by Rebecca Zaal

英語で「子ども」を意味するchildは複数形になったときにchildsではなく「children」という形に変化するのを、不思議に思った人もいるはず。英語にまつわる歴史や由来を掘り下げるGrammarphobiaがこの言葉の謎に迫っています。

The Grammarphobia Blog: Why "children," not "childs"?

https://www.grammarphobia.com/blog/2016/03/en-plural.html

「children」という不思議な複数形が使われるようになった歴史は、5世紀半ばから12世紀にイングランドで使われていた古英語にあります。実は、古英語では複数形の語尾として「s」よりも「n」が使われる傾向にあり、このルールに従うと、eye(目)の複数形が「eyen」に、ear(耳)に複数形がearanとなります。そして西暦1100〜1400年に中英語が使われるようになると古英語の「en」「an」が「en」としてつづられるようになりました。これと同時に、中英語の作家は、それまでenを使っていなかった言葉に対しても複数形のenを使い始めました。オックスフォード英語辞典によると、複数形のenはイギリス南部の中英語にまず使われるようになり、その後、他の古英語やフランスを起源とする言葉にも適用されるようになったとのこと。

チャールズ・E・バーバーやジョアン・C・ビール、フィリップ・ショーは「The English Language: A Historical Introduction」の中で、もともと悪魔(devil)の複数形として「deoflas」、天使(angel)の複数形として「englas」が古英語で使われていた場所では、両者の複数形としてenを語尾に持つ中英語「devlen」「englen」が使われていたことを記しています。enの語尾は中英語でポピュラーなものとなり、もともとイレギュラーな形で表記されていた「brother(兄弟)」の複数形「brethre」はbrethrenに変化し、childの複数形「childer」がchildrenと表記されるようになったわけです。なお、現代使われる「brothers」という複数形は16世紀終わりになって初めて現れたとのこと。



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トーマス・パイルズとジョン・アルゲオの「The Origins and Development of the English Language」によると、当時、複数形の語尾である「s」と「n」はライバル関係にあり、イギリス南部ではnが、北部ではsが好まれる傾向にありました。しかし、次第にsの複数形が優勢になっていき、1400年ごろにはsを使った複数形が「ほぼ普遍的に」使われるようになったそうです。childrenは例外的にen終わりの複数形として残ったというわけです。

なお、menやwomenといった語尾はchildrenと同じenの複数形ですが、実は同じカテゴリに属するものではなく、feet→foot、teeth→toothのような母音の変化によって形作られたもの。またchickenやkittenのenは感情的に「小さい」「少し」といったことを表す指小辞なので、また別の意味合いとなっています。



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