復活した「CR-V」のスタイリングはオーソドックスに映るが…(撮影:大澤 誠)

ホンダのSUV「CR-V」が2年ぶりに日本市場に帰ってきた。CR-Vは1995年にデビュー。その後4代目まで日本で販売していたが、モデルチェンジのたびにグローバル市場を見据えてボディもエンジンも大型化したことを受け、一度国内販売を見合わせた。しかしアメリカや中国では現行の5代目が先行発売されており、これが導入されることになった。


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新型CR-Vのスタイリングは、ヴェゼルに比べるとオーソドックスに映る。顔つきは最新のホンダ車に共通の造形だが、サイドウインドーの形状は旧型との近さを感じるし、ほかの車種を思い浮かべる人がいるかもしれない。

その代わり、最近の一部のホンダ車のように、必要以上に線を多用することで煩雑な印象を与えることはない。中国を主要マーケットとした背の低いミニバン「ジェイド」も似たような特徴を持つ。グローバルモデルという位置づけがそうさせたのかもしれない。

プレスラインに頼っていない造形

しかも実車を前にすると、プレスラインに頼らず、面の張り出しで前後フェンダーの力強さを表現しており、けっこう考え抜かれた造形であることが伝わってくる。ボディサイズ(新型は全長4605mm×全幅1855mm×全高1680mm〜1690mm)は旧型(全長4535mm×全幅1820mm×全高1685mm)よりやや拡大しているが、旧型のサイドパネルは平板だったことを思い出すと、外寸拡大は納得できるものだ。

リアスタイルについては、意見が分かれそうだ。初代CR-Vからの伝統である縦長のコンビランプを継承しながら、下端をリアウインドーに沿って内側に回したL字型にしている。

ただし現在のSUVのトレンドとして、リアコンビランプについては従来多かった縦長から、ワイド感を出すように横長にシフトしつつあり、かつ上方に置くことで力強さを表現するというトレンドがある。トヨタ自動車「RAV4」やスバル「フォレスター」もそうだ。

CR-Vと同じように縦長のリアコンビランプを使い続けてきたボルボも、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「XC60」では、やはりL字型になっている。

インテリアもまた、人目を引くようなデザインではない。質感についても飛び抜けて高いという印象はなかった。

CR-Vが日本市場に復活することになった理由

なぜCR-Vが日本市場に復活することになったのか。やはり現在のSUV人気によるところが大きいだろう。日本車・輸入車を問わず、多くのブランドが複数のSUVをラインナップしているのに、ホンダは2013年末に発表された「ヴェゼル」の一択だった。

ヴェゼルは同社のコンパクトカー「フィット」をベースとしながら、ボディサイズは同クラスの日産自動車「ジューク」より明確に大柄で、ひとクラス上のトヨタ「C-HR」に近い。しかも空間効率に優れたフィットのプラットフォームを活用したことで、ジュークやC-HRにも共通するダイナミックなデザインをまといながら、キャビンはかなり広い。

こうした部分がユーザーに評価され、ヴェゼルは2014年から3年間、国内SUV販売台数でトップを堅持。2017年はC-HRに王座を明け渡したものの、今もSUVでは第2位の座にあり、息の長い人気を誇る。

しかしトヨタの「ハリアー」や日産「エクストレイル」、マツダ「CX-5」などのミドルサイズで、ホンダには、このヴェゼルからステップアップを図れるSUVがなかった。

おまけに昨年末にマツダが発売した3列シートSUVの「CX-8」が、予想以上の好評を博している。購入ユーザーには若い人も多いようで、同じ3列シートでありながら箱型のミニバンよりスタイリッシュで走りも楽しめることが好評の理由になっているようだ。

