-VANの登場で、ちょっと面白い現象が起きている。それは、一般ユーザーでもN-BOXかN-VANかで悩んでいる人が多いというのだ。これまでのホンダの軽バン、アクティやバモスとN-BOXを比較するなど考えられなかったのだが、N-VANにホビーユーザーにも提案するちょっとオシャレな軽バンと言える+STYLE FUN、さらにスタイリッシュなロールーフの+STYLE COOLのラインアップが揃っているからだろう。

 ズバリ言えば、一般ユーザーの用途として、サーフィンなどの足、バイクレースなどの参戦用、車中泊専用車として使うならN-VANに優位性がある。何しろ、本来荷物を運ぶために生まれたNシリーズだけに、荷物の積載性、前席背後の空間効率は抜群だ。

 N-VANは軽バンの常識を覆し、N-BOXベースゆえにFFレイアウトを採用するが(軽バンのほとんどは荷室優先のFR)、ホンダ独創のセンタータンクレイアウトによる低床を生かした巨大積載空間の創出によって、FRに負けない、どころか助手席側センターピラーレス構造によって同等以上の積載容易性を実現している。

 たとえばハイルーフ仕様の場合、125ccのバイクとモンキーをそのまま同時に積み込むことができる、スライドドアの開口部と室内容量を備えているのだ(バイクの場合、ラダーは必要)。これまでハイエースのようなバンでしかできなかった積載が、軽バンで可能になった功績は極めて大きい。

 そして最大荷室長もN-VANは2635mmもあり、室内高の余裕から車中泊も楽々行える。しかもホンダの純正アクセサリー部門であるホンダアクセスから、車中泊用のアクセサリーが豊富に用意されている点も見逃せないポイント。

 意外なるN-VANの良さは、じつは走行性能にある。前席は確かに働くクルマとしてのシートでしかなく、N-VANからN-BOXに乗り換えると、高級セダンのシートに座り変えたほどの違いがあるものの、NAモデルの場合、N-BOX用のエンジンの低速トルクを太らせたことで、それこそよりトルキーかつスムースに発進。平たん路をスイスイ気持ちよく走り、坂道もそつなく登ってくれる余裕ある実力がある。「このN-VAN、ターボだっけ?」と勘違いしそうな低中速域の走りの質感、動力性能を発揮してくれるのだ。

 ターボに関しては、N-BOX同様、0〜2000回転あたりでゴロゴロした振動が発生し、気になる人は大いに気になってしまうのだが……。つまり、N-VANで軽バンらしからぬ走行性能に満足できるのは、NAのほうなのである。

 しかも、N-VANにはN-BOXとほぼ同等の先進安全支援機能、Honda SENSINGが全グレードに標準装備されるのだ。それも高速走行で前車に追従するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)込みで!(約30〜110km/hで作動/CVTの場合)。先進安全支援機能にこだわっても、軽バンのN-VANだから劣る、なんていうことはないのである。加えて、N-BOX的なクルマにS660譲りの6速MTで乗りたい! というマニアックな人もN-VANである(燃費性能はCVTに劣るが)。

 ただし、N-VANは短中距離向けの「おひとりさま仕様」である。助手席、後席に誰かを乗せる機会が多い、ロングドライブする機会が多い……というなら迷うことなくN-BOXである。

 理由は、低中速域の動力性能はともかく、前後席のシートのかけ心地、車内の静かさや乗り心地面で、それはもう乗用のN-BOXが圧倒的に優れているから。なにしろ働くクルマだけに、まっとうなシートは運転席のみ。それもN-BOXとくらべれば耐久性重視だから快適性など二の次なのだ。

 N-BOXでもシートアレンジによって車中泊も行えるし、サーフボードのような長尺物を積載することは可能なのである。

 悩ましいのはN-VANとN-BOXの価格差。一例を挙げると、N-VAN +STYLE COOL Honda SENSINGのFF NAモデルの価格は156万600円(ハイルーフのN-VAN +STYLE FUNも同じ)。一方、N-BOXの上級豪華装備モデルの G EX Honda SENSING(NA FF)は159万6240円と、N-VANのほうが約3万5000円安い程度。

 要は、どう使うか。何を乗せるか。とくにひとり乗車でバイクを乗せるというなら、2輪業界も大注目しているN-VANに限るし、もっとファミリーユースに寄った使い方ならN-BOXということだ。そのあたりはあとで後悔しないよう、2台のカタログを隅々まで眺め、ショールームで各席に座ってシートアレンジも試し、試乗して徹底比較するべきだろう。