日本の女子卓球陣にとって、ドイツは縁起のいい国だ。3月25日まで行なわれていたドイツオープンでは、女子シングルスで石川佳純が、女子ダブルスで伊藤美誠(みま)・早田ひな組がそれぞれ優勝を飾った。ドイツオープンは「ワールドツアー・プラチナ」と呼ばれる世界を転戦する上位ツアー全6戦のうちのひとつ。3選手は過去にもこのドイツオープンや、ドイツで開催された世界選手権で優勝を経験している。


ドイツオープン女子シングルス決勝で徐孝元(韓国)を破り優勝した石川佳純

 シングルスで優勝した石川佳純は、2010年ドイツオープンのダブルスと、2017年にデュッセルドルフで行なわれた世界選手権のミックスダブルスで優勝している。

「ドイツは私にとって本当にラッキー、運がいい場所。世界選手権でも去年ミックスで優勝できましたし、雰囲気も大好きで、今回もすごく楽しみにして来たので、いいプレーができてよかったです」

 石川は今回が「ワールドツアー・プラチナ」での初めてのシングルス優勝で、「大会に入るまで優勝できるなんて思ってなかったので、素直にとても嬉しいです」と、声を弾ませた。

 優勝までの全5戦は決して平坦な道のりではなかった。徐孝元(ソ・ヒョウオン/韓国)との決勝の後は、利き手の左肩をアイシングしていた。「カットマンとやると疲れちゃうんです」と、説明する。この大会では5戦中3戦がカットマンとの対戦。以前は苦手としていたが、重点的に強化したことで克服した。

 また、5戦中2戦が中国人選手との対戦だった。この大会には中国のトップ選手は参加していないが、それでも中国勢相手の勝利は大きい。

「中国選手に勝つことで、自分自身のレベルアップを感じることができます。やっぱり大きな目標なので、そこに向かって勝てたというのはすごく自信になりました」

 準々決勝で対戦した武揚には、昨年11月に続いて2連勝。前回の勝利では喜びを爆発させていたが、今回は落ち着いた様子だった。

 一番苦しかったのは準決勝の鄭怡静(チャイニーズタイペイ)戦だった。第1ゲームを取ったにもかかわらず、ゲームカウント2-3とひっくり返された。特に第5ゲームは5-0と大きくリードしながら逆転されてしまった。

 だが、ここを冷静に乗り切ったことが、4-3と再逆転しての勝利につながったと明かす。

「いつもあの選手とは競り合いになってしまうんです。5ゲーム目を落としたのが精神的にはちょっと痛くて落ち込んだんですけど、次のゲームでは気持ちを切り替えてできました」

 石川にとって、大会を通しての収穫は大きかった。

「結果もそうなんですけど、内容もよかったと思うし、この内容で優勝できたということが、自分にとってすごく自信になると思う。厳しいところを勝ち抜けたり、中国選手に勝てたりしたことがすごくよかった。次の大きな試合は世界選手権なので、そこに向けて頑張りたいと思います」

 一方の女子ダブルス。伊藤美誠にとってドイツは、2015年のドイツオープンシングルスで最年少(14歳)優勝を果たした場所だ。試合会場も同じブレーメンだった。だから「優勝できるかなと思っていました」と言うと、隣にいた早田ひなが吹き出し、「いや、優勝したかったです」と、訂正した。ちなみにこのドイツオープン、伊藤は2014年にも平野美宇とのコンビでダブルス優勝。早田は2017年にその平野とコンビを組んで優勝している。

 今大会は第1シード。しかも中国人選手のエントリーがなかったことから、優勝は堅いと思われていたなかで、順当に力強く勝ち続けた。決勝は田志希(チョン・ジヒ)・梁夏銀(ヤン・ハウン)の韓国ペアを3-1で下して優勝。2人は「少しプレッシャーもあったけど、打ち勝てたことが嬉しいです」(伊藤)、「組む相手は違うけれど、大会2連覇がかかっていて、それが達成できて嬉しい」(早田)と、笑顔を見せた。

 大会ごとに異なる相手とコンビを組む難しさがあるダブルス。コンスタントに好成績をあげる秘訣については、「お互いにそれぞれのよさがあるので、それを崩さないように、いい状態で練習できるよう心がけています」(早田)、「試合をやっているときのほうが状態がいいのがダブルス。期間が空いてしまって久々に組むときは、一から練習するようにしています」(伊藤)と語った。

 来月下旬には世界選手権(スウェーデン)を控えるなかで、日本女子卓球陣の好調ぶりが伝わってきた。

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