実はアメリカや中国で先行発売していた新型CR-Vも、歴代で初めて3列シート車を用意している。これも2年ぶりの国内市場復活の要因に挙げられるだろう。

CR-Vが最も売れているのはアメリカだ。現地ではこのクラスのSUVで、やはり日本市場に復活がうわさされるトヨタ「RAV4」に続くポジションにある。

筆者が以前、アメリカを訪れた際、現地の自動車業界関係者に聞いて知ったことのひとつに、アメリカのユーザーは合理的なクルマ選びをするということがあった。日本ではハイブリッド車というだけで購入に至る人もいるが、現地ではハイブリッドの価値を把握し、用途に合った場合にだけ選ぶユーザーが多いという。

新型CR-Vの2列目シートは、ボディサイズの拡大もあって足元の空間を50mm拡大したうえに、背もたれを倒すと座面も沈みこむダイブダウン方式の折り畳み方法として、車中泊もできそうな長さ1830mmのフラットな空間が得られるようにしており、3列目はスプリングを内蔵することで座り心地にもこだわっている点は注目だ。

初代CR-Vは、直前まで3〜4代目「シビック」のバリエーションとして設定されていたトールワゴン「シャトル」の発展型だと個人的に思っている。特に初代と2代目は、ATのセレクトレバーをコラムに配し、前席間をウォークスルーとして折り畳み式テーブルを用意するなど、使い勝手にこだわったSUVだった。

CR-Vがグローバル志向を強めたのは次の3代目からで、前述の特徴的なインテリアは失われてしまったが、新型の仕掛けを見ると、かつての個性が形を変えてよみがえったような気がした。3通りの使い方ができるセンターコンソールもそうだ。

歴代初のハイブリッド車の設定

こうしたデザイン以上に新型CR-Vでトピックとなるのが、歴代初のハイブリッド車の設定だろう。しかもホンダが持つ3タイプのハイブリッドシステムの中で、「オデッセイ」や「ステップワゴン」にも積まれ評価が高いスポーツハイブリッドi-MMD方式を採用している。

i-MMDは、2L直列4気筒エンジンと2個のモーターから成り立っており、低中速では日産「ノート」や「セレナ」のe-POWERと同じように、エンジンで発電した電気で走りつつ、高速域ではモーターよりエンジンの効率が勝ることからモーターを使わずエンジンで走る。

エンジンとモーター、それぞれの長所をシンプルな構造で両立した内容であり、モード燃費では25.8km/Lと、ボディサイズが近いハイブリッドSUVのトヨタ「ハリアー」や日産「エクストレイル」をしのぐ。しかも新型CR-Vはi-MMDでは初めて4WDも選べる。

残念なのは大柄なバッテリーを搭載する関係で、ハイブリッド車では3列シートが選べないことだろう。これはエクストレイルや、プラグインハイブリッド車の三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」にも共通している。CX-8は全車クリーンディーゼル車なので、このようなジレンマはない。

同じi-MMD方式を採用するステップワゴンでは、前席下にバッテリーを搭載することで3列シートとの両立を果たしている。こうした工夫を知っているので、CR-Vでもホンダらしいブレークスルーを実現してほしかった。

ただし3列シートが選べるガソリン車のエンジンは1.5Lターボと、このクラスの日本車では少数派のダウンサイジングターボであり、自然吸気2Lを積むライバルより幅広い回転域で同等以上の最大トルクを発揮することから、力強さでは上回ることが期待できる。

しかも新型CR-Vが用いるプラットフォームは、走りの面で高い評価を受けている現行シビックと共通であり、乗り心地とハンドリングのバランスは高いのではないかという予想もできる。

昔のホンダ車を知る人は、そのシビックと同じように、かつてのCR-Vと比べると車格も価格もかなり上方にシフトしたことが気になるだろう。4WDで見ればガソリン車では350万円近く、ハイブリッド車では約400万円というのが最低価格なのだから。

ただ、輸入車ではこの価格帯で買えるSUVにはハイブリッド車はないし、ミニバン人気が一段落していることや、デザインや走りの面で1980年代のホンダ車のテイストを前面に押し出したシビックが注目を集めたことを考えれば、このクラスのSUVの中で多用途性にこだわった新型CR-Vに興味を寄せるユーザーは、一定数いるのではないかと考えている。